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神の遣いは静かに暮らしたい第3話

 第3 ラフ

 「ミャ〜ォ」
 お腹に感じる適度な重さとその鳴き声で、私は目を覚ました。
 「おはよう、起こしてくれてありがとう。私はなんだか悪い夢を見たみたいだよ。新年度から災難だねぇ。」
 眠気半分にミルクに声をかけてお腹の上からどいてもらおうとした。
 が、どけようとした手に頭をこすりつけてくるだけで、いっこうに降りる気配はない。
 やけに機嫌がいいな、どうしたんだろ。ま、猫はこーゆーとこがかわいいんだし、気にしなくていっか。だってかわいいもん。
 そんなことを思いながら天井をぼーっと眺めていると、ココアがやってきた。
 「ニャ〜ァ」
 こっちもなんだかご機嫌よろしいご様子だ。そんなにご主人のお目覚めが嬉しいのだろうか。
 あ、なんか2匹でじゃれ合い始めた。かわいいな。
 と思ったらどっかに走り去っていっちゃったよ、かわいい。
 さて、私も学園に行く準備でもするかぁ。
 そうして起き上がってパジャマのネグリジェから制服に着替えた。
 5分程度で朝食をとって、ベッドに腰掛けた。
 出席確認は8時半だから、まだ時間がある。なにしよう。
 ふっ、とベッドの隣にある机に視線を向けると、そこには昨夜読み終わった借りものの伝記があった。
 その伝記には、この国の起源についてが描かれているのだが、ここまで正確なのはあまりないらしい。ほとんどが幼児向けに改変されているそうだ。
 確かにグロめのバトルシーンとかあったからな、そりゃあ幼児には読み聞かせられないよね…。
 と、まあそんなことは置いといて、2周目にでもいくとしよう。
 そそくさと椅子に座って本を開くと、あっと言う間に10分が過ぎた。
 「やば、そろそろ出る時間じゃん。もう準備しなきゃだ。」
 危ない危ない、遅刻しそうになる前に気づけてよかった。
 学園指定の鞄を開き、必要なものが入っているか確認した。私は忘れっぽいので、確認は大切である。たまに確認すべきことも忘れるんだけどね。
 特に問題はなかったので、忘れないうちに借りものの本も入れておいた。偉いぞ、私。
 鞄のふたを閉めて、そして肩にかけて、準備はばっちりだ。
 「ミルク、ココア、いってきます。2限目の前に呼びに来るから、それまでお留守番お願いね。」
 玄関でそう声をかけ、2匹のそれぞれな返事を聞いて靴を履いた。
 「いってきま〜す。」
 寮の部屋を出て後ろ手に扉を閉める。
 「レア、おはよう。貸した本、どうだった?」
 「おはよう、ラフ。おもしろかったよ。この国も捨てたもんじゃないんだねぇ。」
 人の部屋の前で出待ちしていたこの少女はラフレシア・ミルト、私の数少ない友人である。それなりにいいとこの貴族のご令嬢さんでもある。
 「ふふっ。捨てたもんじゃないってなによ?まぁおもしろかったならいいわ。言っておくけど、この本、本当に『レアもの』なんだからね。」
 「はいわかりました。なので名前いじりやめてくださいラフ様。すぐに返しますから。」
 そんなふざけた会話をしながら本を返して、階段を下り始めた。
 「それにしてもよくあんなところで出待ちできるね。階段の真ん前だよ?絶対みんな通るでしょう?なんか気まずくならない?」
 「ならないわ。みんな魔法式エレベーター使ってるから、人が来ないのよね。」
 「そうなんだ。いつも 太るから運動しなきゃ とか言ってるのに、なにやってんだろ。」
 「きっと楽だからでしょうねぇ。」
 こんな感じの何気ない話をしているうちに、1階に到着した。
 そのまま外に出て、学園と寮をつなげる中庭に出た。中央には大きな噴水があって、とても綺麗だ。
 道なりに歩いていくと、数分で昇降口についた。
 それぞれの下駄箱で靴を履き替え、すぐに合流する。
 それからまた当たり障りのない会話をして各々の教室に向かっていると、あっという間に到着してしまった。
 「それじゃ、2時限目にまた会いましょう。」
 「うん。」
 簡潔に別れを告げて、私たちはそれぞれの教室に入った。
 少し経って始業の時間になり、担任の先生が教室に入ってきて、教壇の前に立った。
 「おはようございます。今日の1時限目はランク測定を行いますので、出席番号が1番の人から順番にならんでください。」
 …そういえば今朝の悪夢でとんでもない事態になっていた気がするがさすがに夢だよな?まあ夢かどうかはランク測定で分かるか。まああんなことは絶対あるはずない。たぶん!きっと!
 そんなことを願いながら、私は自分の番が来るのを待っていたのだった。


 話末あとがき
 『神の遣いは静かに暮らしたい』3話です!投稿1ヶ月遅れですね…すみません…
 しかもこの先の展開ちょっとしか決まっていないというね…いつも即席クオリティです。なんとか脱出したいものですがそうもいかず…
 我ながら話末あとがきが1番活き活きしてる気がするのはなぜでしょうね…ガンバリマス…ハイ…
 
 それでは最後に、ここまで読んで頂き、ありがとうございました。また次の機会にお会いしましょう!

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