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虎の子日記  島原半島ピーナツ論争

一年ほど前、ふと思い立って島原鉄道、松浦鉄道に乗りまくるの旅にでた。
島原半島は、長崎県の雲仙岳のふもとに位置する半島(といっても陸続き)で、ここに島原鉄道というローカルな私鉄がある。
一両編成の黄色い車両がなんともいとおしい。
私はローカル鉄道が大好物である。無人駅なんかあったらもう一日中座っていたい。車両にも詳しくないし、〇系▽▽とかは全く興味がない。が、
ローカル線ならではの駅とその風景がたまらなく好きなのである。

今回の旅はその島原鉄道にある二つの無人駅に降り立つことと、翌日からは佐世保方面に移動し、長崎県と佐賀伊万里方面とを繋ぐ松浦鉄道に乗るのが目的だ。現地までは車で移動し、宿に車を停めてビールを持って電車に乗り込む。ガタゴトしながら車窓の風景を眺める。これ以上ない至福の休日だ。

さて、泊る場所はいつも目的地を決めてから周辺のビジネスホテルなどをじゃ〇んでググる。ホテルの食事や温泉付きなどに興味がない私は、とにかく幽霊が出ない程度で安いほうがいい。泊った宿周辺の地元飯を食べに出るのも一つの楽しみなのだ。

島原鉄道 島原船津駅

その日は終点のひとつ前「島原船津駅」のすぐそばにあるビジネスホテルを予約した。駅まで一分というロケーションの良さと、朝食付きで全国旅行支援もあって3000円ほど。車を置かせてもらい、早速駅へと歩く。
週末なら乗り放題チケットがあるのだがあいにく平日。900円ほど払って「古部」という海の傍の無人駅へ。
本当に駅舎がない!もちろん人もいない!コンクリートの四角い駅のホームの真下はもう海!晴天もあってテンション爆上がりのところ、一人の女性に声をかけられた。今から「大三東駅」へ行くので一緒に行こうというのだ。
着いたばかりであったが、同じカメラを持った一人旅同士、いろんな話をしながら本日の目的の二つ目の駅に向かった。

かの有名な?大三東駅


こちらはキリンレモンのCMに使われたらしく、無人駅なのに大賑わい。車で駅まで来てわざわざ写真を撮って帰る人もいるくらい、栄えている。無人駅好きの私としては一人にしておいて欲しいのだが、そうもいきそうにない。
夕方になりやっと人気がなくなったところ、駅のそばの酒屋でビールを買って、「夕焼けは何時くらいですかねえ?」とたずねたら、「この駅は夕日は見えんよ」と言われ、えええ~っっ私の夕焼けビール計画が台無しやん!
このまま引き下がれるか、と次に来た電車で「古部」まで戻ることに。
電車の中から沈む夕日を見ながら、まってくれえ~とトイレに行きたい人のようにそわそわしていた。

間に合った古部の夕焼け

無事に夕焼け写真をとり、ビールを飲み、無人駅で45分ほど過ごして宿のある駅にもどる。
さて次はお楽しみの地元飯だ♪
・・・事前にチェックしておいた店はコロナで閉店。終点より一つ前というだけあって、夜の賑やかさとは程遠く、17時以降は出歩いてはいけない条例でも出ているのか、人もいない。
遠くにファミレスの明かりが見える。ここまできてファミレスとはなんとも寂しいが、仕方ない。明かりに向かってあるいていると「焼き鳥いむら」と暖簾が見える。いちかばちかの賭けくらい勇気がいる店構えだったが、ファミレスで過ごすよりましだっと飛び込む。
地元の消防団の集まりのようなゴツイ男性グループと店主の友達お一人様。
女性一人、しかも観光客という珍しさに10年に一度の大当たりかのように歓迎されたのはいうまでもない。

店で出てきた突き出しの茹でピーナツ。私の概念にはピーナツといえば酒のつまみの二番バッター。ごりごり噛んでビールで流し込むのが定番であるが、長崎方面では殻ごと茹でるらしいのだ。20代の時に長崎県大村市に移り住んで、ほかほかのふにゃっと柔らかいピーナツを初めて見たときは、栗じゃあるまいし茹でる?ピーナツを?とカルチャーショックを受けたものだった。
そんな話をして「茹でピーって長崎名物なんでしょう?」と言ったら、「長崎じゃなか。始まりは島原たい。おったー(俺たち)の名物たい!」
かくして、茹でピーを始めたのは島原民であることの主張を譲らないダンディ達と夜中まで飲み明かしたのであった。

ボーイズよ、地元愛とはこういうものだ。


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