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#2 まちがい

どうして、間違えたらいけないの。
ミスって、・・・そんないけないことなの。


小学4年生で合唱の伴奏という、
奇妙なカタチでピアノを始めた岩本。
伴奏を通して、音楽の楽しさ、魅力に取り憑かれました。
ピアノを通して、音楽を奏でること。
他人が自分の音に乗って、歌ってくれること。
たくさんの歌声に包まれること。
それは幸せで、充実した時間。そして経験でした。

5年生のとき、
卒業式での在校生合唱のオーディションが行われました。
1年前楽譜も読めない状態から、オーディションに受った。
努力さえすれば、どうにかできる。
そんな風に思っていた、と思います。
ピアノの先生に教えてもらいながら、
またたくさん練習しました。
そのおかげで、オーディションには無事合格しました。

でも、問題はそこからでした・・・
卒業式のリハーサルで、
当時の担任の先生が、私にこう言いました。
「今日は完璧に弾け。ミスするな。」

え・・・?
途端に、どうしたら良いかわからなくなりました。
ミスなく弾く?間違えずに、弾けばいいの?
担任の先生は、とても好きな先生でした。
勉強の教え方もわかりやすいし、真面目であまり怒られない私を叱ってくれる良い先生だと思っていました。
その先生が、言う事だからどうにかしたい、
そう思いました。

けど結局、卒業式本番はミスをしました。
担任の先生は、自分の生徒が選ばれて、
上手く弾けるのか心配されて、
そう声をかけたのだと思います。


もちろん、ミスや傷はない方が良い。
練習では、ミスをしないよう、
正しく練習する。努力をする。
それでも、ミスしたら・・・そのときは仕方ない。
それが今の、その時の、自分の実力。

ミスした瞬間って、もうドキドキが最高潮に達して、
頭が真っ白になる時もあるし、
死ぬんじゃないか、と思うときもあります。
でも、死にません。ミスしたって。
引きずって、モヤモヤしたまま
弾き続けるほうが、聴いている人には失礼。
ミスのない、完璧な音楽を聞きたいなら、
機械に演奏してもらいましょう。
弾くのは人間。機械じゃないんです。

本番の緊張のさなかでは、
思ってもいないようなことをやらかしたり、
思っていないような事態が起こったりする。
それが、人前で弾くということです。

ミスをしないことに執着して、全く動きのない固い演奏。
ミスは多少あるけど、表現豊かな音楽的でステキな演奏。
心を動かされるのは、どっちの演奏でしょう。
点数をつけられるコンクールやオーディションでは、
前者が評価されるかもしれない。
けど演奏会で、コンサートで、リサイタルで
そんな演奏を聞きたいですか?
私は、心に響く演奏が聴きたいです。

ピアニストフジ子・ヘミング氏は、
自伝でこんな言葉を書いています。
「間違えたっていいじゃない、機械じゃないんだから」

音楽だけの話ではありません。
仕事で、私生活で・・・
機械じゃないんだから、ミスしたっていいんです。
間違えたって、いいんです。
同じ間違いをまたしないように、
次、また気をつければいい。
そう思ったら、少し肩の力抜いて
生きられる気がする。

いわもと

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