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埼玉西武ライオンズ2022年の振り返りと2023年への展望【投手編】

ヘッダー画像は埼玉西武ライオンズ公式オフィシャルサイトより拝借しました

あけましておめでとうございます🎍
今年もよろしくお願いいたします🐇



2022年の振り返り


2022年の振り返りは、すなわち辻前監督の振り返りでもあるのですが、それは前に書いたので、ここでは数字面での振り返りを

リーグ二連覇から一転、チームの総得失点差が大きくマイナスとなり、二年で最下位まで落ちてしまったが、昨シーズンはこれまでとは打って変わり、低調な打撃陣を投手陣がカバーする真逆のチーム構成となり、昨年比+84でプラスに転化することが出来ました

2019年:総得点 756/総失点 695=得失点差 +61
2020年:総得点 479/総失点 543=得失点差 -64
2021年:総得点 521/総失点 589=得失点差 -68
2022年:総得点 464/総失点 448=得失点差 +16

8月まで優勝争いに食い込めた最大の要因は投手陣の頑張り。これまで四年連続でリーグ最下位だったチーム防御率は2.75。西武球団となってからは最も低い(良い)防御率を記録

2018年:4.24
2019年:4.35
2020年:4.28
2021年:3.94
2022年:2.75

昨今、セイバーメトリクスの考え方が普及し、旧来の打率や防御率では選手本来の評価が不十分だとして、価値が下がってきた感もありますが、公式記録としては打率や本塁打であり、勝利数や防御率が評価の対象なので、その中の防御率が1位になって嬉しくない訳はない

もちろん投手の実力のみを図る【xFIP ※味方の守備力が関与しない(与四球,奪三振,被本塁打)から失点率を測る指標《FIP》から、外野フライに対する被本塁打の割合は"揺らぎ"が発生するため、補正した指標】ではリーグ最下位となっており、楽観視は出来ない

「パ・リーグ チーム防御率とチームxFIP」
※丸の数字はリーグ内順位

ライオンズ:2.75 ①/3.69 ⑥
バファローズ:2.84 ②/3.15 ①
ホークス:3.07 ③/3.40 ②
マリーンズ:3.39 ④/3.51 ③
ファイターズ:3.46 ⑤/3.63 ⑤
イーグルス:3.47 ⑥/3.57 ④

ライオンズの投手陣は奪三振率が低く、与四球率が高いので、"過程"と"結果"にズレが生じる

奪三振率(2019年から):
15.6%(12位)→16.7%(12位)→17.4%(12位)→18.7%(10位)

与四球率(2019年から):
9.1%(9位)→10.4%(12位)→11.0%(12位)→8.3%(11位)

ストライクゾーンに投げろというのは簡単だけど、闇雲に真ん中へ投げれば打たれる。なのである程度、ゾーンギリギリに投げないとダメだし、それ以上にストライクからボールになる球を振らせることが出来るかがカギとなってくるはず

ボールゾーンスイング率(2019年から):
25.9%(12位)→26.0%(12位)→26.7%(12位)→28.3%(12位)

ライオンズも右肩上がりで上昇しているが、プロ野球全体がベースアップしているので中々差を詰められない。この数値が平均並みになれば、奪三振率および与四球率も改善されるはずなのだが


先発投手


2022年ライオンズ先発投手成績


先発陣に目を移すと、髙橋光成が三年連続で規定投球回数をクリアし、ここ二年は170in以上、QS率も60.0%→65.4%→80.8%と内容も伴ってきた。あとは奪三振率を上げ、より支配的な投球を見せることでエースからスーパーエースへの変貌を遂げてもらいたいところ

二枚看板と目された今井達也は怪我で大きく後れ、夏場にも一か月近い休養があり、9試合に登板に終わったが、その穴を與座海人が見事に埋め、松本航やB.スミスが離脱した際には平井克典が穴を埋めるなど数字以上の仕事ぶり。D.エンスもイニング消化に課題はあるものの、120in投げてくれたので及第点といえる

隅田知一郎はデビュー戦で勝利したものの、その後は全く勝てず10連敗でシーズン終了。ただ内容そのものが悪いわけではなく、パ・リーグで50in以上投げた先発投手38人中、【DER ※本塁打を除く、グラウンド上に飛んだ打球をどれだけアウトに出来たか?を示す指標】が.627。同じく援護率が1.91と共に最下位。ライオンズはチームUZRがホークスに次いで2位と守備が劣っているチームではないので、援護も含め、運に恵まれなかったのが実情

不運があったとはいえ、WHIPが1.50で36位と走者を出し過ぎているのも事実なので、改善したいところ


救援投手


2022年ライオンズ救援投手成績


救援陣の被本塁打25本はリーグ1位。ともに60試合以上投げた平良海馬(2本)と水上由伸(1本)と抑え込んだのは大きい。平良は8月に怪我で離脱、水上も8月以降は疲労で成績を落としたが、最優秀中継ぎ投手に輝くなど、7回と8回は万全だった

増田達至は開幕から6月までの28試合でわずか1失点。しかし7月、コロナに罹り、8月に復帰するもその後、6本塁打を浴びるなど成績が急降下。これだけならコンディションが戻るであろう今シーズンは大丈夫と言いたいが、2019年をピークに空振り率、奪三振率が下降しており、楽観視は出来ない

空振り率(2019年から):12.8%→12.4%→8.9%→8.8%
奪三振率(2019年から):27.2%→21.4%→17.6%→17.0%


與座海人と並び、予想を大きく裏切る活躍を見せてくれたのが本田圭佑。先発だとペース配分もあり、ストレートの平均球速が140キロ前後だったが、143.4キロまで上がったことで優位に立つことが出来たのではないか

森脇亮介はプロ入りから3年間、常に10%以上あった与四球率が5.4%に減らし、パ・リーグで30in以上投げた救援投手37人中、3位の好成績。宮川哲も与四球率が一けた台に減らしており、後は信頼度を上げて序列を高めたいところ

貴重な左の中継ぎでもある佐々木健と公文克彦。佐々木は左打者にも臆することなく内角へ2シームを投げ込み抑えるが、疲れがたまったのか8月には左肩を痛め戦線離脱。入れ替わるように一軍に上がってきた公文は、実は苦手と言われてきた左打者相手にも抑えるなど、18試合すべての試合で無失点に抑える。2人とも一年間投げられるコンディション作りが求められる


2023年の展望



「ライオンズポジション別分布図」


「ライオンズ世代別分布図」



ライオンズ一軍投手予想デプスチャート


ライオンズ二軍予想デプスチャート


先発投手


投手陣における最大の関心事は平良の先発転向。オフの契約更改で先発転向を直訴。セットアッパーおよびクローザーで結果を出し続けていて、増田達至が35歳を迎え、後釜として残しておきたいチーム事情もあり、渡辺久信GMも誤魔化してきたが、本人の強い意志もあって誤魔化しきれなくなり容認

自身のYouTubeチャンネルなどで言ってるが、チームの勝利にもっと貢献したいとの思いで、後ろで投げている限り、1週間に3回、勝ち試合に1in投げても合計3in。先発なら1週間に一度、一勝だけであっても、6~7in投げればイニング換算だと貢献度は高くなる



上記サイトで平良が先発転向した際の予想があるが、私も世の中に絶対はないものの、限りなく成功すると太鼓判を押したい。チーム事情さえクリアできていれば、2年前にでも先発転向させ、ライオンズ版"山本由伸"にさせたかったので

あとは先発におけるルーティン、一週間をどう過ごすかから、登板時は100球から120球投げるのでそのペース配分、1イニングごとにベンチに戻り、またマウンドへ向かうといったことへの対応を早く覚えてくれれば、大きな戦力となる

とは言え、私にとって先発投手の評価は「イニング数を投げてこそ」なので、あくまでエースは髙橋光成

オフの契約更改では将来的なメジャー移籍を口にしていたが、投手としてもう一段、レベルを上げるためには奪三振率の向上が求められる



ここで紹介されているようにストレートで空振りが奪えない。ボールの質に課題があるのだろうけど、数年前からネクストベース社と提携しており、そろそろこの課題に対して成果が見たいところ

今井は9試合の登板ながら、そのうち8試合でQSをクリアするなど、体調さえ整えば頼もしい。課題の与四球率は少しづつとはいえ、良くなってきているし、何より奪三振率が大きく伸ばしているので、パ・リーグで50in以上投げた先発投手38人中、被打率が佐々木朗希に次ぐ2位の.182という結果にもあるように、多少ランナーを出そうが、力ずくで抑えるスタイルを伸ばしていくしかない

奪三振率(2020年から):14.2%→20.1%→24.8%
与四球率(2020年から):16.8%→14.5%→13.8%


先発ローテーションに関して、メジャーは5人の先発投手を中4日で回していくスタイルに対し、日本は近年、規定投球回数をクリアするのが1~2人で、残りは80~120in前後を投げてくれる投手を複数人用意する真逆のスタイルとなっている

「パ・リーグ先発投手総イニング、延べ人数、イニング割合」
※()内は規定投球回数クリア/規定投球回数未満~80in以上の人数
バファローズ:853.0in/14人(2人/3人)/82.1%
ホークス:807.1in/13人(1人/5人)/83.3%
ライオンズ:818.0in/11人(1人/3人)/74.7%
イーグルス:816.1in/13人(1人/4人)/76.7%
マリーンズ:817.0in/12人(1人/4人)/76.9%
ファイターズ:817.2in/19人(3人/1人)/62.3%

コロナ禍において、急遽投げられなくなる事態が増えたこと、投げ抹消を行うなど一人一人の負担を減らして怪我の予防と、高いパフォーマンスの維持を期待してのスタイルと考えられるが、髙橋と今井には25試合前後に投げ、規定投球回数のクリアを、二番手集団として期待されるのが平良、松本、エンス、與座、隅田となる

この7人で800~850inのうち、どれだけの割合を占められるか。正直なところ、80%を超えることが正解なのかは分からないが、どのチームであっても質のいい先発投手を何人でも揃えることは不可能なので、この7人で800inの80%、640in以上を占められたら悪くない結果が出るのではないか

あとライオンズはリーグで最少の11人で先発を乗り切ったが、お試し期間として様々な投手を起用したファイターズを除き、12~13人が相場となると、三番手集団に属する、渡邉勇太朗、佐藤隼輔、平井克典には谷間としての先発を期待しつつ、あわよくば二番手集団の投手を食うつもりで頑張ってもらいたいし、四番手集団として位置付けた赤上優人とルーキーの青山美夏人には二軍でアピールをして、先発の機会を勝ち取ることが当面の目標となる

そして12人目、13人目の先発が必要となった際には、豆田泰志、J.ヘレラの支配下登録が考えられる



二軍のまとめnoteにも書きましたが、豆田は二年目となる昨シーズン、公式戦で81.1in、練習試合で16in、合計97.1inと最も投げており、投球内容を含め、量と質、両面で大きな進歩を遂げる

ヘレラは元々は1Aクラスで投げていたこともあり、もっと荒い投手だと思いきや、縦に割れるスライダーを武器にまとまった投球を披露し続けました

二人ともストレートの平均球速が140キロをわずかに超える程度と、もう数キロ速くなってもらいたいですが、諸々の条件が揃ったときには、チャンスが巡ってくるかもしれません


救援投手


救援陣としては平良が抜けることで再編成する必要がある。クローザーに関しては増田となるが、振り返りのところでも触れたように、4月23日で35歳を迎えるにあたり、微妙な年齢となってきた

同い年で伸びのあるストレートが武器と共通点が多い石山泰稚は2021年に救援失敗が増えたタイミングでS.マクガフと入れ替わり、一学年下でシンカーが武器とタイプは違うが、益田直也も昨シーズンの後半に打たれることが多くなり、R.オスナと入れ替わっており、予断を許さないところ

増田としては自主トレを共に行う平野佳寿が37歳(早生まれ)を迎えたシーズンにバファローズへ復帰し、29セーブ→28セーブと結果を残しているので、参考にしたいところ

平良に代わり、セットアッパーとして期待されるのが水上と新外国人投手のJ.ティノコ。水上は三振を多く奪えるタイプではないが、パ・リーグで30in以上投げた救援投手37人中、ゴロアウトの比率が、J.ビドルに次ぐ2位、Hard%も、L.モイネロに次ぐ2位と長打を食らわない投球が光った





ティノコはシンカー(2シーム、シュートなど表現は異なるが意味は同じ)とスライダーがほぼ同じ割合で約84%を占めるパワーピッチャー。130キロ半ばのカーブも投げるが、チェンジアップはほとんど投げないので緩急が無いのは少し心配なところ

基本的にはこの3人で7~9回を任せたいところだが、もし増田の状態がイマイチなら臨機応変に入れ替えたい

この3人が一年間、投げ続ける保証はないので、6~7回、場合によっては8回を任せたいのが、二番手集団の森脇、宮川、本田、佐々木、公文、そして人的補償で加入した張奕

張奕は平均球速が148.2キロのストレート、投球の27.1%を占めるフォーク(スプリット)が武器。ライオンズでこれだけフォークを投げるのは森脇の32.6%ぐらいで、森脇の場合は落差の大きいチェンジアップの様なタイプのため、平均141.4キロも出る高速フォークを投げるのはチームにいない



課題はストレート。球質の為か空振りが奪えず、基本となるボールが打たれていては苦しいピッチングとなるので、この問題に対して改善が必要となる

三番手集団の2人、平井とボー・タカハシにはロングリリーフ候補。もしかするとここに青山美夏人を入れて、経験を積ませながら二番手集団に入ってもらう可能性も考えられる

四番手集団は経験を積ませることであり、俗にいう「一軍の空気を吸ってこい」といった起用になる。一応、大曲錬、井上広輝の名前を挙げたが、育成4年目となる出井敏博、トミー・ジョン手術からの復活を期す粟津凱士、齊藤大将も候補に入ってくるだろう


救援投手に関しては、日本一に輝いたバファローズの中嶋聡監督が負担を分散させる起用をしている。2021年は富山凌雅の51試合(リーグ内登板数11位)、2022年は平野佳寿の48試合(リーグ内登板数17位)がチーム最多となっており、連投の少なさも含め、徹底されている



2021年にチームで最も投げた富山が左ひじを痛め、トミー・ジョン手術を受けるなど、これだけ気を使っても長期の怪我を100%回避するのは難しいが、投手が良いパフォーマンスを維持する、それも一年だけではなく、二年、三年後も。と考えると、この取り組みは注目に値する。実際、リーグ二連覇を果たしている訳だし

果たして松井稼頭央新監督はこの起用法を参考にするか?

もしこの起用法を取り入れるのなら、勝ちパターンの投手をあえて使わないことも出てくるし、何より投手陣全体のレベルアップが必須となる

振り返りのところでも書いたように、昨シーズンはチーム防御率では1位だったが、xFIPでは最下位だった。今シーズンはセイバー面での評価も上げて、フェイクではなくリアルな評価を得られるよう、期待をしてみていきたい


では👋👋

※打撃編は後日…



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