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イワシの頭も…

とあるカルト宗教団体が問題となっている昨今、先日カウンセリングに来られた方はこの団体ではありませんが、やはり問題のある団体に今も在籍されている方でした。
(以下の情報はご本人から公開の承諾を得ています)

20代の女性、ご両親共にこの団体の信者でありご本人も物心つく頃からその教えに接し、その団体の中で過ごされて来ました。

現在も在籍されているのですが一連の報道を観て、自分が抱えている「生きづらさ」の元にはこの宗教があるのではないかと思い、また自分も「宗教2世」だと感じて、カウンセリングに来られました。

子供の頃から一緒に遊ぶ相手は親から許可を得た、同じ宗教を信じる子供たちだけ、TVもあまり観ることを許されず学生時代は学校で出来た友人たちとの会話についていけず、結果的に孤立してしまい「浮いた存在」になっていたそうです。

大学進学の際も家から通える学校を強制的に選ばされ、卒業後の進路も自分では決められず、親に言われるがまま今のお仕事に就かれたそうです。

食べるモノや着るモノに困ったことは無く、高校、大学の費用などは親が出してくれたこともあり、育った家は決して貧しいとは思わなかったそうですが、自分が欲しいモノ(ゲームとか)は「俗世間のモノは害がある」という理由で買ってもらえず、身に付けるモノのほとんどは親が選んだものを身に付け、マンガや雑誌なども「百害あって一利なし」といった感じで縁が無かった。

中学、高校、大学と進むに連れて自分と世間の間にある溝のようなものを感じ、ある程度自分でも情報を得られるようになってきて「何かおかしい」とは感じるようになったけれど、これまでに植え付けられてきた価値観に反することは悪である、という想いの方が強くなかなかそこから抜け出ることが出来なくて…というお話でした。

カウンセリングの中ではまだ、自分がそこから抜けたいのか、抜けて良いのか、抜けることでこれからの自分がより悪い方向に進んでしまわないか、といった不安を口にされていました。
それだけその団体の教義が身に沁みついてしまっていると、なかなかそれに反する行動を取ることは出来ません。

また、そこから抜け出るということは親との関係が変わることを意味し最悪縁を切る、というところまで行くのではないか、けどそれはこれまで育てて来てくれた恩を仇で返す様なモノで…という罪悪感もあって。

そもそもこれまで「自分の自由意思」で行動をしたことが無いため、抜けたとしてそれから自分がどうしたいのか、何をすべきなのかも分からないという不安も大きいモノです。

ひとまず初めてのカウンセリングだったので上記のようなお話を聴いて、依存傾向を含めてこのお客様の状態を客観的にお伝えし、これから「誰の人生を生きたいのか」についてこの機会に考えて頂けるようお話しました。

マインドコントロールを解いて脱会を促すような機関であれば、このお客様も強制的に脱会に向けた行動をするよう言われるんだと思いますが、カウンセリングではそのお客様の意思を尊重し、これからどうしたいかという意志を一緒に見つけていくという姿勢であるため、何かを強制したり強要することは出来ません。

このお客様がこれまで自分が受けてきた教えと現実のギャップをどう捉え、今の自分の生きづらさとどう向き合い、これからの自分は何を信じていくべきなのか、その辺りを一緒に考えていきましょう、とカウンセリングの最後にお伝えしたのですが、果たして2回目はあるでしょうか…

信仰心というのは大切なものだし、何を信じるのも個人の自由ではあるのですが、人生の苦しみから解放されるため、死後の幸せのために献金しなさいとか、信者を勧誘してきなさいというのは、やっぱり違うと思います。

そもそも神様仏様というのは見返りを求める存在ではなく、どんな衆生をも助け導いてくれるものだと思っているので。

ただその教えを純粋に信じている人にとってはその教えが「真実」であるため、周りが何を言っても通じないという歯がゆさは感じます。

「真実は一つじゃない、人の数だけある」
(ドラマ「ミステリと言う勿れ」 久能 整のセリフより)


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