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フランスで無料オペラ、お金が無いなりの最高の休日の過ごし方。

留学生活って、普通もっと旅行に行ったり、外食したりするものなのだろうか?
私だって旅行が大好きだけど、フランス2年目になると貯金も底をつく。

お金のない留学生、それでも毎日を楽しみたいと思うと選択肢は…
景色を眺める、街歩き、走る。この3つで決まりだ。

ということで、街歩きの無料イベントを見つけ飛びつくように参加した私。
(その真の理由は無料昼食付きという文言があったからというのは言うまでもない
私の通っている大学が市と提携し、本来観光客向けに有料で提供しているアクティビティに、今回、学生が無料で参加できる機会をもらえたのだ。

フランスのこういうところが大好きだ。
お金のない学生の味方。フランスでは”学生=お金がない”は当然のこととされ、食生活のサポートから、こうしたちょっとしたアクティビティから、いろいろな面で支えてくれる社会である。

街歩きということで、日本から持ってきているそんなに多くない服の中でもお気に入りのワンピースを下ろし、三つ編みをして、素敵な写真を撮ろうとわくわくと出かけた。


お金をかけず、日常を楽しむ

信じられない。
ウォークじゃなくて、ランだった… 集合場所まで行くと、何やら私だけ服装が違う。他の参加者はみんな揃って、しゅっとしたスポーツウェアに運動靴。私はワンピースにヒールの靴。

間違えた…

案内に書いてある"footing"。フッティング、フット、足…
誰が見ても、パッと見たら「歩く」という意味だと間違えるはず!だが、どうやらこれは英単語で、「軽いジョギング、ランニング」という意味だったようだ。

何で、そんな重要な一単語だけ英単語を使ったんだ…!フランス語はわかっても英語はわからない。
全てフランス語で統一してよと思いつつ、そんな格好でランニングできる?とインストラクターさんに言われたので、「はい大丈夫です、やってみます!」と返事して、その浮いた格好のまま参加することになった。

いつもの景色も、新鮮に

さすがに、ヒールで走るのはかなり大変だった。
ランニングウェアの集団の中に一人ワンピースというのは、側から見るとかなり浮いている。でも、何とかみんなのペースに合わせて追いつき、橋を抜けて川に差し掛かると、今まで通り過ぎていた景色が一段と綺麗にすがすがしく、新しく見えた。

これこそ贅沢なのだろうか。
高いレストランに行かなくとも、入場料の高い観光地に入れなくとも、ただの景色に美しさを感じる時間を噛み締められること。

取り残され3人組

ちなみに、街歩きだと勘違いしていたのは私だけではなかった。
近くを走っていた韓国の女の子が、私も完全に歩くつもりで来たのとこっそり教えてくれて、別の子も、また大学図書館のおばあさんも、走りに来たんじゃなかったのに、と。
私は運動が苦手なので追いつけていたのは最初だけで、さすがに運動靴でないと足が痛くなってきて、どんどん後ろに、最終的に、走りにきたつもりじゃなかった中国の男の子と、大学図書館のおばあさんと私で三人、置いてけぼりになり、このおばあさん独自のガイドツアーで、別ルートでゴールすることとなった。

南仏、トゥールーズ。
この街に来て半年だが、まだこんな見方もできたのかと、日常の景色にたくさんの発見をできた午前だった。

無料でお昼をゲット



お金をかけないからこそ、出会いがある。

午前だけで十分満足な休日だったと家に帰ると、フランソワさんから連絡があった。ちなみにフランソワさんというのは、私の60代の友人だ。
出会いはこちらに。↓


近くの大学でプロのオペラ歌手による無料公演があるようで、ぜひ一緒に行こうと誘っていただいた。もちろん行く。

お金が無い留学生活で悪いことばかりじゃないと思うのは、ちょっと遠出をしたり、食べ歩きしたりができなくても、日々、何か面白いものはないのかと常に敏感にアンテナを張り巡らし、何か見つけたら食わず嫌いせずにとりあえず飛び込んでみようと思えることだ。
だから、自分の興味のあるものだけではなく、自分の知らなかった世界にどんどん出会うことができる。色々な人にも。
なんて素敵なことだろう。

第一部
スタンディングオベーション

オーケストラとともに贈る、モーツァルトやロッシーニなどオペラの名曲の数々。
オペラ歌手は、有名なトゥールーズの市の管弦楽団でも活躍しているプロの方達だった。

ソプラノ    Clémence Garcia さん
メゾ・ソプラノ Claire Bouyssouさん
テノール    Pierre-Emmanuelさん
バス      Marcel Martyさん


第一部が終わり、第二部の最後を飾るのは、おなじみのヴェルディの椿姫の一曲、乾杯の歌で、華やかな音楽と、信じられないほどの伸びやかな歌声に鳥肌がたった。
自分が撮った動画を載せられないのが残念だが、臨場感が伝われば…
ちなみに誰もが聞いたことがあるだろうこの一曲である。

2時間の間ずっと引き込まれ、人間で出せるのかと思うほどの、圧巻の声量だった。
生で、こんなに近くでオペラ歌手の歌声を聞いたのは初めてかもしれない。本当にこれが無料でいいのかと疑うほど、耳が幸せでいっぱいになり、とても良い経験をさせて頂けた。
こうした文化体験を無料で享受できる機会が多いのも、フランスの魅力の一つだ。


紹介してくれるフランソワさん

フランソワさんはオペラが大好きなようで、公演が終わると興奮気味に、サインを求めに指揮者の元へ駆け寄った。
そして、私はいきなり前に押し出され、「この子私の友達なんだけど、日本から来たの!」と唐突に紹介される。
指揮者の方は勢いに困惑しながらも、優しくサインしてくれた。
しかし、先ほども、隣の席に座っていた見知らぬマダムに「この子は私の日本の友達だ」と言っていたし、席の案内係のお兄さんにも、「今日は日本の友達と来たの」と急に会話が始まったし、私は今日一体何回紹介されるのだろう。

帰り際、駐車場の向こうに見つけたオペラ歌手の方にサインを求めに草むらをかき分けて行く時も、やっぱり「日本の友達が」と紹介してくださった。紹介されたからにはこちらも、ああ初めまして、とぺこりとすることとなり、この日は人見知りの私も、何回も挨拶させて頂く機会に恵まれた。


そんなフランソワさん、この後このまま夜ご飯を食べに行こうと提案してくれる。
フランスでは招待した方がご飯代を持つ、という習慣もあることはあるが、そんなことに甘える訳にはいかない。
でも、フランソワさんはそんな私も見透かしているようで、もう遠慮せずに食べたいものを頼みなさいと言ってくれた。普段は学生なんだからと。

一緒に来たのはお手頃なイタリアンレストラン。
フランスでイタリアンを食べるのは、初めてかもしれない。

やっぱりここでも、注文を取りにきたウエイターさんに、私は紹介された。私も慣れた感じで、ぺこりとする。

素敵な一皿。ニョッキの上に野菜とチーズ添え


私はニョッキを選んだが、あまりのおいしさに脳がびっくりしていた。
自分が今まで人生で食べてきたパスタとは、格が違ったのだ。これが本場の味なのだと、さすがイタリアが隣だと違うんだなぁと思った。

レストランに入ったのなんて、すごくすごく久しぶり。
やっぱりこんな楽しみ方もいいよな、とつい思ってしまう。素敵な時間を過ごすためにお金を使うということは、楽しいに決まっている。
本当にありがたいことである。
でもそれができなくても、ただの毎日だと思わず、日々の中に喜びを見つけるという姿勢を忘れずにいたい。
そうして毎日を大切にしていたら、こういった思わぬサプライズがあるかもしれないから。


お金をかけない、今なりの時間

屋台の焼き立てのクレープの匂いを嗅ぎながら、美味しいんだろうなと味を想像し、パン屋さんの前を通り過ぎる時、今日はどんな品揃えだろうと外から、ただショーケースを眺める。
それもまた、素敵な街の見方である。きっと、もう少し大人になったら、それはできない。
この時間はこの時間で大切に。

こうして無料のアクティビティなどを楽しめるのも、そうした社会を支えてくれている人がいるからだ。
私も今はまだ学生で支えられないと何もできないけど、仕事を得られるようになり、もっと大人になった時、与えられる人に、与えられる社会を造る一員になれたらなと思うのだ。



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休日のすごし方

最後までご覧頂きありがとうございます💓 食べることが大好きで、私のエネルギーの源です!が、今は収入源がなく食費が払えないので、サポートして頂けると私の来月の生活に直結してかなり助かります🙇‍♀️仏語と音楽で仕事をすることが目標。一緒に未来を応援いただけたらとても嬉しいです!