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生い立ち(突然のお別れ会)

その日は朝から緊張していた事を覚えている。母からの伝言を先生に伝えるという大きなミッションがあったからだ。

結局、休み時間を見計らって先生に声をかけた。メモは誰かに見られたら大変だと思い使わなかった。

当時の担任は、K田先生という40代の男性教諭で、とても優しかった記憶がある。私の記憶が美化されているだけかもしれないけど、大人になってから思うのは、私が教育を受けた中で、このK田先生が一番いい先生だったという事だ。

母から言われた事を覚えている限り伝え終えたら、K田先生はとても悲しそうに唇を歪ませた。それは今まで見たことのない表情で、それがどういう意味かは分からないけど、私は子供ながらに自分の言っている事が普通じゃないと察した。「じゃあ、一緒に2年生には上がれないって事?」と聞かれたけど何も答えられなかった。この時は確か3月になったばかりで、まだ寒かったのを覚えている。

それからしばらくの間、私は児童養護施設で過ごした。寂しいというよりは学童の時に遊んでいた友達とごはんを食べたりお風呂に入ったり先生に見つからないように眠るまでおしゃべりするのがただ楽しかった。何より「お姉ちゃんなんだから」と叱ったりする大人がいなくて、自由だと思っていた。

それから月日は流れ、私は2年生になった。
担任は引き続きK田先生でクラスメイトも同じ。私は転校すると言ったのに先生から嘘つきだと思われてないかなぁ…なんて心配していた。

そして、その数日後に私は信じられない光景を目にする事になった。

朝、登校するとみんなの机が教室の後ろに寄せられ、椅子が円になって並べられており、黒板には大きな文字で

「mogoさんのお別れ会」

と書かれていた。自分でも状況が分からず、クラスメイトから色々と聞かれたけど何も答えられなかった。

朝のホームルームでK田先生から

「mogoさんは△山小学校に転校する事になりました。今日はお別れ会をします」

と告げられ、教室がざわついたけど私の心はもっとザワザワしていた。

え?どうして?急に?なんで??

頭の中は「!?」だらけだった。


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