単色病患者3ヶ月の記録 3
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とんでもない激痛が俺を襲った。あまりの痛さに意識を失ってしまった。
「ここは…?」
いつも俺が寝ているベッドの上だった。きっと取材班の人たちが俺を、運んでくれたのだろう。
「おはようございます。大丈夫ですか?」
「大丈夫なんで、ちょっと包帯取ってくれませんか?」
目を包帯で覆ってないと、あまりにも痛い。目の情報量があまりにも多すぎる。
「包帯を付ける代わりに、一つ条件があるんですが。」
「なんですか?」
「一時間に一度目の撮影をさせていただきます。そんな長時間ではないので大丈夫です」
「わかりました。」
これも自分の病気を治すためだ、そう決意し、激痛に耐えることにした。
視界を覆っている時は自然と、真っ暗な世界が心地よく痛みもなく、とても快適なため、すぐに寝てしまう。
「痛いいいい!ヴォぇ」
一時間経ったのだろう、強制的に包帯を外され、カメラで撮影されている。あまりの痛みにえずいてしまう。
「ちょっ、ちょっと待って…痛い痛すぎる、オエッ」
そしてまた俺は、意識を失ってしまった。カメラの前で目を撮影する様子は、まるであの時のように、ピタッと動かない不気味なロボット時代を彷彿とさせる。
「あのっ、誰かいますか」
「はい、どうしました。」
「強制的に包帯取るの、やめて欲しいんですけど。」
「ではある程度準備できたら外すで、いいですか。」
「それでいいです」
そしてまた一時間後、今回はカメラの前で包帯を自ら外す。痛みが分からない他人に外させるより、自分でやった方が幾分マシである。
痛いと分かってて外すのは怖い、だが外さないと始まらない。勇気を出して外す
「ギャァァァァァァァァァァァァァァ!」
自ら外すのも、痛すぎる。外してる間も痛すぎる。撮影されている間も絶え間なく叫び続けた。これが全国に放送されるなんて今はどうでもよくなっていた。
「やだ、痛い…たすけて、、」
そんな願いも虚しく、ピタッと動かずひたすらカメラを回すだけだった。そしてまた俺は意識を失った。
「はっ!あぁ、、」
またベッドの上で飛び起きた。目に包帯は巻かれておらず、激痛が走っているが俺は勇気を出して、キッチンへ向かった。
「はぁ、あぁ、痛っだああ!」
近所迷惑なんてお構い無しに、叫び続けた。もう無理だ、痛すぎる。取材班は今は見ていない、その間に俺は包丁で目を突いて、痛みや一色の世界を終わらせようと思っていた。
「いっ、ひっ、がぁっ、うっうっ…」
無理だ怖い、怖すぎる。
アラームが鳴り、また目を撮影され俺は叫んだ。痛いと何度叫んでも、カメラを止めず、俺を羽交い締めにし逃げ出さないようにされた。そしてまた気を失う、そんな一日だった。
彰人の言った通りだった、アイツらはあの時と何一つ変わってない。人を追い詰めるのが凄く得意で、人を窮地に追い込んでいる。
「大丈夫ですか。」
「痛いです、もう無理です。早く痛みから、一色の世界から解放されたい。」
号泣しながら語る。もう取材とかドキュメンタリーとかどうでもいい、早くいち早く、目を潰したい。
向こうで取材班が喋っているのが聞こえる。なんの話をしているのかは分からないが、ロクなことではないのは、知っている。
「今どんな気持ちですか」
久しぶりのインタビューの時間だった。俺はもう答える気力すら残って無かった。
「痛い。」
「私たちに出来る事はありますか」
「ない。」
「一番楽なのは」
「包帯。」
無愛想な回答で申し訳なくなるが、俺の限界さがこれでもかと伝わっただろう。もうやめてくれ俺を解放してくれ
「ありがとうございました」
目の痛みが治らず、二週間経った。俺は起きてる時間は基本キッチンで包丁を握りしめていたり、文房具を片っ端から目に突っ込んだりと、自傷行為が増えてきた。それでも取材班はとめたりなど一切しない。
「ひっ、うっく、あっぐ、、」
痛い、痛みに負けて更に痛いことをしようとしている。あまりにも包丁は恐ろしすぎて目の前に持っていくことは出来ても肝心の刺しが出来ない。俺は痛みを和らげる為の痛みすら、乗り越えられないダメな人間だ。
インターホンが鳴った。俺が出る代わりに、取材班の人が出た。相手は彰人だった。
「アンタたち、まだこんなことしてんのかよ、もういい加減人を傷つけるのはやめろ!」
彰人が俺のために怒ってくれてる、俺はあんなに酷い言い方をしたのになんていいヤツなんだ。
「なんとか言えよ、なぁ!どこだよ仁はどこだよ!」
「彰人、俺はここにいる。」
取材班を押しのけて彰人が部屋に入ってきた。
「なっ、」
俺が包丁を構えてる姿に、絶句する様子におそらく驚いているんだろう。
「何してんだ、やめろ!」
持っていた包丁が振り落とされ、そして俺は彰人にビンタされた。
「ッ!」
「だから言っただろ!俺はこれ以上失いたくないんだ!」
「痛いっ、はぁ、うぁぁ、ごめん俺もう無理。」
彰人にどんな言葉を投げかけられても、俺には響かない。
「どうしたんだ、殴った所か?」
「違っ、は、包帯を、ほっ、包帯取ってくれ、、」
ある程度症状が収まった。今彰人はどんな顔をしているんだろうか、怒りか悲しみか、それとも呆れか。それすらも分からない。
「仁、目の症状がこんなに進行してたのか。だったら尚更、アイツらとは関わったらダメだ!」
「やだ、無理だ。」
「なんでだよ、今ならまだ間に合うって」
「信頼関係が出来てるから、俺は絶対見捨てない。少し強引だけど、いい人たちだからさ。」
「なんでだよ、なんで母さんものを仁も、分かってくれないんだよ!いい人なわけないだろ!」
「けど思ってるより、融通も効くしちゃんと意見も聞いてくれるから。」
「母さんも同じこと言ってた。そんなわけないだろ、だって散々な扱いされてたんだろ。酷いこともされただろ?なんで!」
「酷いこともあったさ、けどあの人たちとの絆があるから俺も頑張れるんだ。」
「違う、そんなの絆じゃない!」
ガチャっと、扉が開いた。取材班の人たちがやってきた。
「お前ら、母さんに続いて俺の友達までおかしくさせたのか。」
「おや、見たことある顔ですね?」
「あんたは自称プロデューサーとか言ってたな、仁を元に戻せ!」
「元から彼こんな感じでしたよ?」
「そんなはずない、仁はもっと明るくて、常に元気だった!自傷行為なんて絶対におかしい!」
「そうでも無いですよ、人間あまりにも辛くなったら死に走る。そんなもんよ」
「嫌だ、なんでこんな、、」
「嫌って言ってもねぇ、キミは全然オオタくんのこと受け入れてあげてないじゃないですか。」
「自分が一人だと困るから、友達が居なくなったら、嫌だから。キミお母さまの時もそうだったけど、基本的に自分のことしか考えてないですね。」
「そんな誰だって、嫌だろ!」
「その人の決断を受け入れる、それも立派な経験ですよ。お母さまも辛くなり、最期は命を絶たれましたね、これは私たち取材班が追い詰めたんじゃなくて、自分からおかしくなっていったんですよ。勝手にね」
「追い詰めたから、おかしくなったんだろ。それを勝手におかしくなったとか言うな!」
「違う違う、常識の範囲内でやってたのでそれでおかしくなったとか言われてもねえ」
「彰人、ごめん今日は帰ってくれないかまた話そう。」
そう言って彰人に帰ってもらった。絶対に俺は普通だし、取材班もおかしくないはずだ。
「一つ聞いてもいいですか。」
「はっ、はい」
初めてだった、取材班の人からインタビューではなく質問をされるのは。
「あなたは今どうしたいですか」
それはどう考えても、一択しか無かった。
「目を潰したいです。」
撮影されてるとかは、もうどうでもよくなっていた。ただ自分がやりたいことを肯定してくれるのが嬉しかった。さっき彰人に俺のやりたいことを、止められて腹が立っていた所だった。思う存分目を潰したい、そして早く楽になりたい。分からない奴らが俺を止めるな!
「そうですか、ありがとうございます。」
そう言って会話は終わった。また時間になったら目を撮影するらしい。もう痛いのは懲り懲りだ、一時間経つ前に目を潰す方が先か、もう一度羽交い締めにされるのが先か。
「今度こそ、やってやる。」
はたから見たらおかしい人なのは分かっているが、どう見られようがもう関係ない。
「うっ、っっ、、あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"」
包帯を外す度に激痛が走る、早く目を潰したい。潰したいのに、無理だこれよりマシな方法はないんだろうか。突き刺すのは怖い、痛みより恐怖が勝ってしまっている。
「インタビューです。」
「今どんな気持ちですか。」
「方法を教えてください、痛くなく目を潰す方法を。もうあなたたちしか頼れないんです、彰人も病院の先生も俺を分かってくれない。助けてください!」
「今の目の状態を教えてください。」
「痛い、視界が一色で世界が回ってて、目を開けたくない。」
「世界が回るとは、どんな感じですか。」
「目が回る感じで、それでもって痛みが酷くて。もう耐えれないんです」
俺は治したくて藁にもすがる思いで、このドキュメンタリーに出演することにしたのに、今はひたすら目を潰すことだけに執着している。治そうなんて気はこれっぽっちも残っていなかった。
「ピンポーン」
何度も何度もインターホンの音が鳴り響く。ドアを叩く音が聞こえる。
「対応してもらっていいですか、俺見えないんで。」
ドアが開く音が聞こえると、誰かが俺を呼ぶ声が聞こえた。そして取材班のみなさんと、言い争っている様子だった。
「あんたら、いったい太田さんに何をしたんだ。」
「プロデューサーを呼びますね。」
「あんたか、このドキュメンタリーを作ってるのは」
「そうですよ?それが何か?」
「太田さんは入院しなければならない、絶対安静だ。なのに勝手に連れて帰って、いったい何を考えてる。」
「これは彼の要望ですよ、彼が帰りたいって言ったから家に連れて帰ったんですよ。」
「かと言って、本当に帰らせるやつがあるか。今すぐ病院に連れていく。」
俺の前に誰かが来た。
「太田さん、もう大丈夫です。今から君は病院に帰って適切な治療を受けて貰います。もうコイツらに、振り回されることはないんです。」
取材班の悪口が聞こえる、俺は振り回されたりしてない。俺は俺の意思でここにいるのに。やめろ やめろ
「離せー!!」
「なんでだ!?コイツらと離れられるんだぞ嬉しくないのか!」
「嫌だ、嫌だー!俺はここにいるんだ、病院なんかには戻らない、絶対戻らないぞーー!」
俺は叫びながら、担架に乗せられた。抵抗しないように、ガッチリ拘束されて救急車で運ばれた。
「ふざけるなーー!」
気がついたら、病院だった。目に包帯が巻かれてても分かる。病院特有の薬品の匂いがする。身体が起こせない、俺は早くここから抜け出して、目を潰さないといけないのに。
病室のドアが開いた。誰かが入ってきたんだろう。俺は必死に声を出した
「助けてくれ、早く、早く解放してくれ!目を潰したいんだ!なぁ取材班の人たちだよな、俺をここから開放してくれ、身体が動かないんだ!」
必死に叫んでいるのに、誰も助けてくれなかった。
「太田さん、大丈夫ですか?」
「大丈夫じゃないです、早く解放してください。早く!」
「少しお話があるんです、聞いてくれるか。」
この話し方は取材班ではない、俺を担当してくれてる先生だった。先生は大事な話をする時語尾が敬語じゃ無くなる。
「太田さん、アイツらは人が狂う様子を撮影するんだ。珍しい病気の人の認知のためのドキュメンタリーを撮影してるんじゃない。」
「嘘だ、俺は狂ってなんかない!この通り普通だ!」
「聞いたぞ、君は目を潰したいって。ずっと言ってたらしいな。それが普通なのか?」
「それが今の望みなんだ!勝手に狂ってるって決めつけるな!」
「じやぁ、私の昔話を聞いてくれないか。これを話して少しでもキミが変わってくれたらいい。」
「昔話なんていいから、早く拘束とけよ!」
「これは、10年くらい前かな。ドキュメンタリーの取材を受けた私の患者さんが亡くなったのは。彼女も例がない病気でね、君と同じように藁にもすがる思いで取材を受けたんだって。そうしたら何か奇跡が起きるかもしれないって、言ってたな。」
「その人には取材班がずっと付きっきりで、診察中にも関わらず、インタビューを続ける非常識な人たちだったよ。そんな生活に病んだのか、分からないけど君と同じように、勝手に病院から抜け出して家に帰った。」
「その後から、人が変わったように自傷行為を始めたんだ。その人は足が悪かったから、自分で足を切断しようとしたり、劇薬を塗り込んで壊死させようとしたりしていたんだ。周りが気づいた時にはもう遅かった。やっと終わったんだって、幸せだって言ってたのに、その後自殺したんだ。」
「それとこれとじゃ話が違うだろ、俺は俺だ。俺はそんなことで死んだりなんかしない!」
「君を調べさせて貰った時に、亡くなった彼女と同じ薬が検出された。」
「俺っ、くっ、薬なんて飲んでない、、!」
「やっぱりか、彼女も同じことを言っていた。人がおかしくなる様子を撮影するために、君が寝ている間に薬を注入しているんだ。」
「そんなわけない!取材班を悪く言うな!酷いことをするような人たちじゃない!」
俺は必死に、取材班の無実を証明しようとするも、全て過去に取材された女性と同じことがおこってるらしい。
「証拠は揃っている。君の目の激痛も薬のせいだ。適切な治療を受ければ治る、だから頼むあの取材班と離れてください。」
離れたら、目の激痛が治る…!
「また来るので、今度は抜け出さないようにお願いします。」
「ガチャ」
ドアが開いた、今度は誰だ。
「カチャ、カチャ」
拘束具が解かれた、そして俺は抱きかかえられながら、どこかへ連れて行かれた。
目が覚めると、家だった。いつものベットに寝ていた。取材班の人たちが俺を助けてくれたんだ。
「あの、助けてくれてありがとうございます。」
「インタビューです」
「さっき病院で、何か吹き込まれましたか。」
「取材班のみなさんが、人がおかしくなる様子を撮影することが目的だと。」
「他にはありましたか。」
「俺が寝ている間に、薬を投入していると」
「全て嘘です。私たち取材班は、病気のみなさんの全てを映してるだけなんです。何もおかしいことはしていませんよ。」
そうだと思った。俺の取材班の絆は密着されてない人たちにわかるわけが無い。
「ですよね、よかったー」
電話とインターホンが鳴り響く。けど俺は全てを無視し、いつもと変わらず取材班と共に、目の激痛に耐えながらカメラの前に立っている。
「出なくていいんですか。」
「いいですよーどうせ病院の人たちでしょ。俺は彰人や先生よりも取材班のみなさんを信じますから。」
「ガチャッ」
ドアが開いた。おかしい、しっかり施錠してるのに。なんでだ
「仁!お前本当にふざけるのも大概にしろよ!」
入ってきたのは、彰人だった。生活を手伝って貰おうと合鍵を渡しておいたことをすっかり忘れていた。
「病院へ帰ろう、治療を受けてまた元気になって、一緒に遊んだりしよう。な?」
彰人の言葉は俺には響かなかった。一緒にまた遊ぶだと、軽々しく言いやがって。
「彰人、お前も俺のことをじゃまするのか…!」
すると後ろから、病院の先生たちが駆けつけて、俺をまた拘束しようとしてきた。
やめろ、俺は病院になんか戻らない、取材班のインタビューに答えて、自分の人生を取り戻すんだ!
そして俺は、目の包帯を外し、激痛に襲われながら外へ飛び出した。
階段を降りて、ひたすら逃げ続けた。全力で走りながら叫んだ。後ろには彰人や先生が追いかけてきている。
「嫌だ、嫌だー!」
視界は相変わらず一色で、ほとんどのものは見えなくなっている。おそらく人だろうってくらいの見え方で、文字や信号などはほとんど分からない。前まではギリギリ見えていたはずなのに、包帯生活になってからは本当に悪化している。
早く、目を潰した…
その時だった、クラクションの音が耳の前で響いた。
俺は、車に轢かれた。
慌ただしく人が俺の前に集まる、その中には彰人も先生もいたと思う。けど取材班はいなかった…
激痛、目以外の場所も痛い。全身ズタボロだった。
目が覚めると、病院だった。横には見覚えのある顔。彰人の顔がはっきり見えている。
「うわっ、えっえっ!」
「仁!目覚めたのか!?」
彰人が先生を呼びに行った。その間俺は何が起きたのかを、整理することにした。彰人と先生に追われて、その後に交通事故にあったそこまでは、覚えてる。けどなんで、
目が見えるようになってるのかが分からない。
「先生、仁が目を覚ましたんです!」
「俺は、何があったんだ。」
「太田さん、あなたは車に跳ねられて3日目を覚まさなかったんです。」
3日もか、けど目が見えるようになったのは関係ないのかな。
「よかったですね、本当に。では私はこれで失礼します。」
先生が早々と、行ってしまった。もっとこう言うのは喜ぶんじゃないのか、こんなにあっさりなものなのか。
「彰人。俺今、普通に目見えてるんだけど。」
「本当なのか!?一色じゃないのか!?」
「うん…」
そう伝えると彰人は、先生の所へダッシュで伝えに行った。
「先生、仁の目が戻ったらしいです!」
「言いづらいんだけど、それね事故の後遺症なんです。」
「えっ、」
「頭の打ちどころと、目が奇跡的に連動して今は見えてるだけなんです。病院に運ばれてきた時から、既に彼の目は失明していました。」
「じっ、じゃぁ今後戻ることはないんですか!?」
「おそらく無いでしょうね、あと持って数日でしょう。」
「そっ、そんなぁ」
「彼の目には、劇薬が点眼されていました。なのでそれの影響もあるでしょう。」
「げっ、劇薬…ですか。」
「彼の言う取材班が、寝ている間や気を失っている間に目に点眼していました。」
「仁に伝えないと!」
「伝えない方がいい。彼は取材班を信用しきっている。また余計なことを言ったら今度は命があるかどうか…君の母親もだろ。」
「はい…」
「おかえりー」
「ただいま、、、」
いつもより顔が沈んで見えた。
「俺さ治るって、思ってなかったから今すっごい、嬉しいよ!取材班の人たちもよろこぶだろうな。」
「なぁ、例えばの話なんだけどさ、お前が信頼しきってる人に裏切られたらどう思う。」
急に妙な質問をしてきた、彰人はたまにそういう所がある。
「そりゃ腹立つし、嫌だよ。一生恨むかも」
「それをさ、ずっと忠告してた人がいたらどう思う。」
「俺バカだなーって思う。」
その質問を境に、彰人との会話は終わった。
「じゃ俺、今日は帰る、また来るからさ。」
「おう」
俺の目に異変がおこったのは、その日の夜だった。
夜中に何度もナースコールを押した。目が見えなくなっていた、視界が一色ではなく、真っ黒。何一つ見えないそんな恐ろしい世界になっていた。
「落ち着きなさい、大丈夫だから。」
「嫌だ、怖い。なんで、さっきまで見えたのに!」
そして夜が明け、彰人がお見舞いに来てくれた。
「なぁ彰人、俺見えなくなったよ目。あんなに望んでたのにさ、いざみえなくなると不安で心細くて、本当に彰人がいるのかすらわからなくて、、、ずっと取材班の人たちもいなくて。」
「仁、心して聞いてくれ。」
いつになく真剣な声色で、彰人が話し出す。
「お前が一時見えるようになったのは、事故で頭を打ったからで治ったわけじゃなかったんだ。あと信じたくなかったら信じなくていい話なんだが聞くか?」
そんな風に聞かれたら気になるので聞くことにした。
「お前は、事故に遭う前から視力は失ってたんだ、取材班の策略によって。」
「策略…?」
「うん、お前が寝ている間や気を失ってる間に、目に劇薬を点眼していたらしい。先生に証拠を見せて貰ったから間違いない。」
そんな、馬鹿な…けど、ずっと先生も彰人もずっと忠告してくれてた、はずなのに
「俺って、ホントに救いようのないバカだな。」
俺は過去の過ちを思い出した、先生や彰人を裏切って病院を抜け出したり、酷いことも沢山言った。なのに俺は…
「彰人、ごめん。今更謝っても意味無いか…」
「そんなこと無いよ!」
「友達でいてくれるか?」
「もちろん」
その後俺の病気も、記録シリーズとして世に出てしまったらしい。ふざけるのも大概にして欲しい。そして俺の病名が決まった。
単色病
視界が瞬きする度に、一色になる病気。今はまだ治療法は確立していない。
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