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曽野綾子 『永遠の前の一瞬』 病気と健康

この世には、

たまたま健康な人と

いま病んでいる人とがいてこそ

まっとうなのだということが分かる。

この世に病気の人がいるからこそ

その病気の治療方法が開発されていくようになる。

また社会保障制度が構築されていく。

そして

お互いに支え合うという気持ちを

持つことができるようにもなる。


そのように社会が成熟していくことで

次に

自分が病気になった時に

その恩恵を受け取ることができるようになるのだ。

功利的に考えても

社会が成熟することの重要性が分かる。


しかし本当は

人間には

お互いに支え合うという温かな感情が

根底にあるべきだろうと思う。

病気と健康とは、

こみで一つの人生なのであり、

その二つは決して対立せず

むしろ

全体としての完成のために

支え合うべきことが納得される。



そして

すべての人にとって、

生と死は

なだらかな一本の道として、

坦々と続いている姿が見えるのである。

病気が完治できるなら

それに越したことはない。


しかし

なかなかそうならないようであれば

病気と共に生きていくことが必要となる。


その時には

病気と健康は対立するものではなく

むしろ

社会や個人の人格の完成のために

支え合い共存するものであるということを

どうにか

納得できるようになるというのだ。


そうすることで

自分の人生の生から死に続く

様々な困難や

時折の喜びや

病気を含む

なだらかな一本道が

見えてくるというのだ。


すべて組み込まれた人生の完成へと向いた

一本道。


怯えることなく

怯むことなく

その道の先を見据えて

坦々と進んでいくのだ。


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