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最近読んだ本の話 vol.65

 「最近読んだ本の話」の第65弾です。だいぶ気温が高くなってきました。今週は紫陽花が咲き始めてこれから楽しみです。最近読んだ本を3冊ご紹介します。


1、ファビオ・スタッシ『読書セラピスト』

悩める人々に文学作品を処方する読書セラピーを始めたヴィンチェ。彼のスタジオの階下の女性が失踪、状況証拠から夫が疑われる。読書家の彼女が読んでいた本のリストからヴィンチェは真相を探り出す。失踪女性の物語は、「失踪」「別の人生」「入れ替わり」が大きなテーマだ。人々の様々な悩みと彼の処方する作品の数々は味わい深い。シェルバネンコ賞受賞のビブリオ・ミステリ                  -Amazonより引用-

  主人公のヴィンチェは、事務所を持って読書セラピーの仕事を始めますが、ヴィンチェが引っ越してきてすぐに、階下に住む女性が失踪します。彼女が読んでいた本のリストから失踪の謎を解き明かそうとする話と、ヴィンチェのカウンセリングを受けに来る女性たちの話が、並行して進んでいきます。16人分のカウンセリングができないと家賃が払えない、という切羽詰まった状況で、1人目のカウンセリングは大失敗してしまい、この先大丈夫だろうか?と心配でしたが、その後はおすすめした本が受け入れられることが増えて、上手くいきはじめます。
 階下の女性が読んでいた本のリストも気になるし、ヴィンチェがカウンセリングして処方する本も気になります。ヴィンチェは失踪の謎を解き明かすのですが、それは思いもよらないことでした。先が読めない物語で面白かったです。


2、宮内 悠介『かくして彼女は宴で語る 明治耽美派推理帖 』

木下杢太郎、北原白秋、石井柏亭、石川啄木ら
若き芸術家たちが謎に挑む
傑作青春ミステリ
明治末期に実在した若き芸術家たちのサロン、
その名も「パンの会」。
隅田川沿いの料理店「第一やまと」に集った
木下杢太郎、北原白秋、石井柏亭、石川啄木等が推理合戦を繰り広げる。
そこに謎めいた女中・あやのも加わって――。    -Amazonより引用-

 すごく面白そう!と思い、読みました。宮内さんの作品を何冊か読んだことがあるのですが、全然雰囲気の違う作品のようだと思い、期待して読みました。物語の舞台は明治40年代。木下杢太郎、北原白秋、石井柏亭らが集まって、料理店「第一やまと」で「パンの会」の会合をしています。そこに持ち込まれた「謎の事件」を、ああでもない、こうでもないと意見を出し合いますが、最終的には「第一やまと」の女中・あやのが謎を解くという、面白い趣向の物語です。実在の人物が出てくる物語ってワクワクします。本当にこういう会話が繰り広げられたみたいな気がしてきて楽しいです。それぞれの人物像から会話を想像するのでしょうか?参考文献の量がすごいです。小説を書くって大変なことだなあ。


3、大前 粟生『きみだからさびしい』

町枝圭吾、24歳。京都市内の観光ホテルで働いている。
圭吾は、恋愛をすることが怖い。自分の男性性が、相手を傷つけてしまうのではないかと思うから。
けれど、ある日突然出会ってしまった。あやめさんという、大好きな人に――。
圭吾は、あやめさんが所属する「お片付けサークル」に入ることに。他人の家を訪れ、思い出の品をせっせと片付ける。意味はわからないけれど、彼女が楽しそうだから、それでいい。
意を決した圭吾の告白に、あやめさんはこう言った。
「わたし、ポリアモリーなんだけど、それでもいい?」
ポリアモリーとは、双方公認で複数のパートナーと関係を持つライフスタイルのこと。
あやめさんにはもう一人恋愛相手がいるらしい。“性の多様性”は大事なのはわかるし、あやめさんのことは丸ごと受け入れたい……けれど、このどうしようもない嫉妬の感情は、どうしたらよいのだろう?
勤務先はコロナ禍の影響で倒産。お片付けサークルも、“ソーシャルディスタンス”の名のもと解散になった。
圭吾はゴミが溢れかえる部屋の中で、一日中、あやめさんに溺れる日々を始めるのだった――。                -Amazonより引用-

 大前さんの新刊は絶対気になる!と思っていて、今回も読めてよかったです。もし自分の好きな人がポリアモリーだったらどうする?という苦悩が描かれています。苦悩というか、主人公がそのことを受け入れられるのか、受け入れられないのか、苦しむ状況が描かれていて、自分だったらどうするかな?と真剣に考えながら読みました。主人公の圭吾は、1つ1つのことを時間をかけてよく考えてから行動するので、私とは全然違う性質で、そういう風にじっくりと考える人の気持ちを知って、時間はそれぞれ違う風に流れてるんだなあ、と実感できました。複数の人と付き合いたい人は、ポリアモリーだと宣言してポリアモリーの人と付き合えば、浮気でもめることはなくなるんだろうか?と思うんだけど、ポリアモリーの人がポリアモリーじゃない人を好きになったり、逆の場合もあったりで、そうそううまくいかないのかもしれない。難しい問題だ。

 

 今週は「最近読んだ本の話」を書くことができました。読むほうがなかなか追いつきませんが、書くのもやっぱり楽しいので、自分のペースでゆっくりでも続けます。最後までお読みくださってありがとうございました。

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