いまいけぷろじぇくと vol.10 に向けて④遺書をしたためた話

さて、次回は演奏家のおふたりについて書こうと思います。

と、前回書いたけれども一旦別の話。

この公演は2020年6月に開催予定でした。言わずもがな、新型コロナウイルスのそれこれにより休校だったりてんやわんやの時期でした。例に漏れず延期。ロームシアター京都でのいまいけぷろじぇくとがホストの「Sound Around 001」の公演を妊婦状態で終え気が抜け、そして様子を見つつ第10回公演を2022年5、6月ごろの開催を目指し助成金への応募などなど進めねばならない時期である2021年の初秋、再度の延期を決めました。決めましたって言うか、延期を提案してもらった。その時、第一子は2歳に近い1歳、お腹に第二子を妊娠中でした。

イヤイヤ期&ありあまる体力の1歳児を相手しながらの妊婦生活は本当に辛かった。そもそも夏が本当に苦手で、妊娠している状態も、自分が自分の身体でなく胎児のために私の身体がある状態が肉体的にも精神的にも辛く、死にたい死にたいとよく思っていました。夏あたりは昼間はほぼずっと横になっているその傍で、1歳の子は外にも連れて行ってもらえずに一人遊びをしていました。それも本当に申し訳なくて、勝手に精神的に追い詰められて。今でも、嫌な時間を過ごさせてしまったな、と思い出しては鬱屈とします。なにかきっかけがあったらふっと死ねるね、という状態が続いていて、特に臨月ちょっと前くらいには、これくらい大きくなったら私が死んでもお腹の子はなんとか大丈夫かな、みたいなことはよく考えていました。
その時期は、テューバと俳優のための新作を書いていて、それがあるからなんとか生きていた。生きていたというか、生き繋ぐための言い訳があるからそこまではとりあえず生きるか、という感覚でいました。で、出産が10月か11月で、初演が12月末だから、自殺か妊娠で死ぬかどっちかだったとしても初演は絶対して欲しかったので、その旨を書いた文面を母子手帳に入れていました。ほかにも、いまいけぷろじぇくとで進めている事柄があるので、なにかあったらいまいけぷろじぇくとの今村くんにも連絡をお願いするように書いて、あとは何か忘れたけどその時進行していた音楽の仕事の担当者の連絡先も書いていたような。結果、自殺もせず母子共に健康に出産したので、それは誰の目にも触れずに存在も言わずに破棄。今ここで初めて自分以外の人に言いました。

妊娠している身体、というのは、ひとそれぞれだとは思うけれど、上記にもあるように母体の健康状態はまじでほんとうに二の次の扱い、全部赤ちゃんのためにお前は生きている、と言われているように私は感じて辛かった。あとは、出産に関して「母子共に健康」みたいなフレーズをよく聞くからか母子共に問題なく生まれてくるもんだみたいなイメージがありがちだけど、あれって、母子共に健康、以外のケースの場合、「子は健康に生まれました!母体はダメでした!」とかSNSとかで言わないよね?だからだと思うんだど。「毛皮のマリー」の欽也くんのお母さんも出産で死んだ、小花美穂の「こどものおもちゃ」の羽山くんのお母さんも羽山くんを出産した時に死んだ。妊娠、出産で人は死ぬ。延期公演、というフレーズが出てくる/目にする度に、このことを思い出す。

あのときお腹の中に第2子ももうすぐ2歳。
あのとき「死にたい」と思いながら寝込んでいた私のとなりでひとり遊んでいた第1子は4歳になった。

ーーーーーーーーーーー
公演情報
いまいけぷろじぇくと vol.10 《全景》
ゲスト:宇多村仁美(ソプラノ)、林美春(打楽器)
アフタートークゲスト:金子智太郎
”ほぼ“池田個展!前回の第9回と今回の第10回はこれまでと趣向を変え、今村・池田個人に焦点を当てた企画である。2012年〜現在に至るまでのパフォーマンスソロ、器楽・声楽ソロ、デュオ、トリオの池田作品と今村作品を取り上げる。
作曲家、 そしてパフォーマーとしての、池田の思考の軌跡を見渡すことが出来る。
《全景》が、そこにある。
また、アフタートークゲストには美学研究家の金子智太郎を迎える。
演奏ゲストには、名古屋を中心に活動するソプラノの宇多村仁美、打楽器の林美春が参加。
「いまいけぷろじぇくと」は、 劇作家やダンサー/振付家に音楽作品を委嘱したり、俳優/ダンサーを演奏家としてゲストに招いたり、批評家を招いたアフタートークの開催など往来の「演奏会」という枠組みにとらわれない活動を続けている。
※このコンサートは2020年6月開催予定であった公演の延期公演です。
【プログラム】
池田萠/日本語による歌曲のためのランダマイズド・スタディ
(soprano)(2023/初演)
池田萠/35歳までにMステに出たい(performer)(2020)
池田萠/選択音楽 No.03 または どんつきのきつつき(4 performers)(2019)
池田萠/おす、ふく、たたく、うたう(percussion, performer)(2017)
池田萠/小太鼓のためのオーケストラ(ざわざわ)レパートリー
(2023/初演)(percussion)
池田萠/楽音と楽音との狭間に関する考察 No.02(soprano, performer)(2012)
今村俊博/描く人Ⅱ(4 performers)(2023/初演)
2023年10月15日(日)13:00開演(12:30開場)
会場:KDハポン(名古屋市中区/JR鶴舞駅北口より徒歩約3分)
https://kdjapon.jimdofree.com/アクセス/
料金:
一般 予約:3000円+ドリンク代/当日:4000円+ドリンク代
U25 予約:1500円+ドリンク代/当日:2500円+ドリンク代
ご予約:フォーム 
https://t.co/ENNSc8hXkf
主催・お問合せ:いまいけぷろじぇくと事務局
 imaikeproject(at)gmail.com (at)を@に替えて送信
ゲストプロフィール
宇多村仁美 Hitomi Utamura/ソプラノ、パフォーマンス
愛知県立芸術大学博士前期課程修了。
世界的テノール歌手ジュゼッペ・サバティーニ氏に招待され、イタリア、ローマにて研鑽を積む。第47回イタリア声楽コンコルソ ロイヤルティガー部門金賞受賞、第4回タイ・チェンマイ ヒナステラ国際コンクール奨励賞受賞、第4回マルゲリータ・グリエルミ声楽コンクール第三位。日本、イタリア各国で演奏会やオペラに出演する傍ら、近年ではアジアの国々にも活動の幅を広げている。田中敏夫、新実真琴、森川栄子、 三輪陽子、井上美智子、レベッカ・ベルク、ジュゼッペ・サッバティーニ、セルジョ・オリーバ、クレシー・ ケリー各氏に師事。
演奏活動の他、後進の育成にも力を入れており、宝塚音楽学校、劇団四季、東宝ミュージカル等に生徒を輩出している。
林美春 Miharu Hayashi/打楽器、パフォーマンス
名古屋市出身、2009年愛知県立芸術大学卒業。卒業演奏会出演。中部打楽器協会新人演奏会第1位。第17回万里の長城杯国際音楽コンクール打楽器部門第3位。[表現する]をテーマに、現代音楽を積極的に取り入れたプログラムで行われる子ども向け打楽器ワークショップや、親子で楽しむレクチャーコンサートは好評を得ており、その唯一無二の活動に注目を集める打楽器奏者である。
名古屋市立大学大学院 人間文化研究科(修士)を経て、現在名古屋大学大学院 教育発達科学研究科 博士後期課程研究科 在学中。教育哲学者であるジョン・デューイの思想を中心に、乳幼児期の音楽経験について研究している。至学館大学こども健康・教育学科非常勤講師。
アフタートーク・ゲスト
金子智太郎 Tomotaro Kaneko
美学研究者。聴覚文化論。愛知県立芸術大学准教授。「日本美術サウンドアーカイヴ」主宰。主な論文に「1970年代の日本美術における音」『あいだ』(2022年)、“Arrangements of sounds from daily life: Amateur sound-recording contests and audio culture in Japan in the 1960s and 1970s,” in Asian Sound Cultures: Voice, Noice, Sound, Technology (Routledge, 2022) 他。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?