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森見登美彦 著 「きつねのはなし」を読んで

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森見登美彦 著「きつねのはなし」考察その1

森見登美彦 著「きつねのはなし」考察その1

先日「四畳半タイムマシンブルース」を読みました。2か月前までは森見先生の作品は「熱帯」と「夜は短し歩けよ乙女」しか読んだことがありませんでした。タイムマシンブルースが話題になっていて読もうと思ったものの、どうも以前に書かれた作品も読んだほうがよさそうだと考え、Wikipediaにある小説作品で去年までに発表されているものを一通り読んだのが8月。最後に読んだ「夜行」に分からないことが多く、考察をこち

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森見登美彦 著「きつねのはなし」考察その2 地理の時間

「きつねのはなし」は、森見先生の多くの作品に見られるように京都が舞台です。場所に関しての記述は実際の地名を使っているもの考えています。そこで、ここに収められている4つの物語について、どこでその話があったのか、その近さ・遠さ・違いなどについて考えます。

# このページで使われる地図は GoogleEarthPro 7.3.3.7786 で作成したものを無加工で添付しています。

注意:これより下に

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森見登美彦 著「きつねのはなし」考察その3 歴史の時間

森見登美彦 著「きつねのはなし」考察その3 歴史の時間

この作品では4つの物語が語られますが、それぞれ別の”私”が語り手となっていて、それらの関係については明示されていません。独立した話として楽しむのもよいのですが、どうしても「何か繋がりがあるんじゃないか、いや繋がっていてほしい」と考えてしまいます。

繋がりを見る前に、各物語内の主要イベントがどういう順序で起こっているのか、初見でよくわからなかったり誤解してしまうことが私にはありました。そこで、各物

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森見登美彦 著「きつねのはなし」考察その4 全体像

森見登美彦 著「きつねのはなし」考察その4 全体像

この作品の4つの物語をつなげられるか?とまずは考察を進めていきます。

作品から考えられる事柄については考察、作品に書かれてはいないけれども繋げていくにはこういうことを考えると良さそう、という事柄は仮説、とします。言い換えると仮説というこちらが勝手に作った稚拙な物語で、あわよくば「きつねのはなし」を包含できないかという試みです。この仮説をできるだけ少なくかつ本作品の描く世界から離れないように抑える

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森見登美彦 著「きつねのはなし」考察その5 物語前半

森見登美彦 著「きつねのはなし」考察その5 物語前半

前回私の仮説を話しましたが、あれが考察全体のクライマックスのようなものです。今回は、その仮説を元にこの話をどのように解釈していったかという紹介をしたいと思います。

まずは1.きつねのはなしと2.果実の中の龍について考えます。

注意:これより下には小説「きつねのはなし」のネタバレがあります。

1.きつねのはなし主な登場人物は4名。水神ゲームのプレーヤーが2名とその駒となった2名がいたと考えます

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森見登美彦 著「きつねのはなし」考察その6 物語後半

森見登美彦 著「きつねのはなし」考察その6 物語後半

前回で物語4話について書こうと思っていたのですが、思いのほか長くなってしまったので前後半に分けました。文量が多いのは文章力がない証拠と言われそうです。スミマセン

注意:これより下には小説「きつねのはなし」のネタバレがあります。

3.魔こちらについては歴史の時間で全体の流れは書きましたが、疑問点がいくつかあります。

1.ケモノはどこから来たのか
2.最後どうなった?

1.については、樋口家か

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森見登美彦 著「きつねのはなし」考察その7 最終回・まとめ

森見登美彦 著「きつねのはなし」考察その7 最終回・まとめ

「きつねのはなし」に関する考察や仮説の話は今回が最後です。このような形でまとめることで、私のモヤモヤは薄まったと思います。自分で作った話で物語を勝手に補強して納得してしまっているので、原作をのままを楽しみたい方には”ナニヲカッテニ!”と怒られそうですが、これは私なりの作品の楽しみ方なのであります。

注意:これより下には小説「きつねのはなし」のネタバレがあります。

今回の考察では、まず地理・時間

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