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エヴァンゲリオン総括③〜エヴァンゲリオンシリーズ全体の特徴①と新劇場版シリーズ総評〜



さて、新劇場版シリーズに至るまでをこれまで語ってきた。

これからは新劇場版シリーズにも触れていこうと思う。



エヴァンゲリオンシリーズ全体の特徴①


ここで新・旧全シリーズ通して間違いなく言えるのは、エヴァンゲリオンとは架空の物語であると同時に
庵野秀明のドキュメンタリー・プライベートフィルムでもあるといえるということ。

その時々の庵野監督の心情、経験、状況がとてもある意味ストーリーに正直に反映された、非常に個人的なものでもある、と。

旧シリーズにおいてそうであることは前々回に語った。

実際、新劇場版シリーズにおいても、の終盤でカヲルのセリフから作品のある種のループ構造(旧シリーズからは100世紀以上経過しているものの)が示唆される。
これもまた庵野監督がエヴァをやり直しているのと同様、作品世界内でもやり直しが起こっているという現実と虚構のリンクだ。

また、Qの時点の予告とは全く異なる内容も東日本大震災の影響を受けてストーリーの変更があったとの話もあるし(ニアサードインパクト以降の破滅的な状況は震災以降を示しているとも言えるかも)

シンエヴァでの農作業の描写は、Qでのファンの賛否両論を受けて鬱になった後に庵野監督が実際に取り組んだ作業を反映している。

また、Qで戦艦に乗ったり、シンエヴァでの戦艦バトルは庵野監督の過去作ふしぎの海のナディアでも描かれたものであるし、彼の戦艦好きが大いに反映されたものであるだろう。

シンエヴァ最後に登場する宇部新川駅も、庵野監督の地元の駅で、終盤には青く戻った海含めて監督の故郷の街の全景が映されて終わる。

さらに、シリーズ通して主人公シンジが父ゲンドウと不和なのも、庵野監督自身父親とは複雑な関係性だったのもありそれが反映されているという。

その後のシン仮面ライダー同様、シンエヴァもまたキャリア総決算のような内容となった。

僕はこういった個人的な好みや経験や感情を芸術に昇華できる人がアーティストであると思うのだけど、庵野監督も間違いなくアーティストであると思う。

では、新劇場版シリーズの総評を語ろうと思う。

新劇場版シリーズ総評


個人的には、面白かったとは思う。蛇足や駄作とは思わない。良作だし、意欲作だったとすら言えるかもしれない。
ただ、新劇場版シリーズには「新しさ」は無かった

勿論、新キャラ、新メカ、新設定、新展開等、以前にはなかったものが新シリーズには一杯ある。

僕はそういう細かい面ではなく、大まかな筋や設定は同じである、ということに少し残念さを感じた

そもそもはループ構造が示唆される以外は概ね旧シリーズと同じような展開だったの時点でも、ただのリメイクと思っていた僕にはサプライズで期待は膨らんだ。
上記の通り作品世界と現実がリンクしている点がやはり面白いと思ったから。

けれど、大きく変わったと言われるですら、ゼルエル(?)戦まではほぼ同じ。トウジアスカで役割が変わっただけで、ダミーシステムによる任務遂行、それが原因でのシンジのパイロット拒否と復帰は同じ。ラストの初号機の覚醒以降、ニアサードが起こり、綾波を救出し月よりカヲルが飛来する以外は大まかなストーリーラインや使徒の特徴は同じだ。

さらに大きく変化したと言われるQですら、テレビシリーズ同様カヲルと交流を深め、またしてもカヲルは失敗して死んでしまう。
最後の最後にようやくカヲルが罠だと気づく点まで一緒なのは流石にどうだろう
(何回もループしてるならいい加減学習しようよカヲル君。。。)

途中でセントラルドグマにて有人無人の違いはあれど初号機vs弐号機の戦闘が起こるのもテレビシリーズと同じ。
さらに終盤、テレビシリーズと違って自らカヲルを手にかけてはいないものの、ある意味自分の責任でカヲルが死にシンジが意気消沈するのも旧シリーズと同じ。

結果、シンエヴァですら、旧シリーズより進行していた人類補完計画も結局は旧シリーズと同じ計画だったし、ゲンドウの願いも同じ。
新シリーズでは使徒と人間の関係性や運命についてはさらに悲劇的にはなっているものの、それが具体的にストーリーに絡むわけでもなくただの設定だったのもどうか。
なんなら状況は違えど加持やミサトが結局死ぬ点まで同じだ
彼らが生還し幸せに結婚するルートがあってもよかったのに。

しかもゲンドウに至っては今回も失ってしまった自分の妻ともう一度会いたいという切実ながら身勝手な目的で世界をさらに壊滅的な状況においやるという、旧シリーズ以上にトンデモ親父と化していて苦笑してしまった。
その稚拙さにおいては次回以降具体的に語ろうと思う。

このように新シリーズでは細かい展開は勿論違うものの、大筋や主要な設定は大きくは変更されず、
やったことは旧シリーズのただの別展開であり、本当の意味での「新しさ」が無かったように思われる。
勿論、面白くなかったわけではないのだけど。

僕は、ループ構造をで提示し、ここからストーリーが予告どおり大きく転換していくものと思っていた。しかし蓋を開けてみれば似たような展開のオンパレードなので、残念に思った。

さらに、今回はクリエイターとしての自意識は抑えめで、旧シリーズにあった、フィクション(都合のいい夢)を作るクリエイターとしての苦悩のようなものはテーマとしては薄れてしまっていた。

ゆえに、旧シリーズにあったあの切迫感やシリアスさは控えめで、それゆえに旧シリーズ以上に万人受けするよう作られてはいるものの、旧シリーズのあの絶望感やシリアスさが好きだったマニアには物足りないものになってしまっているように思う。

そこら辺はトレードオフの関係なのでどうしようもなくはあるけれど。

これは勿論、エヴァンゲリオン総括①でも少し語った、旧シリーズ当時の1990年代後半と新シリーズのゼロ年代以降のアニメを取り巻く世界含めた環境が大きく変わったことにも関係している。

アニメ自体の社会的な地位が格段に向上し、クリエイターとしての苦悩は解放された部分は多分にあると思われる。

だからといって、フィクションを描くクリエイターとしての苦悩が消え去るわけではない(主人公と違って世界を救済するわけでもモテるわけでもない)と思うので、そこらへんのテーマはとりあえず置いておかれてる感じは旧シリーズのファンとしては残念だった。

作家の村上春樹もまた、最新作の「街とその不確かな壁」では結局ただのこれまでの焼き直し的な作品しか書けていなかったのもまた記憶に新しい。

クリエイターとは同じテーマを書くものだけど、やはりマンネリズムからは逃れられず、それは庵野秀明も例外ではない、ということか。
勿論ポジティブな側面もあります

というわけでここまでは何とかライトに書いた。
こう見えてシリーズ全体見るには見た、程度の人にも読みやすいようこれまで書いてきたつもりだ。

けれど、次回以降はさらにマニアックに具体的に新劇場版シリーズ、いやエヴァンゲリオンシリーズの不満点や疑問点を書いていこうと思う。



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