マガジンのカバー画像

水辺のお話

9
運営しているクリエイター

記事一覧

橋かけごっこ

とある、あわいの曜日のこと。

橋をかけよう。週に1度、あなたと待ち合わせをするために橋をかけたいの。

そうお願いされては断る理由がない。
橋を作るため、私たちはとっておきの材料を持ち寄ることを約束に今日は解散した。

次のあわいの曜日のこと。

私たちは手を泥だらけにした。土手の粘り気の強い、手ですくう。泥をはね散らかして、爪の中までかなしい色を詰め込んで。こんもりと山を作る。 私たちは同時に

もっとみる
去年のメモ(アザラシの話)

去年のメモ(アザラシの話)

小さい頃、私の友達がアザラシに連れていかれちゃった。
私はアザラシが憎い。憎いけれども、今はその憎らしくてたまらないアザラシに攫われたい気分だったのだ。
それはどうしてかというと、細々としたあれこれがあって、あわよくば、昔連れていかれたお友達に会いたいのだ。
そんなこんなで冷たい海に来た。

やってきたのはアザラシではなく、セルキーだった。
あの時、友達を連れていったのはあなた?

「違う、そうで

もっとみる

川魔女ごっこ

夜になる二歩手前の頃、屋形船がドロリとした波を連れてきた。
屋形船をようく見てみると、川魔女が魔女集会してる様子がちらりとみえた。

川魔女って確か、さびしい大人の涙腺をちょん切る「なつかし煮」を作るという言い伝えがあったっけ。なつかし煮の煮汁で炊き込んだ深川めしとか。

なつかし煮を食べさせ、かなしく泣かせた人の涙を集めては怪しいことをするとか。昔おばあちゃんが教えてくれたっけ。

でも、あの屋

もっとみる

カッパになってしまう

かなり切実。やばいぞ。

今日は本当におかしな日。丸いものが全て尻子玉に見えてしまうんだよね。
マスカットか何かが敷き詰められたパフェの写真、粒の大きな丸い石で出来たジュエリー、クリスマスツリーのオーナメント、地下鉄のマーク、SNSのアイコン、マンホール、何かの飾り、などなど…
目に映る丸いものはなんだって尻子玉に見えちゃう、怖いよ。だって私、本物の尻子玉見たことないし。
と同時に、この世には丸が

もっとみる
ネッシー小旅行

ネッシー小旅行

エセ土手沼に生息する、ネッシーに乗る勇気がまだない。タダ乗りネッシーじゃなくて、切符で乗るタイプのネッシー。
ネッシーは毎晩やってくる。大体、翡翠色の身体をしている。日によって青みがかったり黄色がかったり。理科室にそういう液体あったでしょ。

勇気を振り絞り沼まで歩くと、ネッシーは今日もいた。今日は苦い黄緑色だった。何となくこちらが睨みを効かせても、ネッシーはずっと動かないまま。なんだか少し負けた

もっとみる

氷菓、一角獣

無性に、冷たいものが欲しくなる。そういうときって割とあると思う。

冷たい風ふく、ある日のお話。

わたしがふと、アイスを食べたいと思ったその瞬間を狙うかのように、一角獣は現れた。

どこから来たのだろうね。あなたは。
物流センターの、クール便の部屋かしら。ちょうどさっきのわたしのような、くたびれたひんやりを携えて。

でも、一角獣は、目だけはくたびれていなかった。毛並みはくたくたでも、目はタピオ

もっとみる

夢日記 アザラシ

この世のどこかにある冷たい海に、定期的にアザラシの群れがやってくる。

やってくるアザラシたちは、みんなして虚ろな目をしている。大きな黒豆が埋め込まれたような、生々しいアザラシの頭部の毛皮を被っており、下半身は毛皮で出来た白いワンピースのような格好をしている。
ほとんどアザラシだけど、少し人間のようにもみえる。
私はセルキーの話を思い出した。人間に化けて出てくる、アザラシの毛皮を被った妖精?ちょ

もっとみる

星の砂を片手に 【前編】

あるところに、奈帆(なほ)という少女がいた。

奈帆は生まれつき、髪の毛の色が青かった。その青色というのもただ青いのではなくて、海のような色をした美しい髪なのだ。

頭のテッペンは深海のようなコンコンとした深い青、髪の真ん中は青と水色のグラデーションが綺麗で、毛先は南国の海のような、明るいターコイズブルー。

くせっ毛で元々ウェーブ髪なのも相まって、奈帆の髪の毛はまさしく「波」だったのだ。

(い

もっとみる
海魔女のお話 0

海魔女のお話 0

世の中を快適にするために様々な人が頑張っていると思います。

その様々な人の中には魔女が多いことをご存知でしょうか。

魔女は、あなたのすぐそばに。

魔法使いや魔女に憧れる人はたくさんいます。

人間の子供たちが学校に行くのと同じように、魔法使いや魔女になるための学校があります。きっとこれは、よく聞くお話。

本当に、ピンからキリまで沢山あります。魔女学校というものは。

今回はその中でも

もっとみる