《土木文学》「戊辰鳥 後を濁さず」第9話
三月二十三日(土)
ゾウ山に雲がかかると雨が降る。
ここら一帯の農家はその日の天候を判断するときに、市の北西に位置する山の様子を参考にする。相模湾で温められた空気はカピバラ市の平野を通過して、丹沢山地の入り口にあたるゾウ山にぶつかる。標高は1251m。そこで一気に上昇した空気は、冷やされて雲に変わる。ゾウ山の別名は雨降山と言われ、大昔には雨乞いが行われていた記録が残っているなど、雨の多い場所だ。
ゾウ山にかかるほど雲が発達すれば、二、三時間で平野にも雨が降り始める