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都内私立高校出身者、地方の公立高校教員となる(3)

 公立高校教員となって3校目。
 県内で人口が3番目に多い市のトップ進学校に異動しました。
 いよいよ予備校時代から磨いてきたもの・経験が活かせるかと思ったのですが、そう現実は甘くない…。

高校の受験指導とは

 予備校でいう受験指導は「勉強のやり方」「問題の解き方」「各大学の入試問題の傾向に沿った答案作成の微調整」になります。
 一方、高校でいう受験指導は「受験校の相談」から「学費・奨学金」「願書の取り寄せ指示から、その書き方」まで果てしなくあります。
 今から20年以上昔のことですが、大学の初年度納入金は「私大:120万円」「国立70万円」くらいにはなっていました。しかし、そのことを知らない人も多い。保護者の半分くらいは大学を出ていますが、その世代は「私大50万円、国立20万円」の時代。
 夏の三者面談で初めて学費・金額を知り、「何でこんなに高いのですか」という怒りを内在した質問がくる…。それ、高校教員に聞いてどうする…と思うのですが…、怒りは私に向けられています…。
 また、受験校選びを進める中で、「滑り止めの入学手続き〆切日(つまり入学金などの納入日)」より後に「第一志望の合格発表日」があることを知り、その怒りを浴びることも…。

高校は、実弾が飛んでくる最前線

 予備校や塾は、「守られた最前線」であることがよくわかりました。 
 高校は、「実弾が飛んでくる最前線」。
 たとえば…、高校受験では、願書の取り寄せから出願までを「中学校」が行います。その経験から、大学受験も、願書の取り寄せから出願まで「高校」がやってくれると思い込んでいる保護者・生徒さんも少なくない。
 「長女の大学受験では、全部高校がやってくれましたけど」と言い張る保護者の方の話をよく聞いてみると、長女さんは「指定校推薦」だったりする。それは、確かに高校がやりますね…。
 でも、一般受験は違うんです。
 なぜですか!
 高校は義務教育ではないからです。
 でも、まだ未成年じゃないですか!
 ですから、保護者の署名・捺印の欄がありますよね。
 おかしいじゃないですか!

学力崩壊の要因が見えてくる

 平成7年頃から、全国の進学校で異変が起きました。
 今まで毎年進学者を出していた地元国公立大学への合格者が激減することから始まり、今までなら受かっていたレベルの大学に受からなくなったのです。もちろん、すべての学校・生徒でそういう現象が起きたわけではありません。しかし、当時私がいた学校では、この異変が大きく出ていました。
 ただ、私は異変後に赴任しています。原因はわかりません。
 しかし、何となく原因と言うか、それは受からないよな…と感じるようなことが増えてきました。パターン化するとこんな感じです。

・高校受験と大学受験とを同じように考えている
・間違った情報の思い込みから逃れられない
・勉強以外の相談が圧倒的に多い

 一言で言えば、大学受験について正しい情報を伝えても、結局「自分にとって都合のよい解釈」をしてしまうということですね。
 初任校で出会った「未成年の喫煙を正当化する理論」と構造的には同じです。「正解は③なのに、④であると主張し続ける生徒さんの論理」とも共通点が多いです。「自分にとって都合の良い解釈・誤った結論」から出発した思考なので、自分にとって都合の悪い事実は排除されているんです。

思考が恣意的・主観的になっている

 「事実に基づく」という思考の原則が崩れていると感じました。
 「誤った事実に基づいて、恣意的に思考」しているのです。
 こうした思考は、「先生も知らなかったんじゃないの」というネガティブな憶測や、「先生が教えてくれなかったから」「先生に否定された」という逆ギレ系自己正当化思考を導きます。
 こうして、「世間知らずで、受験についても無知な先生が、生徒を否定する」というイメージが喧伝されていくのですね…。
 ただ、こうしたパターンが可視化できれば、対策を考えられます。
 この頃「課題発見とその解決」という言葉も普及してきました。
 恣意的・主観的思考との戦いが始まります。この課題を解決できれば、学力も進学率も上がるはずです。
                    つづく…



 
 

   


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