カルチャーショックリハビリ日記 最終回(未発表)
旅行はする前が一番楽しい、と言う。計画中はあれこれと楽しいことを思い浮かべているが、実際は計画どおりにうまくいかなかったりして「こんなはずじゃなかったのに」とがっかりすることはよくあるものだ。もちろん計画は大切なことで、旅を円滑に、目的を果たすべく進めるためにはなくてはならないものである。
逆に、予想もしていなかったことが起こることだってある。偶然の出会いが素晴らしい旅にしてくれることだってあるし、最悪のアクシデントとして一生を左右することだってありうるのだ。
私はイギリスで4年の旅をしてきたと思っている。行くまでにはいろんな不安があったが、それを押しのけるだけのパンパンに膨らんだ希望があった。ある意味、希望という名の妄想に過ぎなかったのかもしれない。イギリスに行きさえすれば、自分は別の自分に生まれ変われると思っていたようだ。
計画どおり英語を学び、やってみたかったことをできる限りやってみた。
すべてが思うほど面白かったわけでもなかったが、やってよかった!と思えることにも出会えた。
住んでいた部屋を追い出されたり、日の当たらない物置みたいなところで暮らさねばならなかったときは毎日泣き暮らした。
ホームオフィスや学校にひどい目にあって、「この国の人間は本当に冷酷だ」と、人間不信に陥ったこともある。
それでも、十数年の憧れだったイギリスで暮らしているという事実だけで私は十分幸せだったし、そこでしか体験できなかったであろう、夢のような体験もたくさんすることができた。
それに、たくさんの人たちとの縁ができた。いろんな国から来たいろんな人に出会い、いろんなことを学んだ。でも、在英の日本人から一番パワーをもらった気がする。
ただ、普通の旅行と違うのは、犠牲にしなければならなかったもの - 安定した生活と、家庭 - があったということと、その後の身の振り方を考えなければならないこと。イギリスに行く前に想像していた留学後の自分に、実際の今の自分が追いついていないことに気づいたときは非常に苦しかった。
でも、留学の本当の成果が出るのは、日本に帰ってきてからなのだ。
うまく行かなくて、つらくて、留学時代の思い出に浸る日々もあるだろう。大抵の留学帰りはみんなこう言う気持ちを経験するはずだ。
そこでめげることなくがんばってほしい。
本当に大切なのは、過去ではなくて、未来。
私たちは、明日のために生きている。
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