見出し画像

お母さん、毎日心配だよね

「私は17歳の子に
この量のこの薬は飲ませたくありません!」

力強い眼差しで
まっすぐに私を見て
そう言われた先生

「え…」

何が起こったのか
何を言われているのか
何を返せばいいのか
すぐに理解したくても出来ず
ただただ困惑しました。

「これは…この薬は。うーん…いや
この薬が合う人もいます。
この薬で良くなる人も実際いるんですよ。
でもね…17歳の子に私は使いたくないです。」

大変な話をされている。
ちゃんと聞かなくてはいけない。

でも、まるで耳鳴りがしているように
先生が話してくれていることが聞きにくい感覚。

ちゃんと聞かなければと思えば思うほど

どうして?治る薬を飲ませていたんじゃ?
飲めば治りますって言ってたのに?
なんで薬が増えていく度
抱いた不安を飲み込んでしまったんだ?

次々ともう一人の私が頭の中で
絶え間なく喋り続けました。

娘のお薬手帳をじっと見つめる先生が
静かに丁寧に話をしてくれます。

「私は主治医ではないから
勝手な事をしてはいけないと思うけど。

今の不調の原因がどこから来てるか
いろんな疾患の可能性も調べないと。

いや、ただね 
うーん…この量と種類は…
娘さんの現状を聞く限り
確かな事は言えませんが…違う気がするんです」

そうだ。ちゃんと聞かなきゃ
一生懸命、ぐちゃぐちゃの頭と気持ちを
落ち着かせようと思いました。

「あの…私、てんかんかどうかわからないのに どうして抗てんかん薬が処方されてるか
未だに理解出来ないんですが」

「そうですよね。そう思われると思います。
ただね、確かにてんかんではない方にも
抗てんかん薬が処方される事はあります。
てんかんを治す薬ではないからなんです。
どの薬も症状を和らげるために使いますから。 

私が17歳の子には使いたくないと言った物も
合えばとても効くお薬なんですが…」

先生はお薬手帳を閉じて
まっすぐ私を見ました。

「とにかく娘さんを後日連れて来てください!
お薬以外に私に出来ることが
何かあるかもしれない」

深い闇に一筋の光が差したような気持ちでした。

嬉しくて声も出なくて
ただただ何度も頷いている私に

「お母さん…毎日心配だよね」

やわらかい声と優しい言葉に
涙が止まらなくなりました。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?