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写真作品との向き合い方「安井仲治」

美術館巡りをすると写真作品とも出会うことがある。
芸術としての写真と向き合う時はビジネスとしてどのような視点が得られる
のかを考えてみたい。

今回、鑑賞したのは兵庫県立美術館で開催(2023年12月16日〜2024年2
月12日)されていた「安井仲治 生誕120年 僕の大切な写真」である。

安井仲治 僕の大切な写真展
安井仲治愛用のライカ
写真展の概要


観察する


写真作品との向き合いかたについて、私は絵画等と全く変わらないと思って
向き合っている。
まずは観察である。
撮影された時期、場所、時間、撮影者のプロフィールがわかればヒントが得
られる。
古い写真であれば、その時の社会的な背景なども調べることで、よりその作者に近づくことができるだろう。

観察 → 作者自身について・撮影時期・撮影場所・撮影時間など

次にカメラを通して切り取られた作品を隅から隅まで観察する。

フレーミング効果を意識


心理学でいうところのフレーミング効果を意識することで、より作品の
意図を把握することが出来る。

なぜ、そこの対象物を切り取ったのか?
作者の意図を想像しながら観察することで、様々な可能性を想像する
ことが可能になる。
カメラというものを通して切り取られた対象物に対して、カメラを向けた
作者の気持ちや意図を想像しながら観察することは非常に楽しいし、
ビジネス現場での観察眼を鍛えることが可能になると思う。

また、効果的なフレーミング技術が身に付くことで、資料の作り方や
観察のレベルが上がっていくと思う。


観察の練習(実践)


私の見た中で好きだと感じた「斧と鎌」という作品である。
撮影されたのは1931年。1931年は満州事変が起こった年である。
影からは日中であることはわかる。
それ以外は、斧と鎌を扱うのは田舎の農家であろうか?
さて、この写真は単純に面白い。
影を見るとBSとも見える。
単純な斧と鎌の影ではなく、階段で影を作ったのがポイントである。
遊び心を感じられるし、私が想像するに「オモロいやん!」と影の
発見に心躍り、ひたすらに地面に向けてシャッターを切る作者の童心
に戻った風景が思い浮かぶ。

斧と鎌


次の写真は相剋という作品で、1931年に神戸で撮られたものである。
居留地跡の赤煉瓦に貼られたポスターを撮っている。
皆さんは観察から何を感じるだろうか?

相剋 1931年


最後に

最後に安井仲治について触れておきたい。
作品は「自像」であり、安井自身の顔写真である。

この作品の右端に書かれているパネルに安井仲治を表現しようとする主催者
の意図が伝わる。


「新興」と云う二字は要するに
己れを停滞せしめない為の呪文と心得て
自分の心境を深くし、
良い作品を生み、世の中を飾ればいいのである。

安井仲治は、恐らくファインダーを通して、常に新しい表現にチャレンジ
をし続けた人物なのだろう。
常に「新興」と呼ばれるように自分自身をブラッシュアップし続けたのだ
と思う。
今回は作品を通じて、「俺は常に進化し続けた。お前はどうだ?」と言わ
れているような気がした。

安井さん、私も常に「新興」を目指しますよ。

自像

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