映画『グリーンブック』を見た。
(ネタバレあり)
今からおよそ60年ほど前の物語。
実在した人達の物語。
ニューヨークのナイトクラブで用心棒だった腕っぷしが強く、言葉巧みに人を操れるトニーが、家族を養うために、ピアニストのドクター・シャーリーのアメリカ南部へのツアーの同行者として雇われる。
南部での黒人用旅行ガイドが、映画のタイトルとなる
「グリーンブック」という名前の冊子。
黒人が泊まることができるホテルなどが書いてある。
その「グリーン・ブック」を見ながらトニーが運転する車に、ドクター・シャーリーが乗っていく。
その当時、南部ではまだ黒人への根強い差別があった。
ドクター・シャーリーは、演奏会ではもてはやされるのに
トイレは白人とは共用できず、外の小屋のトイレを使うように言われる。
そのため、まだ演奏があるが、片道30分かけてモーテルまでトイレのために戻る。
町の洋服屋では、シャーリーが気になったスーツの購入以外の試着を断られる。
憤りを見せる二人。
黒人は夜間外出禁止の州もあり、侮辱されたトニーが警官を殴り、二人とも拘置される。
その際に、シャーリーが警官に訴えてやっと権利を行使し、弁護士に電話をする。
その弁護士がロバート・ケネディ大統領に伝え、大統領からの警察への電話で釈放される。
シャーリーはホワイトハウスに数回呼ばれて演奏するほど、芸術性の高いピアニストだった。
その拘留所にいる時に、シャーリーがトニーに「暴力は敗北だ」と言う。
暴力で解決できることはないということ。
心に響く言葉。
トニーは、生活が「黒い」つまり苦しく悪いこともしなければ生きていけないということでは、自分はシャーリーよりも「黒い」と言う。
それに対して
シャーリーは、孤独であり、白人社会の中でピアノ演奏をする以外においては蔑視されている現実があると言う。
そして自分は、白人でも黒人でも男でもないとも言う。
これまでのツアーに同行することで多くのトラブルを経験し、なんとかやり過ごしてきた二人の間には、お互いに本音が言えるほど信頼関係ができていたのだろう
ここで、多くの社会問題が提起されている。
ドクター・シャーリーは、黒人というだけで差別されるという現実を見るために南部へのツアーを決意したのだろうか。
映画の中では、黒人差別が未だに残る現実に対して
「才能だけではないんだ。勇気が人の心を変える」と演奏の仲間のドイツ人が話していた。
では、黒人差別に対して毅然とした勇気のある黒人の行動を示すために、ツア―を計画し実施したということだ。
最終の演奏のためのホテルの控室は、黒人であるシャーリーに対して物置部屋が用意された。
さらに、ドクターが食事をしようとレストランに入る時に断られる。
理由は、そういうルールとなっているから。
こういうルールですからということで思考停止となっている人との対応には絶望を感じる。
交渉の余地がない。
自分の頭で考えることを放棄しているのだから、交渉できない。
私も多く経験してきた絶望。
そして
ドクター・シャーリーは、食べることができないのだから演奏はできないと言った。
困ったホテルの人とのやり取りの際に、トニーが殴りそうになるのをドクター・シャーリーが止める。
そしてホテルを出てゆく。
そして黒人がいるレストランバーに行き、得意のクラシックを弾き、拍手をもらう。
その後バンドとの自由な演奏を楽しむ。
危ない世界を生きてきたトニーはお金を狙って潜んでいた人を、拳銃の音で追い払う。
店では札束を見せてはいけないと教える。
そしてクリスマスにの夜に家に帰ることを願っていたトニーだったけれども
悪天候の雪となり、またまた警察官に車を止められる。
「またか」と思っていたが
車が傾きタイヤがおかしいという注意だった。
北部に来ると警官の黒人に対する差別がなくなっている。
礼儀正しく接してくれた警官の態度に希望を感じた。
トニーの疲労がひどくなり休まないと運転できない状態となった時
運転席で運転しているドクターが映る。
どうにかトニーがクリスマスに帰るという約束を果たそうとしてくれたのだ。
この旅で、ドクターとトニーは多くの困難に中でお互いを思いやることができる温かな関係となった。
そして、トニーの家まで送った後、ドクは使用人にも優しさを見せる。
トニーが言った
「自分から行動すること」
「まずは自分のために何ができるのかを考えること」の通りに
ドクはトニーの家に行き、トニーの家族たちに温かく迎えてもらう。
素敵な手紙を考えたのは、トニーではなくドクであったことも分かっていてトニーの妻からハグされ感謝される。
その後も二人はずっと仲の良い友達で、同じような時期にその生を終えたという。
・・・
トニーの契約を守る律儀なところや人情深く懐が深いところが、にくいほど魅力的だった。
ドクはピアノに人生を捧げてきたので、世間の常識知らずでもあり、プライドも高い。
その二人が一緒に過ごしていくうちに、お互い影響し合って人間的に成長していくところに心打たれた。
友情というものが、本物の最高の愛のカタチだと思っている。
感動して少し泣いてしまいました。
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