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風邪うどん



風邪うどん

私は取り分け、家人の切る人参が好きだ。
五ミリ幅ほどの厚みで、噛むとまろやかに甘みが広がり、口一帯が柔らかくなる。
病人にもよい口当たりのうどんをすすり、とき卵のなめらかさにて舌を包み、出汁として使われた椎茸の欠片が覗いては、それを見つける度に微笑んでしまう。
すすり終えた器に残る汁は、生姜がたんまりと濃縮され、とき卵と、人参の細かい切れや椎茸の欠片とが鮮やかなマーブル状で、それらはもう身体に悪いものなど一切なく、家人の優しさを具現化したかのようなスープなのである。
私はこれを三度に分けて飲み下し、見込みが顔を出す頃には身体中がホカホカと湯上りのようになって、多幸に充ちた溜息をもらすのだった。

〜ごにょごにょ〜
またしても体調を崩した脆弱な私に
同居人がうどんを拵えてくれたので
その時の気持ちを書いた。
これから日々食ったものと、
それに関する私小説を書いてこうと思う。
第一弾は優しき家人Y氏に捧げる。






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