カレーパンと小さい子。(エッセイ)
題名通りのnoteになります。
昔住んでいた地域に、小さいけれど人気なパン屋さんがある。
そこのパン屋さんの駐車場も小さくて、車を停める時、いつもヒヤヒヤしながら停めるのだか、少しでも時間がズレてしまうと満車で停められるず、パンを買わずに帰宅する事もしばしば…。
そんなパン屋さんへと、また訪れた時の事。私が来た時間は少し遅く、種類はあったけれど、少なくなっている時だった。
ご近所に住んでいる方とか常連さんは、パンが焼き上がる時間を大体把握していて、それに合わせてここのパン屋さんにやって来る。
その流れに丁度良いタイミングで合わせられれば車も停められるし、多くの焼きたてのパンに出会えるのだか、それは中々難しいものだ。
この時は、父と母とでパン屋を訪れていたのだが、私達の後にお母さんと3歳くらいの男の子がパン屋さんにやってきた。
『カレーパンが食べたい!カレーパンが食べたい!』
男の子は繰り返し言っていて可愛かったけれど、パン屋さんにカレーパンは出ていなかった。
『カレーパンってありますか?』
とその子のお母さんが聞く、
『もう売り切れてしまったんですよ』
と、パン屋さん。
『もう、今日は出ませんか?』
『はい。申し訳ありません』
男の子が食べたかったカレーパンは、売り切れてしまっていた。
『カレーパン、もうないんだって』
お母さんはそう男の子に伝え、帰ろうととする。
丁度、私達のお会計も終わり、その親子とパン屋さんを出るタイミングが重なった時。
『カレーパンが食べたかった……っ』
男の子の声は今にも泣きそうな声。
声がうるうるしている。
そんな男の子に、お母さんは
『別のパン屋さんに行ってみよう、ねっ』と、その子を慰めていた。
カレーパン、美味しいカレーパン。
小さい子をも魅了するカレーパン。
どうか、あの男の子がここのカレーパンじゃなくても、違うパン屋さんでカレーパンが食べられてますように。
可愛く、純粋な願いに、キュンと静かになった私なのだった。
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