読書録#4

 今回はナチスドイツ時代を舞台にした小説2冊について取り上げます。
 極力ネタバレしないように努力しますが、多少内容に触れる箇所がありますのでご了承下さい。
 
 ①佐藤亜紀著『スウィングしなけりゃ意味がない』(以下①)


 

 ②深緑野分著『ベルリンは晴れているか』(以下②)


 
 ①は第二次世界大戦中のドイツが舞台。当時敵性音楽とされたスウィングに魅了された少年の物語。モチーフになっているスウィング・ボーイズは実在したそうな。
 一方②は第二次世界大戦後、1945年8月のドイツを現在として話は進みます。両親をナチスドイツに殺された少女・アウグステが主人公です。主な舞台は戦後ですが、幕間としてアウグステの過去、つまりナチスドイツが現れる辺りから戦時中にかけても描かれているので、実質ナチスドイツ時代がテーマと言っていいでしょう。

 両者とも読後は(異論もあるかと思うが)爽やかな印象も受けるが、それぞれの主人公が辿った道は大分違います。
 ①の主人公・マックスは裕福な家庭の生まれで、「スウィングが好き」という事を武器に過酷な時代を生き抜いていく。両親初め周りの人が亡くなる描写もありますが、どうにか生き抜こうとする様は勇敢にも見えます。
 一方②のアウグステも前述したように両親をナチスに殺される他、大切な人を次々失います。が、それだけにとどまらず、自身も大きな傷を心身に背負い、戦後の焼け野原の中をひとりぼっちで生きています。作品のタッチとしても、①が軽快な印象もなくはないのに比べると、②の方が重く、暗い。それは決してアウグステが女性である事と無関係ではないでしょう。

 また、①・②ともに舞台となっている時代が時代だけに人種差別なども容赦なく描かれます。
 特に②ではユダヤ人差別だけではなく、ロマや同性愛者への差別もしっかりと書かれている他、障害者である姉をナチスに渡す少年や恋情から変節する男性など、人間の暗部が徹底的に描かれています。その筆致の凄まじさは実際に作品を読んで体感して頂きたいです。

 私はドイツに行った事はないし、ましてや戦前・戦後のドイツは(当たり前ですが)リアルタイムで経験してはいません。けれど、①・②ともに読んでいると目の前で登場人物が生き生きと動き、その当時の空気や匂いが伝わってくるような、臨場感のある描写がとても印象的です。
 ②の文庫版の解説にも書いてありますが、「日本人の目」が一切伝わってこないというところがこの2冊の凄さだと思います。
 
    ナチスドイツはやはり恐ろしい。ですが、今回取り上げた2冊を読み、二度と繰り返してはいけない時代だからこそ、この時代から学ぶ事は多いと感じました。
 未だに戦争は続いていますし、今も充分に一人一人が生きやすい時代になったとはお世辞にも言えない。しかし過去にはこのような時代を逞しく生き抜いた人々もいる訳で、苦しい時代を生きるためのヒントもこの2冊にはあるように思います。

 最後まで読んで頂き、ありがとうございました。

 望月 香夜
 

 
 

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