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20年ぶりの歯医者記録 〜7本目〜(親知らず、抜きます)
親知らずを抜く前日はネットで調べてはいけない
先日、地獄の奥歯つんつんをされて瀕死になった私だが、どうやら神経もキレイに取り除けたらしく、親知らずの抜歯をする運びとなった。
さらっと言っているが、もう恐ろしくて恐ろしくて堪らない。
それは何故かというと、昨晩ネットで親知らずを抜いた人の感想を見てしまったからだ。
「メキメキ音がする」「途中で麻酔が切れて死ぬほど痛かった」「餅のように腫れた」
など、親知らず抜歯未経験者の私はこれらに酷く恐怖心を植え込まれてしまった。
なかでも特に私を慄かせたのは「絶対に寝不足で行くな!」という忠告レビュー。
「寝不足で行くと麻酔の利きが悪くなり、途中で麻酔が切れる」とか
「血が止まらず鮮血まみれになる」とか、もうほんとやめてえええってな具合。
この感想を読んだら眠れなくなっちゃうじゃん!! などと震えていたら 本当に眠れなくなって朝になってしまった。
抜歯の前のブラッシング
なんとか無理やり2時間ほど眠るなどしたが、バッチリ睡眠不足状態での抜歯当日。
アアア モウ ホント イヤ ヤダヤダ カエリタイ モウ イヤ
いくら心を機械のようにしても、主治医は待ってくれない。
無抵抗な私にブスブスッと麻酔を3箇所打ちつける。注射の痛みと薬の苦さに思わず苦悶する私。
麻酔が効くまでの間、助手に口内をブラッシングをされた。
突如私の心に湧く、小鳥に歯のカスを掃除してもらっているワニの感情。
ワニよ…お前はこれほどまでに、自分の歯をさらけ出していたのだね…。なんとも情けないというか!介護をされているような気持ちだ…。
そうしていささかワニの気持ちにトリップしている間にブラッシングが終わり、いよいよ抜く時間となった。
いよいよ抜歯。抜くイメージをかき消せ!
私はとにかく一生懸命口を開けた。それしか私にはできないし、一生懸命開けていると、そこばかりに集中できて怖さが紛れる。
しかし、どんなに開口に全集中していても、歯を抜きにかかっている主治医はこんなにも近くにいるのだ。意識しないほうが難しい。
これが恋心ならまだ甘酸っぱさがあるものの、私が胸をときめかせているのは親知らずを抜くことによる恐怖である。こんな胸のドキドキはちっとも嬉しくない。
そうしている間にも、我が親知らずに向けて主治医が無茶苦茶圧力をかけてくる。
なんだろう!? 一体何をしているのだろう!?
目の上にタオルがかけられているから想像するしかないが、おおよそペンチ的な何かで親知らずをむんずと掴んで、歯茎からギュリギュリギュリっと抜いているのだろう。そうして無理やり引っ張られた歯茎からはドバドバ血が出ているに違いない。
ヒィィイイイイ!!! 想像してしまうと死ぬほど怖い!!
別のことを考えよう!!
違う違う。これは抜いているんじゃあない。
主治医は今…そう! “押印”“ ”押印“しているんだ!!
私の口の中に“押印”しているのだ! なにか、重要な書類があるに違いない! そう、そうなのだ!
などと己に暗示をかけて、親知らずを抜いているというイメージを遠のけた。
しかし、脳に響くはメキメキという音。
怖い! 怖いよおおおおお! これはアレ、絶対アレ、歯じゃん。歯が砕けてしまっているアレじゃん!
とても怖い。怖いがしかし、想像してはいけない!
“押印”“”押印““押印”“”押印““押印”“”押印““押印”“”押印““押印”“”押印“…
いともたやすく抜けた親知らず
そうして“押印”の自己暗示を掛けまくっていたらば
「よく頑張りました。やっぱり1回で抜けた方が身体にも良いですね。今抜けましたよ」
と主治医。
「元気な男の子ですよ」みたいな感動だ。
出血もすぐに止まり、麻酔含め30分程度で終わった。
呆気なかった。とにかく歯茎にお疲れ様とありがとうを伝える。
そして、口内全体に謝辞を投げた。
なんだよ。全然痛くないじゃん。2時間睡眠で来たけど、麻酔効きまくりだわ。
なんだよ。全然余裕じゃん。全く苦しくなかったわ。ネットなんて嘘しか書いてないな。
そんな風に、軽口を叩けるほど、スッポンキレイに抜けた。
きっと主治医の腕が良かったのだろう。もうほんと、感謝しかない。
しかし、本当にすごいぞこの主治医。
私の歯を抜いたすぐ後に、隣の診察室で別の患者の治療始め出したではないか。
隣の患者もまさかこの先生が[今まさに親知らずを力いっぱい抜いてきた人]とは知る由もないはず。
あっぱれ。あなたに任せて良かった。幾許か、私の歯医者嫌いもマシになりそうだ。
抜いた親知らずをテイクアウト
抜いた親知らずを持って帰るかと効かれたので、是非にとお願いした。
歯の形をしたかわいらしい容器に入れてくれて、ニコニコ鞄にしまった。
これからこの抜いた親知らずに罵詈雑言を吐きかける所存だ。
「てんめえのせいで、隣の奥歯虫歯になったやないけ!! どう落とし前付けんのじゃあああ!?!?」と脅しまくりたいと思う。
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