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飼い犬でいいんだよ

統合失調症を患っている。
精神病院に入退院を繰り返すようになってからは、18年、そしてほんとうに幻聴、妄想が現れるようになってからは、7年だ。
わたしの症状は、悪化している。

精神病院を、ずっと憎んでいる。
一度病名がつき、患者にされると、治療者にとって、ほんとうなのかどうなのかわからない話は、たいてい妄想にされてしまう。
家族との折り合いが悪い場合でも、病院は家族の話だけを信じる。
わたしの言葉は届かない。
そのことに、ずっと傷ついてきた。
死にたい、と思い、大量服薬、ニコチンドリンクを繰り返した。
医療、福祉に頭を下げて、お情けで生かされるなんてイヤだ!と思い、身体を売って生きていくことにチャレンジしては、その度挫折した。
自分がみじめだった。
そんな暮らしの中で、ほんとうに、幻聴、妄想が現れた。

幻聴、妄想は、過去3回現れた。
そのたび問題を起こし1年以上の長期入院になった。
3年前担当してくれた看護師のYさんが、わたしの実家を見て、環境に問題があるというのはほんとうのことだった、とわかってくれた。
Yさんとの信頼関係の中で、わたしが過去に性犯罪の被害にあったということも、警察に確認を取った。
そして、そのことが妄想だと信じていた精神病院からの誤解も解けた。
わたしは家族と距離を取るために、成年後見人制度のお世話になり、グループホームに入居するということになり、退院は決まった。

今、わたしの周りの人たちは、とても親切だ。
作業所で働き、グループホームで暮らす、その生活は、とても平和で幸せだ。
それでも今でもフラッシュバックが起こる。
家族との間で起こったこと、性犯罪にあったときのこと、そればかりではない。
今まで精神病院に受けてきた扱いのこと、いちばんわたしが苦しんでいるフラッシュバックは、それだ。

それでもわたしは治療を受けなければ、生きていけない。
一度薬をやめたときの再発、そのときのわたしの姿、そのときの苦しみが忘れられない。
わたしは薬で幻聴、妄想を抑えているだけの狂人だ。
月1で注射を打ち、毎日服薬しなければ、人として生きていくことができない。

飼い犬のような生活だ、飼い犬のような人生だ、と思う。
でも、今は、それでいい、と思っている。
誰かに大きな迷惑をかけてはいけない。
誰かをひどく傷つけてはいけない。
注射を打ち、薬を飲めば、おとなしく扱いやすいわたしでいられる。

飼い犬でいいよ。
飼い犬でいいんだよ。
わたしという飼い犬をながめて、癒やされる人もいるかも知れない。
わたしという飼い犬がしっぽを振ることに、喜んでくれる人もいるかも知れない。
わたしはそれなりに、平和に幸せに生きている。
今はそれでいい。


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