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右手小指を紙で切った
何かのサインのように
はっきりと現れる赤い血

痛みや色や中にある汚らしい物を目にしないと人は分からない生き物なんだろう

小さく深い切り傷は
アクセサリーの様に控えめに赤い

かつてこの指先を握ってくれた人がいた
そう思っていたけれど
どうやら全然違う別の人だった

気付いた頃にはその人はいなくて
屋上で狭い空を見上げて
言葉にならない言葉で
あの人の名を呟いた

幸福だと思える時に
あなたの指を握り返して
守っていたら

痛みが鈍くなる

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