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《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第26話

四月九日(火)

「輪っかは塩ビじゃなくて陶器だった。」と、伝えた。
「そうかぁ、そんなに昔のことだったのかぁ。」

 交通誘導は、クレーン付トラックの荷下ろしのタイミングの時だけで、今は一台目が終わって休憩中だが、既に三回もヒヤリハットがあった。

 モグラはいつも喋り出すと、どんどん話が飛躍していき、どんどん元気になっていく。ファンタジーの核心部分、三年間で当初想定していた土地の売却代を捻出する方法なんてどうでもいい。元気であってほしい。

「部屋の掃除をしよう。それから、MMに行こう。そこで塔を目指すんだ。母屋の図面を探してくれ。露天風呂の図面は俺が描く。火災報知器を買って、消火機もだ。消防にも行こう。」

 いきなり飛躍した。が、そのまま喋らす。

「トキは家にいないといけないから、逆にそれがありがたい。オプションで動画も撮りたいな。お湯も焚かないといけない。まきはどこで工面しよう。」

「モグラが釜場の爺さんってことか。」と、なんとかついていく。

「そう。また肩書きが増えた。えんがちょ!えんがちょ!」

 どうやらファンタジーには続きがちゃんとあったようで、哀しきモンスターは釜場の爺さんになって復活した。

「180日の壁があるが、海外のバカンス時期は来月からだ。まずワラビーに登録して、宣材写真は俺が撮る。まずやってみよう。180日埋まったら休めばいい。そんなうまくいくかな。」

「モグラの技術がここで光るのか。強いphoneだもんな。」

 と、何を撮るのか知らないが合いの手を打ってみる、モグラは写真や動画を撮るのが好きだ。

「さぁ、二台目が来たぞ。踊るぞ。踊る交通誘導警備員だ。ライジングサーンか、違うな今はJYミンパークだ。」

ミンパーク。
とりあえず、元気になった。
しかもキューブももらえた気がした。

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