まだ名前のついていない感情に名前をつけよう。
世界は一つよりは多く、複数よりは少ない。
人類学者マリリン・ストラザーンの言葉だ。僕たちが生きている世界は一つではない。でも、それぞれが全く違う世界を生きているわけじゃない。
なんてことはない、カッコよくて好きだから引用してみただけだ。詳しくないからボロが出る前にこの話はやめにしよう。
僕が心のうちに抱く感情は、あなたが抱くどの感情とも同じとは言えないだろう。でも、そのどれとも完全に違うとは言えないはずだ。少し似ていて、少し違う。
今日は僕の感情を言葉にしてみよう。嬉しい、悲しい、楽しいのようなぴったりの形容詞を考えるのだ。あなたが自分の感情に名前を見つける手助けになれば嬉しい。
喜怒哀楽の隙間、アナログな感情をデジタルな言葉で分割した時に生じるわずかな隙間に光を当て、言葉の分解能を最大にしよう。きっと何かが見えてくるはずだ。
以下に3つの「まだ名前がついていない感情」を用意した。一つずつ名前をつけていこう。
1つ目
「新発売のジュースが美味しそうで買ってみたら思ってたのと違う味だったけどそんなに不味くもなくて、だけどもう飽きてて、まだ400mlくらい残ってる時の感情」
え、透明なバナナミルク!?なにそれ、美味しそー。って思って買ってみたものの、うーん。まあ確かにバナナミルクなんだけど。不味いわけでもない。普通に美味しいんだけど、うーん。
これ別に透明じゃなくていいな。
透明じゃない方が美味しい気がする。パックのバナナオレとかの方が多分美味しい。なんか前も透明系のジュース買って同じこと思った気がする。別に透明である必要なんてどこにもないんだよな。透明であることにプラスの付加価値はないっていつになったら僕は学ぶんだ。
あー。全然減ってない。もう飽きたんだけど。これさ、試供品サイズみたいなのないわけ?ちょっと気になっただけなんだけどな。まあ勿体無いから飲むけど、飲むんだけど。不味いわけじゃないんだよ。ただこれ買うくらいならマッチ買えばよかったなーって。
この感情はなんだろう。
答えは全て最後の一文に詰まっている。そう、なにも考えずマッチを買えばよかったのだ。マッチが不味かったことは一度もない。喉乾いてない時でさえ美味しい。マッチを買うのがマッチベター、つってね。どんな状況にもマッチ、ってね。
そうやって人々はマッチに縋るのだ。
マッチを信じれば世界は救われる。マッチに祈りを捧げるのです!
「中身マッチに変われ!」
「おい、マッチ聞いてるか、変わってくれよ!」
「どうして、なんで…なんで変わってくれねーんだよ!」
「マッチ!」
「おい…ああ…マッチぃ…」
ということでこの感情を表す形容詞を「マッチい」と名付けましょう。
2つ目
「steamで見つけた面白そうなゲームがWindowsしか対応してなくて自分のmacじゃ遊べないことに気づいた時の感情」
え、このゲーム面白そうじゃん。へー、最近出たんだ。しかもセール中じゃん。あー、でも10%オフか。もうちょっと安くならないかな。95%オフとか見てるから感覚おかしくなるんだよな。
まあ730円なら買うか。
って、あっぶねー。これWindowsと謎のsteamのやつでしか遊べないじゃん。mac対応してねーのかよ。せっかく日本語対応してるのに。前買ったやつがmac対応してなくて返金してもらったことあるんだよな。手続きそんなだるくないけどワクワクが萎んでいくのがすげー悲しいんだよあれ。先に気づいてよかったー。
てかなんで僕はmacにしたんだ。windowsでしか遊べないゲーム多すぎだろ。ホグワーツレガシーとか気になってたんだぞ。macでWindowsのゲームって遊べないのかな。調べてみるか。
え!できんの?
ふむふむ。
うーん。
むずすぎて分からん。結局無料でできんの?これ違法じゃないやつ?なにしてんのこれ。
まあいっか。シヴィライゼーションやろ。
この感情はなんだろう。
答えは最後の一文に詰まっている。そう、なにも考えずにシヴィライゼーションで遊べばよかったのだ。シヴィライゼーションが面白くなかったことは一度もない。ただ時々めんどくさくなって飽きるだけだ。一度ハマったら最後までずっとやっちゃうんだけど時々めんどくさくなってゲーム閉じちゃって、そしたらもうやらないんだよな。
ということで、この感情を表す形容詞を「シヴィラい」と名付けましょう。
3つ目
「あるあるを書くためのシステムばっかり思いつくけど、実際に記事にしてみるとまともな人生送ってないせいでちょうどいいあるあるが出てこなくてニッチなあるあるになっちゃう時の感情」
さっき読んだ記事面白かったな。「言葉にならないことを言葉にしたい」みたいなこと言ってて、なんか普通によかった。
よし、僕もそういう記事書こう。「言葉にならない気持ち」みたいなテーマがいいかな。うーん。どんな時に言葉にならない気持ちが生まれるんだろ。説得力を持たせるためには共感してもらわなくちゃだよな。
あー。これあるあるか。
あるある書くだけの記事か。おっけ、じゃあなるべく書き出しは綺麗に書くか。どうせ最後はあるあるだし。ごちゃごちゃ言って結局あるあるを書くっていう構造好きなんだよな。
肝心のあるあるは…まあ、3つでいっか。最初に綺麗に書いてる分一個目が一番落差が大きくて、ってことは一番わかりやすいのがいいよな。二つ目は、まあなんでもいいや。このタイミングで「ああもうそういう記事なのね」ってなってくれたらいい。3つ目は、ちょっとメタっぽいのにするか。
でもなー。ちょうどいいあるあるが出てこないんだよな。この前もあるある書こうとしてやめたし。エントリーシートの形をとって、就活でよくある質問にあるあるで答えるっていうの書こうとしたんだけど、ちょうどいいのが出てこなくてやめたんだよな。
まあいっか。そろそろ記事を締めよう。
この感情はなんだろう。
答えは最後の一文に詰まっている。そう、もう記事を終わりたいのだ。
ということで、この感情を表す形容詞を「しめたい」と名付けましょう。
何でもかんでもすぐにメタやろうとするの嫌いだわ〜。
それでは。
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