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冬の、支度

それは確かに春だった。
私は春を見た。

大きな滑り台がある公園のツツジの木には、その蕾すら見当たらなかった。ダウンコートに身を包み、私たちは並んで歩いた。つまり、季節は冬だった。
今日は鍋が良いかな。醤油ベースか味噌ベースか。はたまた変わりだねでいくか。…そんなことを話題にしながら笑い合った。
揃わない歩幅を互いが感じながら、相手の速度に身を合わす。今日はトマト鍋に決まった。

並んで歩く、ということはつまり。隣に誰かが居てくれるということだ。私たちは二人の家へ帰る。トマト鍋の素と鶏肉、白菜にネギを買い物袋に提げて、まだダンボールだらけの部屋を目指す。

シメはリゾットだった。チーズが溶けて美味しかった。春が待ち遠しいね。彼はコタツ布団を被りながら言った。きっともうすぐ春だよ。私は暖かいその季節を知っている。

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