見出し画像

外面はええんだから

子供の頃、父親がよく母親に

「外面はええんだから」

と言われていたのを覚えている。

子供の頃、母親の発言を聞いて妙に納得したのも覚えている。外と家では全く違ったからだ。

思い返すと、父親は外ではとにかく愛想の良いおじさんだった。母方のおじいちゃん、おばあちゃんに頼み事されると二つ返事で快諾するし、町内会で頼み事された時も二つ返事で快諾。なんなら、僕が行っていた少年野球チームでも同級生の父親で唯一コーチとして、毎週末、グラウンドに立っていた。きっと、コーチも頼まれて二つ返事で快諾したのだろう。

そんな父親のことを、当時小学生の僕は生意気にも、

「外では、調子がええ奴」

だなと感じていたことを覚えている。

時がすぎ、社会人になった今、僕は父親の凄さを実感しているし、家では外と違う理由もわかってきた。

外面。

これは絶対に家の外にいる方が良くなる。仕事は人との繋がりである。何かを作るには、大勢の人が関わっている。その集団の中でお金を稼ぐためには、人付き合いするしかない。そうすると、あら不思議。どんどん外面が良くなる。僕は絶対に家、家族といるよりも会社の人間と話している時の方が愛想が良く、よく話、表情も豊か、外面が良い自信がある。てか、自信しかない。

そして、外で被る仮面”外面”を、知らない、仲良くない人と話すときに自然と被るようになる。そうすると、小学生の頃、あんなに調子がええ奴やな。と思っていた父親に気づくとたどり着いているというわけである。

恐ろしい。何が恐ろしいのか。社会なのか。血筋なのか。それとも。ただ、ふと恐ろしいと思った。そして、本当の自分とは、どれなんだろうと。外の僕、家の僕。全部合わせて僕なのか。

会社の帰り道、ふと、この事を思い出した。居ても立ってもいられなくなって、父親に20年越しに謝罪のLINEを送った。小学生の頃の自分の分も込めて。

もし、子供が出来たら父親と似た行動を取ると思う。

奥さんの両親に頼まれれば二つ返事で快諾するし、町内会で頼まれても二つ返事で快諾するだろう。子供のために毎週グラウンドにも立つだろう。

そして、子供に、こう思われるんだろう。

「外では、調子のええ奴」

と。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?