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目黒区美術館「東京の猫たち」展

 もらった券で猫展に行く。 

 高輪木戸から目黒まで走って向かう途中、大通りに出ると真っ白な文字の看板に「Platinum Don Quijote」とある。さすが「白金台」交差点前。ネットで調べて「白金」とかけていると知り、なるほど。

 各区の区立美術館から集められた猫作品の企画展。 なので作品の点数も少なく小品が並んでいたが、そのなかでも気になった作品が数点。 
 
 川端龍子の『虎の間』は、大きな作品があるぞ、かわいい虎だな、襖に描いてあるのか~、と錯覚してしまうぐらい立体感がある襖の引き手。 狩野探幽の虎を見つめる龍子、その奥に襖を引く小坊主と奥に入ろうとする女性の客、という構図がだまし絵のようで面白い。

 化政文化の頃の島琴陵の『竜虎図』は現代の日本画家が描いたかと思うぐらい緻密。 高山良策の『盛りあがる海』は、全体蒼い世界に不気味な人物や獣が徘徊するシュールな絵で隅の方にシャム猫がいる。 調べるとウルトラ怪獣の着ぐるみ製作者。 

 猫好き彫刻家朝倉文夫の猫彫刻たちとは久々の対面。朝倉彫塑館は昭和初期の建物が風情があるので、ねこたちも住処から切り離されて展示されてしまうと生命力を失っている。

 そして、ペリクレ・ファッツィーニの「猫」
 「彫刻とはこういうものだったのか!」と刮目させられた。
 尻尾をまっすぐにピーンと伸ばして歩いている猫。

 背骨のうねる感じが猫の動きを表しているし、遠目には直線のように見えるシッポにも、そのうねりが伝わっているので、決して固くはない。

 回り込んで反対側から見て気付いたが、何という不自然な足の広げ方。

 しかもその一本一本が、それぞれ猫の慎重さ自由独立しなやかさ逡巡のなさを表している。 

 前に回り込むとさらに驚くことに、まるで爬虫類の四肢のような不自然な足の開き方。
 なのに、大きく前に踏み出した一歩の、胴体から連なる筋肉の、何と自然な事か。

 両の耳を見るとこれまたそれぞれが猫らしさを表しており、しかし実際には一匹の猫に付いている二つの耳にしては不自然だろう、という捩れた形。

 目玉は、おどろくほど非写実的に飛び出しているが全く違和感はない。

 彫刻という一つの立体の中に、異なった時間と、それゆえに異なった表情が同居し、個の多面性を一時に表現できている。 
 これが彫刻の面白さか~と生まれて初めて知った気分になった。

 この作品が見れただけでも来た価値があった。

 グッズもこれまた期待してるようなものではなかったが、「ね紅茶」の製作会社にはエールを送りたい。
 国産紅茶で、送った人には「甘みがあってすごく美味しい」と褒められたし、タグの出来は永久保存ものだった。

 帰りは目黒川沿いに歩いて帰る。

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