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ツェッペリンが苦手な私が作ったプレイリスト。もしくは『聖なる館』が一番好きな人のためのプレイリスト。

 苦手なレッド・ツェッペリンだからこそ、好きな曲のプレイリストを作ってみようと思い立つ。

 なぜ苦手かというとロバート・プラントの甲高い声が好きではないからだ。 あまりにも典型的な70sハードロックの歌唱法になってしまっているので耳が受け付けないとも言える。 しかし改めて聞くと、よくこんな独特なスタイルを築き上げたなと思う。 パフォーマンスではなく歌いたいことを歌ったら叫ぶような声になってしまっただけなのだろう。 個人的には、プラントの代名詞であるシャウトよりも、呟くように歌う部分の方が、詩人としての彼の本領を発揮しているような気がする。 語り部が迫って来るような不気味さすら感じる。
 ジョン・ボーナムはライブで見たらきっと凄いのだろうが、録音ではいまいち凄さが伝わっていないような気がする。 『Ⅱ』の名曲の一つ「モビーディック」の有名なドラムソロは(神様に申し訳ないが)長尺でもたついているように感じてしまう。
 ジミー・ペイジのアコギは気持ち良い。しかしエレキギターは好みではない。これも偉大過ぎて、その後あまりに典型的なプレイになってしまったからなのだろう。

プレイリスト選曲基準


 全アルバムを何度も聞き直した上でツェッペリンのプレイリストを決定した。 
 個人的に捨て曲が無い『聖なる館」名作『Ⅳ』はそれぞれ単品で聴くので除外、およびYamahaGX1を使用して毛色が異なった『イン・スルー・ジ・アウトドア』も除いた5枚のアルバムから選んだ。

各曲は自分の好みで選んだわけだが、整理すると次のような視点が見えてきた。
①泥臭くない曲。
②ロックな(体を動かしたくなる)テンポの曲。
③泣きのエレキギターより、妖しくも心地よいアコギの曲。
④リズムにバラエティがある曲。(貪欲に他ジャンルを取り込むのはツェッペリンの特性の一つだと思う)
⑤典型的なツェッペリン(=ハードなブルースロック)ではなく、プログレッシブなひねりのある曲。

なので代表曲「胸いっぱいの愛を」「移民の歌」は選ばれなかった。

以下はAppleMusicで作ったプレイリスト

プレイリスト各曲解説

■『Ⅰ』より「BabeI‘mGonnaLeaveYou」と「BlackMountainSide」。
◆「BabeI‘mGonnaLeaveYou」は、「天国への階段」並みの美しいアコギとダイナミズムが感じられる隠れ名曲だと思う。1stで既にここまでスタイルが出来ていたのかと驚かされる。盛りあがり方は60’sぽさを感じるが、映画のクライマックスのようにドラマチック。
◆「BlackMountainSide」は、本来なら、前曲「ユアタイムイズゴナカム」と連続している曲なのだが、あえてぶった切って、この曲だけを選んだ。すると原盤を超える非常にアヴァンギャルドな入り方になった。これぞベスト盤を作る時の醍醐味だ。 「ユアタイムイズゴナカム」も非常に良い曲なのだが、後半のビートルズのようなポップなコーラスが聞きたくないのでプレイリストには入れず。 その前の曲「幻惑されて」も、前半のエレクトリックブルースが、後半最高にパワフルなハードロックに変化する、これぞツェッペリン!という名曲なのだが、悩んだ上で選ばず。 プレイリストのコンセプトに合わないし『Ⅰ』を聞く時の楽しみも取っておいた方がいいかな?という判断。 本曲「BlackMountainSide」自体は、ボーカル無しでタブラ的なパーカッションと、絡みつくようなアコギが怪しげな雰囲気を醸し出す。ボンゾの民族音楽好きは「胸いっぱいの愛を」でも見られるが、この曲の方が自然でまとまりが良い。

■名作『Ⅱ』は私の好みから外れるので、選んだのは1曲のみ。
◆「LivingLovingMaid(She‘sJustAWoman)」は、一転してカラッと明るくノリの良いロックンロールナンバー。 ちなみに原盤『Ⅰ』における「BlackMountainSide」の次の曲も同じくノリの良い「コミュニケーションブレイクダウン」。 『Ⅱ』はハードロックの聖典のように紹介されることがあるが、実はアップテンポの曲は少なく、電化したブルースを味わうアルバムだと思う。 唯一ブルース色が薄いのがこの曲と思う。

■一方、ブルースよりもトラッドフォーク的な『Ⅲ』からは3曲。
◆「Friends」は、再びアコギの曲。 ジミーペイジのカッティングはどの曲でも気持ちよいが、これはストリングスの使用も美しく、『Ⅲ』の中で一番好き。
◆「CerebrationDay」 これはエレキ。最後まで迷った末にプレイリストに加えた曲だが、2つのギターリフの絡みが独特で面白いから外せなかった。
◆「GallowsPole」 『Ⅲ』はやや似通った雰囲気のアコギ曲が並んでおり、「タンジェリン」や「ザッツザウェイ」も同じように良いのだが、この曲は後半に加わるバンジョー?がカントリーな面白さを出してくる。 そしてパタパタと走るドラムがCANのヤキ・リーベツァイトのような正確無比のグルーヴ感を出していてクールだ。
◆「Bron-Y-AurStomp」という不思議な題名の曲は、シンプルなギターとドラムだがそこにハンドクラッピングなども加わり、牧歌的ともいえる素朴な味わいがある。 「GallowsPole」に続けてミニマルな雰囲気も持たせたかった事もあり、選んだ。

■『Ⅳ』『聖なる館』を飛び越えて2枚組の『フィジカルグラフィティ』から4曲。(ここから後半戦(B面)のつもり)
「TrampledUnderFoot」 『フィジカルグラフィティ』からの曲はベースが太い録音なので迫力が一段階上がっている。明るくファンキーなノリも新しい。
「Kashmir」 名曲多数のツェッペリンの中でも一番好きな曲。圧倒的にカシミール。 メインがストリングスだからロックバンドとしては邪道なのかもしれないが、永遠に続いてほしいと思うほど格好いい曲だ。 ペイジもインタビューで最も好きなリフに上げていたそうな。 プラントの叙事詩を語るような歌い方も真骨頂。 美しいメロディのストリングスは艶やかに流れつつ抑制が効いていてジョンポールジョーンズのベストワークだろう。
「IntheLight」 聖なる館の「ノー・クウォーター」と並ぶ、静的で幻想的な大曲(Kashmirとほぼ同じ8分47秒)。異国情緒あふれるキーボードがたまらない。カシミールの後でも負けてない。 ツェッペリンの大曲は、自然に盛り上がっていく構成が本当にすばらしく、長さを感じさせない。
「Bron-Y-Aur」 『Ⅲ』のアウトテイク。 小気味よいアコギのみの小曲で一段落。 ということでここまで『フィジカルグラフィティ』での「Kashmir」周辺の4曲をそのままの曲順で選ぶ。

■ツェッペリンらしいハードロックに回帰した『プレゼンス』からは、最後の大作にして名曲を一曲。
「AchillesLastStand」 「アキレス最後の戦い」。 昔、聴いたときには邦題の格好良さと比べて肩透かしを食った覚えがある。 ツェッペリンの他の大作と比べて構成はシンプルでビートの変化も少ない。 しかし奇を衒わずストレートに10分間走り続けるだけのことはある。 ロバート・プラントが多用する「Ah-Ah」というチャントだが、この曲ではシンプルかつキャッチーな旋律で耳を捕らえて離さない(歌詞のEarthからつながってくるというのも面白い)。 ペイジのギターソロも冴えわたり、ボーナム&ジョーンズのグルーブもこれでもかというほど味わえてプレイリスト最後の曲にふさわしい。

さて、今回の作業を通じて思ったのは、、、
①ツェッペリンの各アルバムの曲順は本当によく考えて作られている。だからこそオリジナルのプレイリスト作り(再構築)には熱が入る。
②また、ツェッペリンは曲ごとの方向性がしっかりしており、バラエティに富む。自分の好き嫌いもはっきりしてくるので、選びやすい。
③スタジオアルバムが8枚しかないというのも作り易い理由である。
人生で一番ツェッペリンを聴いた三週間だった。

最後に、今回省いた『聖なる館』について


 『聖なる館』はいわゆる名曲はないが佳曲ぞろい。 ペラッペラのファンクネスで邦題とのギャップがすごい「永遠の詩」は、zepの曲で最もキュートで軽快な曲だと思う。元々はレインソングの序曲らしい。 その「レインソング」は伸びやかなギターの響きがひたすら美しく、メロトロンが荘厳で有りながらも穏やかな気持ちにさせてくれる。(『Ⅰ』『Ⅲ』同様、2曲目には自分好みの曲が来る) 「丘の向こうに」はアコギの気持ちよさと躍動するダイナミズムがzepらしい。 「クランジ」はあざといほどにジェームスブラウンに寄せてきた変拍子ファンク。 ひねくれたリフと言えば「ダンシングデイズ」。このアルバムはとにかくリズムがバラエティ豊かで、どの曲も聞き応えがある。「D’yerMak'er」は『インスルージアウトドア』に入っていてもおかしくないレゲエだが、ペイジの「この曲をレゲエだと言ったことはない。自分たちに本当のレゲエなど演奏できないのだから、そんなことを言ったらレゲエに失礼だ」は、心温まる殊勝なエピソード。 雰囲気がガラッと変わって「ノー・クウォーター」は変調処理された声が妖しさ満点。 「オーシャン」は初期Zepに変拍子のひねくれ感を加えたような変な曲。 ということで、最もブルース色が薄く、プログレ的でカラフルな私好みのアルバム。
 つまらない曲は一曲も無い。 のでプレイリストに入れず。

ちなみに『Ⅳ』も贔屓め無しで全曲素晴らしいのでプレイリストに入れず。

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