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ホームランボールは流れ星みたいだった

寒波に備えて暖かい服を買おうと思った。この日、高くも安くも無いアパレル店は賑やかだった。
独りで買い物をしていると年下であろう店員が話しかけてきた。
「今日、人が多いですよね!クリスマスですもんねー。」
ああ。そうか。今日は12月25日、クリスマスだった。
確かに、店は客で溢れていたし、家族連れやカップルが多い。
40手前の女が独りで買い物をしていると、こんな風に言われるのか。やや自嘲気味に、店員に笑いかける。これもただの被害妄想かと思えると可笑しい。

クリスマスなんてただの一日だ。
心の底からそう思うが、クリスマスの前の日というなんの変哲もないただの一日に恋人と幸せな時間を過ごしたという甘い優越感があるのだとすると、それに縋りたい気持ちはあるのかもしれない。
クリスマスよりも、記念日よりも、誕生日よりも大切な瞬間があるのだとすると。
それは私だけの秘密の優越感になるのだろう。

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