いまいけぷろじぇくと vol.10にむけて⑤演奏家のうたさんとみはるさんのこと

今回の演奏家のふたり、Twitterかなにかで「私的ゴールデンメンバー」と書きましたが本当にそう。この《全景》シリーズ(といっても計2回だけど)は、vol.9がいまいけぷろじぇくとの「いま」、今村俊博くんのほぼ個展、今回のvol.10が池田萠のほぼ個展、ということですが、なぜこうなったかと言うと、vol.9を企画している段階で私が妊娠中である可能性が出てきたからでした。つまり、さすがに妊婦でいまいけぷろじぇくとのような曲目のもの(時折身体張るやつ)はできないね?どうしようか・・というときに、今村くんから出たアイデアが、今村の個展をやる、いまいけぷろじぇくとからの出演は今村のみ、池田の曲もやる、演奏家をゲストに呼ぶ・・ということでした。今村くんの判断はいつも合理的かつ、それなお余計にいいなーということが多い。素晴らしいパートナーの恩恵を私はただただ受けている気がする(ごめんなさい)。

まずは、声楽家(ソプラノ)の宇多村仁美さん、うたさんについて。愛知県立芸大の1つ上の先輩でした。ちなみに、みんな「うたさん」「うたこ」と呼んでたから、「歌さんなのか、うた歌うために生まれた人みたいですごい」とか勝手にぐっときていましたが、うたむらさんの「うた」でしたね・・。でもその呼び名がとても似合う人。
確か、ヴィラ=ロボスのブラジル風バッハ第5番(ソプラノとチェロ8台のアンサンブル)のソロを歌っているのをコンサートで聴いて、めちゃめちゃ感動したのを覚えています。10年以上前(!)の話ですが。そして、2017年秋に、今回のいまいけvol.10に出演の打楽器の林美春さんとデュオリサイタルをやったときに、川島素晴さん作曲の「Invention Ⅰ」を演奏する際に、声楽的なテクニックが必要になる箇所がけっこうあったので、うたさんにレッスンしてもらいました。これもまた教えるのうまーい!細かな部分は忘れてしまったけれど、腑に落ちる説明と実践と・・という感じのレッスンで、とっっても助かりました。
そして、お人柄としては、とても実直で明るい素敵な人、書くとまじめーな感じもしますが(いや真面目な方なのだが)、かつ、めっちゃ下ネタで盛り上がれる超楽しいフリーダムな精神の人。公演当日に打ち上げできないのが悔やまれる、めっちゃくちゃ話したい。いや、演奏を是非お楽しみに!旧作も新作も、彼女のキャラに合っていると思います。

そして、打楽器の林美春さん。彼女も愛知県立芸大の1つ上の先輩でした。最初の出会いをとてもはっきり覚えています。当時、講義名は忘れたけど教職課程の一環として、管打楽器専攻生を授業のゲストに迎え、主に作曲専攻生が書いた(作曲した)断片を試演してもらう、というセクションがある授業がありました。そこでゲストで来ていたのが打楽器専攻生であったみはるさん。「バスドラで、こういう音を出したーい!と思うときは・・」と、打楽器への愛情100%の解説をしてくれ、ああ、演奏家はこんなに楽器や曲のことを愛した上で演奏しているんだ、と、これまたぐっときた、というのが出会いでした。その後、(一気に飛ぶけど)G.Scelsiの『Ko-Tha』という、ギターを弾くのでなく叩く奏法がメインの曲を、「みはるさんに合うのではないですか?」とメッセージを送ったことがきっかけで、「たたく、うたう、ただそれだけで」と題したデュオリサイタルを一緒にやることになりました。そのときにやった曲も今回やります。
とにかく、音楽への愛がある人。近年は「打楽器への」というところを飛び越えて、音楽に対して自身が、また、他者へどのように向かっていくか?ということに重きを置いて活動されていて(私から見た言い方です)、目標にしたい人です。

そんな二人が出ます。めっちゃいいよ。

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公演情報
いまいけぷろじぇくと vol.10 《全景》
ゲスト:宇多村仁美(ソプラノ)、林美春(打楽器)
アフタートークゲスト:金子智太郎
”ほぼ“池田個展!前回の第9回と今回の第10回はこれまでと趣向を変え、今村・池田個人に焦点を当てた企画である。2012年〜現在に至るまでのパフォーマンスソロ、器楽・声楽ソロ、デュオ、トリオの池田作品と今村作品を取り上げる。
作曲家、 そしてパフォーマーとしての、池田の思考の軌跡を見渡すことが出来る。
《全景》が、そこにある。
また、アフタートークゲストには美学研究家の金子智太郎を迎える。
演奏ゲストには、名古屋を中心に活動するソプラノの宇多村仁美、打楽器の林美春が参加。
「いまいけぷろじぇくと」は、 劇作家やダンサー/振付家に音楽作品を委嘱したり、俳優/ダンサーを演奏家としてゲストに招いたり、批評家を招いたアフタートークの開催など往来の「演奏会」という枠組みにとらわれない活動を続けている。
※このコンサートは2020年6月開催予定であった公演の延期公演です。
【プログラム】
池田萠/日本語による歌曲のためのランダマイズド・スタディ
(soprano)(2023/初演)
池田萠/35歳までにMステに出たい(performer)(2020)
池田萠/選択音楽 No.03 または どんつきのきつつき(4 performers)(2019)
池田萠/おす、ふく、たたく、うたう(percussion, performer)(2017)
池田萠/小太鼓のためのオーケストラ(ざわざわ)レパートリー
(2023/初演)(percussion)
池田萠/楽音と楽音との狭間に関する考察 No.02(soprano, performer)(2012)
今村俊博/描く人Ⅱ(4 performers)(2023/初演)
2023年10月15日(日)13:00開演(12:30開場)
会場:KDハポン(名古屋市中区/JR鶴舞駅北口より徒歩約3分)
https://kdjapon.jimdofree.com/アクセス/
料金:
一般 予約:3000円+ドリンク代/当日:4000円+ドリンク代
U25 予約:1500円+ドリンク代/当日:2500円+ドリンク代
ご予約:フォーム 
https://t.co/ENNSc8hXkf
主催・お問合せ:いまいけぷろじぇくと事務局
 imaikeproject(at)gmail.com (at)を@に替えて送信
ゲストプロフィール
宇多村仁美 Hitomi Utamura/ソプラノ、パフォーマンス
愛知県立芸術大学博士前期課程修了。
世界的テノール歌手ジュゼッペ・サバティーニ氏に招待され、イタリア、ローマにて研鑽を積む。第47回イタリア声楽コンコルソ ロイヤルティガー部門金賞受賞、第4回タイ・チェンマイ ヒナステラ国際コンクール奨励賞受賞、第4回マルゲリータ・グリエルミ声楽コンクール第三位。日本、イタリア各国で演奏会やオペラに出演する傍ら、近年ではアジアの国々にも活動の幅を広げている。田中敏夫、新実真琴、森川栄子、 三輪陽子、井上美智子、レベッカ・ベルク、ジュゼッペ・サッバティーニ、セルジョ・オリーバ、クレシー・ ケリー各氏に師事。
演奏活動の他、後進の育成にも力を入れており、宝塚音楽学校、劇団四季、東宝ミュージカル等に生徒を輩出している。
林美春 Miharu Hayashi/打楽器、パフォーマンス
名古屋市出身、2009年愛知県立芸術大学卒業。卒業演奏会出演。中部打楽器協会新人演奏会第1位。第17回万里の長城杯国際音楽コンクール打楽器部門第3位。[表現する]をテーマに、現代音楽を積極的に取り入れたプログラムで行われる子ども向け打楽器ワークショップや、親子で楽しむレクチャーコンサートは好評を得ており、その唯一無二の活動に注目を集める打楽器奏者である。
名古屋市立大学大学院 人間文化研究科(修士)を経て、現在名古屋大学大学院 教育発達科学研究科 博士後期課程研究科 在学中。教育哲学者であるジョン・デューイの思想を中心に、乳幼児期の音楽経験について研究している。至学館大学こども健康・教育学科非常勤講師。
アフタートーク・ゲスト
金子智太郎 Tomotaro Kaneko
美学研究者。聴覚文化論。愛知県立芸術大学准教授。「日本美術サウンドアーカイヴ」主宰。主な論文に「1970年代の日本美術における音」『あいだ』(2022年)、“Arrangements of sounds from daily life: Amateur sound-recording contests and audio culture in Japan in the 1960s and 1970s,” in Asian Sound Cultures: Voice, Noice, Sound, Technology (Routledge, 2022) 他。


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