両思い

わたしには特別な能力は何もないのだなあ、と時々愕然とする。

本のとある見開きを、見ただけでそこに記されている単語たちを丸暗記できるわけでもなく(友人の知り合いに実際に居た!)、音源を一度耳にしただけで、的確な発音ができるようになるわけでもなく(こちらも後輩の友人に居た!)、小説に散りばめられている溜め息が漏れてしまえような見事な表現が、次々と頭に浮かんでくることもない。
絶対音感もなければ、感嘆の漏れる字が書けるわけでもなく、痒いところに手が届くようなメロディや歌詞を生み出すこともできないでいる。

ピアノ、ギター、 ベース、歌、書道、そろばん、水泳、イラスト、書き物、英会話、など興味を抱いて独学で習得したり、習い事で嗜んだものは様々とあるが、自分が果たして、どれに愛されているのかは気づけないでいる。

音楽もイラストも書き物も、わたしは好きで好きで堪らない。「ダメだ、わたしじゃ全然ムリだ…」と定期的に挫折しながら、10年経っても、20年経っても手放せないでいる。
まるで、好きで好きで堪らない人物に対し、その人が居なくなると生きていけないのだと怯え、その人が居なくなった自分を想像すると、あまりにも空虚で恐ろしく、「居なくならないで!捨てないで!」と必死にすがりついている様に似ている。

へいへんぼんぼんなわたしは、好きという気持ちで突っ走るより他、ないのである。

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