見出し画像

イエナプラン×公立学校

公立学校の教員として常に感じていたことは、現行の教育システムは多くの子どもにフィットしていないということでした。

「個々の適性も、発達のテンポも異なる子どもたち全員の潜在的な可能性を最大限に引き出すための教育」を追究する中で、画一的な一斉指導に疑問を感じるようになりました。

『学び合い』などの協働的な学びを取り入れたり、民間の優れた塾の作文指導やライティングワークショップを取り入れたり、社会科や理科、総合的な学習の時間でPBLを取り入れたり、集団づくりにPA(プロジェクトアドベンチャー)を取り入れたと、「画一的な一斉指導」ではない「新たな教育手法」を常に追究してきました。

新たな教育手法を個人で10年間ほど追究してきたましたが、学校全体で「探究的な学び」を追究するチャンスが巡ってきました。教員10年目に赴任した大島町の小学校で取り組んだ「総合的な学習の時間/生活科の校内研究」です。

探究的な学びのモデルとして、「イエナプラン」の「ワールドオリエンテーション」を採用することになりました。(イエナプラン教育では、理科・社会科の区別はなく、ワールドオリエンテーションという総合学習の形態を用いています。ワールドオリエンテーションについての考え方、教材、教育方法、カリキュラムは、オランダで特に大きく発達しました)
 
その後の2年間は、日本イエナプラン教育協会の方を講師として招き、校内を下学年(1〜3年生)チーム、上学年(4〜6年生)チームの二つに分け、全教員で「探究的な学び」を追究していきました。「子どもたちに探究させたいテーマは?」「子どもたちを探究に向かわせるための刺激とは?」「深い探究に向かわせるための大人の関わり方は?」「探究のアウトプットや振り返りの質の向上をどう実現する?」などなど。先生たちは答えのない問いに向かって対話を繰り返し、子どもたちの「探究的な学び」を大人自身がまさに「探究的に」追究した2年間でした。その校内研究に関わった先生たちは、いまだに口を揃えて「教員生活で最も充実した2年間だった」「あの2年間で教師としての価値観が大きく変わった」と言っています。

子どもたちと探究したテーマを例としてあげておくと、「旅名人〜理想の旅行計画を立てよう」「T1グランプリ〜地元の食材で料理コンテスト」「秋の遠足を自分たちで計画しよう」「無人島クエスト」「戦争と平和」「作ろう私たちの農園」「学芸会を作ろう」など、既存の学びの枠を大きく超えた「ワクワクする実践」が繰り返し行われました。

2年間の校内研究を終え、その後も「探究的な学び」をさらに追究していこうと意気込んでいたのですが、主要な教職員の異動や管理職の交代など、様々な要因が重なり、その後の一年間で「探究的な学び」は跡形もなく消え失せていきました。後に残ったのは、いわゆる「画一的な一斉指導」でした。

振り返ってみると、探究的な学びをチームで追究したあの二年間は、奇跡的な条件が重なってもたらされたものだと後になって気がつきました。いわゆる公立学校は「画一的な一斉指導」をデフォルトとしており、必ずそこに揺り戻されていくのだということも学びました。

続く…

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?