桃沢もちこ

フリーライター。「日刊SPA!」「現代ビジネス」「文春オンライン」などで記事執筆。no…

桃沢もちこ

フリーライター。「日刊SPA!」「現代ビジネス」「文春オンライン」などで記事執筆。noteではエッセイや日記を書いています。猫のたまおとすこやかに東京で暮らし中。

マガジン

  • もちこの人生エッセイ

    くだらないことも素晴らしいことも全て含めて人生

最近の記事

逃げるも正しい

楽しいことだけやって生きていきたい。そういうことを言ってると甘ったれるなって怒られる。今まで散々大人に怒られてきたもんな。でもさ、楽しいことをやってても生きていけるよね。 振りかえればまあしんどいことはたくさんたくさんあったけど、それは人生を送っていくうえでの通過儀礼というか、これを経験しないと先に進めないよってものばかりで。これだけは嫌だって、心が死ぬくらい嫌なことからはすぐに逃げてきたとおもう。 学校も辞めて仕事も辞めて、貯金も無職のときにかなりつかってしまった。地元か

    • 地味な生活にみえても

      テレビを観ながら寝落ちしてしまい、目覚めたら家中の電気がついまままだった。午前3時。一緒に起きてきたたまおがにゃあにゃあ言いながら飯をせがむ。さすがに早すぎるのでもうすこし待ってくれと言い聞かせ(聞いてないけど)その間、SNSとエロ動画サイトを行き来してだらだら過ごしてたらもう外が明るくなってきた。誰かに見られているわけでもないけど、こんな自分の姿がちょっといやんなって部屋に設置されているペットカメラをオフにする。 ふと記録されている動画が気になって何ヶ月分か遡って動画を見て

      • 言うことをきかない身体

        今週から月経前症候群(PMS)が始まって1週間メンタルが地獄の底だった。ひたすら床で横になっていた火曜日、なんで出勤してこないんですかという店長のLINEで心臓がばくばく。完全にバイトがあること忘れてた。でも身体が動かない、腰が痛い、声が出ない、あーどうしようどうしようどうしよう。どうしたらいいか考えてたら眠ってしまった。睡眠、というよりかは気絶。起きたら全身汗だくで窓の外は真っ黒で雨の音は頭蓋骨に穴が開くくらいうるさかった。バイトのグループLINEには「本日無断欠勤者がでま

        • 人が人であるために

          朝4時57分に目が覚めた。たまおに頭を噛まれたからだ。普段はもっと穏やかに目が覚めるのに、今日は神経がぴりついてんのか単に腹が減りすぎてるのかわからんが、容赦無く頭にかぶりつき最悪の目覚めをプレゼントされた。あまりの痛みから反射的にたまおをねじ伏せてしまいぐにゃあっと悲鳴。5秒後、自分の動物的衝動に引いて我にかえった。 ひとまず今日朝起きていちばんにすることは原稿の続きと今日中に送る質問案を作成することだったのに、わたしはなぜか去年まで住んでいた大磯の景色を頭におもい浮かべ

        逃げるも正しい

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        • もちこの人生エッセイ
          64本

        記事

          瞬間的記憶喪失

          とある日の日記 <20231214> * 夕飯を食べ終えるとすべての体力が尽きてベッドの上で即寝し、深夜に目が覚めて朝方まで起きている生活がデフォルトになってきた。きっと自律神経がおかしいんだ。 ジャッジャッジャッ。リビングとキッチンを隔てるカーテンの向こうから聴こえるこの異音は猫が砂をかく音。おれのうんちを見ろ。そして片付けろ、すぐにしっこをしてえんだよと、鋭い目つきで圧をかけてせがんでくるものだからはいはいはいはいと身体を起こして玄関まで向かう。 がびがびの砂がま

          瞬間的記憶喪失

          やりたいことをやりたいだけじゃダメなのか

          仕事のストレスで労働の意欲を完全に削がれていたときに、どうしたら働かないで生きていけるか毎日のように考えていたことがあった。(誰しもが一度は考えたことある悩みだろうけど)そんなとき、すこしでもヒントがほしくて本屋へ行った。 そもそも働くってなんなのか?答えを知りたくて社会問題の本棚にへばりついていたところ、栗原康さんの本に出会った。栗原さんはアナキズム研究者で、政治学者。大学の非常勤講師もしている。彼の痛快で自由な文章はわたしを虜にした。最近は『はたらかないで、たらふく食べ

          やりたいことをやりたいだけじゃダメなのか

          当日欠勤の理由

          バイト先の男の子Nくんが当日欠勤をした。店長の話してる声が耳に入ってきて「Nくんこないだも風邪で当欠したのに、今日は彼女と別れたからだってよ。ショックすぎて働けないらしいわ。そんな女と別れたくらいでなあ」 店長はそう言うけどわたしは彼の行動が正しいとおもった。 ** 10代後半から20代までなぜあんなにもバイトに熱心だったのか。その頃は当日欠勤なんてほとんどしたことがなく、親から、あんた若いのにえらいねえとよく言われたもんだ。 とはいえ、バイトに対しての無駄な真面目さ

          当日欠勤の理由

          野蛮な人間たち、上海蟹を貪った夜

          先日、池袋で上海蟹を食べてきた。この日集められた人たちは蟹ビギナーがほとんどだったので、そもそもどうやって食べるのという初歩的な疑問が飛び交っていた。誰かが「お腹をバラバラにするんだよ」と発言。言葉だけで聞くと強烈で野蛮だ。お腹をバラバラにするなんて、スプラッター映画の悪役がやることじゃんと想像しながら、ありがとう、ありがとうと心のなかで唱えながら、誰かに許してもらおうという気持ちで甲羅や足を折ったり剥いたりしていた。蟹をばりばり剥いて食べるあの感じはまるで動物に戻ったような

          野蛮な人間たち、上海蟹を貪った夜

          東京へ来てから初めてのバイト

          冷蔵庫のすぐ側にデスクトップのパソコンを置いているのだけど、フワーンフワーンフワーンフワーンフワーンフワーンフワーンフワーンフワーンフワーンフワーンフワーンという稼働音がいつも気になる。仕事をしてても、本を読んでても、こたつに潜ってても。一定のリズムで鳴り響くこの妙な稼働音は泣き声のようにも聴こえてきて、やたらとかまってほしそうなのだ。冷蔵庫がかまってほしがってると思ったら腹が立つし耳を傾けていると別の時空に吸い込まれそうになる。吸い込まれた先に銀河の果てを思い浮かべ、こんな

          東京へ来てから初めてのバイト

          【お知らせ】ニュースレターを始めました。

          「桃沢脳内日誌」というニュースレターを始めました。 いわゆるメルマガみたいなものですね。始めてまだ3日ですが、思ってたよりも反響があってうれしいです! 最初の1ヶ月くらいは読者つかないだろうな(ついてもせいぜい2〜3人?)と思っていたので、読者の人が増えました通知が届いて感激。gmailの受信ボックスをみておもわず飛び跳ねそうになりました。 初めての配信記事は誰でも読めるようになっています! 2023年いろいろあったな(振り返るにはまだ早い) 2023年は仕事をセーブし

          【お知らせ】ニュースレターを始めました。

          娘は他人

          実家を出てから、母はわたしのことを時々他人のように扱う。 年末実家へ帰ったとき、風呂に入りたいんだけどいいかなと、母に訊くと「いいけど。あっ、ちょっと待って」となにかを思い出したように、風呂場へと走り出した。 どうしたのかと思い、母の背中越しに風呂場のなかを覗いてみると、なにやら浴槽にかぶせる蓋を畳んでいる。 よく見ると蓋の裏には黒カビがびっしりとこびりついており、元は白色だったと思われる浴槽の蓋は原型を留めず、濁った灰色のような腐った色に変わり果てていた。 「うわあ

          ずたずたにされたソファ

          前の家に住んでいた時に使っていた2人がけのソファ。わたしはそのソファがずっと嫌いだった。 まずは座り心地。 長く使っているせいかやたら沈むので、腰が痛くなる。長時間座ることができない。ソファのカバーもゴムが伸び切って、なにかの拍子にすぐズレる。 カバーがズレるたびに、むっとする。 もういっそのこと外してやろう!と、薄汚れたごわごわしたカバーを取ると、そこには鶯色のソファが現れた。 合皮が剥がれてところどころからスポンジが顔を覗かせる。ここまで古いなら腰が沈むのも仕方ない

          ずたずたにされたソファ

          マスクをしていない人は帰ってください

          とある休日のこと。今晩は外で夕飯を済まそうか、と夫とごはん屋さんへ行くことに。 胃に優しいものが食べたいと思ったので、以前バイトの面接帰りにふらっと立ち寄った和食屋さんへ向かった。 そこのお店はご飯を土鍋で炊いているので、お米はモチっとした食感でふっくらしている。おかずも塩分控えめという感じで優しい味わい。 店主の女性も「よかったら次は旦那さんといらしてください」と言ってくれたので、絶対にまた来ようと、Googleマップにお気に入りのピンを立てていた。 開店までまだしば

          マスクをしていない人は帰ってください

          不安に襲われたら過去の自分を思いだす

          夜中、突然不安に襲われることが定期的にある。大きく占めているのは将来への不安だ。 来年には30歳になるけど子供をどうするのか問題とか、収入が不安定だし、貯蓄が20代の平均よりもきっと少ないんだろうなとか、日の入りが悪い壁薄アパートに何年住むのかとか。 ここから負の思考はどんどん膨張し、まるでパンパンに膨れあがった水風船のようになる。どす黒く変色した思考はじゃぽじゃぽと中で音を立てていて、すこしでも針を近づけると一瞬で破裂しそう。次第に「わたしはなにをやっているんだろう」と

          不安に襲われたら過去の自分を思いだす

          公共の場で怒り狂う人々

          愛知から神奈川に引っ越してきてから電車をよく利用するようになった。最低でも週に3回は乗っている。都内へ取材に行くことも増えたので、1時間くらい乗っていることも多い。 移動時間が長いせいか、変な人を見かけることも圧倒的に増えた。 耳を劈く(つんざく)ような声で叫ぶ中年男性はホームで怒り狂っていた。 「てめえ、俺がどんな思いで今ここで待たされてるのかわかってるのかよ!殺すぞ!殺す殺す殺す!!!!」 肩幅が狭くひょろりとしていてずいぶん小柄なのに、こんなに大きな声が出るなんて

          公共の場で怒り狂う人々

          夏が終わったので冬眠したい

          夏がきてからすこぶる調子がよかった。いつもなら「あぁ」とか「うぅ」とか言いながらベッドの上で横になり、スマホを眺めて虚無ってる時間も格段に少なかったし。食欲も旺盛でご飯は通常で山盛り2杯。バイト先のまかないをいつもおかわりし、「たくさん食べる子は気持ち良いな〜!」と孫を見るような顔で店長に見守られていた。 ご飯をいっぱい食べてるときは大体元気なのだ。 それに今年の夏は音楽イベントにもたくさん行った。とくに思い出深いのは7月の終わりに行ったフジロック。 朝から酒を飲んで友達

          夏が終わったので冬眠したい