町田康「くるぶし」を読んでみた
町田康の第一歌集「くるぶし」を買った。
町田康の歌は聞いたことがないし、小説も読んだことがない。
でも、歌手で小説家なら、その人の詠む短歌は絶対におもしろいはず、と思いレジへ直行。
この勘は見事的中。おもしろかった。
特に気に入った一首はこれ。
「貯蓄ゼロメインディッシュに麦混ぜて最高やんか春の炬燵は」
この歌集の他の短歌にも言えることだが、関西弁で詠まれていることがわたしには新鮮だった。関西弁ならではの迫力や音楽がある気がする。
肝心のこの一首だが、貯蓄がない。具体的にはメインディッシュに麦を混ぜている。となるとメインディッシュは肉や魚ではなく、米。しかも安い麦を混ぜている。それのみの食卓。食は生きるために最も重要だ。しかしそれを削ってまで春に炬燵に入ることが最高だという。
冬が終わっても炬燵を片付けない怠惰な人間だからこそ、貯蓄が無くなる。しかし、その怠惰さによって、春のまだ肌寒い日に炬燵で暖がとれるという最高を享受できる。
怠惰さが幸福と不幸を延々と生み出す無限ループみたいな一首だと思った。「春の炬燵は」で終わっているところも、この続きがあるような気にさせる。
好きな一首だ。
この記事が参加している募集
生きていく糧になります。本当にありがとうございます。