最近読んだ本の話 vol.103
「最近読んだ本の話」の第103弾です。紫陽花が満開になりました。今週は最近読んだ本を3冊ご紹介します。
1、村山 由佳『Row&Row』
主人公の涼子は東京の広告代理店で働いていて、毎日忙しく、帰りも遅くなります。夫・孝之は自宅の1階で美容室をしています。孝之が趣味の自転車のライドに出かけた時に出会った20代のネイリストの美登利を美容院のアシスタントにしたことで、様々なことが起こって…。
涼子の夫に対する気遣いと、夫婦のかみ合わないやり取りが、こういう感じあるよね!と思って親近感が湧き、涼子の味方になった気持ちで読んでいました。夫が浮気してそれを知った時、自分だったらどうするだろう?何か言ってやりたい、と思うだろうけど、取り乱すのは悔しいという涼子の気持もよくわかる気がします。とても分厚い本ですが、この2人はこれからどうなるんだろう?と気になって、ぐいぐい読めました。
2、ベルンハルト・シュリンク『別れの色彩』
9つの物語が収録されています。1話目は、かつて自分が得たい地位のために友人が外国に逃亡することをバラしてしまった男が、何十年も経ってから友人の娘に秘密を知られそうになり何とか阻止しようとして葛藤する話です。どの話も後ろめたい過去があるような、主人公の葛藤する気持ちが克明に描かれていて、話に引き込まれます。こんなことがあったら何をしてても落ち着かないだろうなあ。
3、五十嵐 律人『魔女の原罪』
主人公の鏡沢高校2年生の宏哉は、同じクラスの杏梨とともに、週3回人工透析治療を受けています。1回に4時間かかり、その間に宏哉と杏梨はいろいろなことを話します。彼らが住む鏡沢という街は何か秘密があるようで、不穏な空気が物語の序盤から漂っていました。ある日、女子硬式テニス部の更衣室で財布が盗まれて、その場で犯人として1年生の男子がつかまります。宏哉はそのことでいくつかの疑問を感じ、独自に調べ始めるのですが…。
めっちゃ怖い何かがありそうで、こわごわ読み進みました。最後の方で、そこまでするのか!という驚きの真相が明かされます。私が気が付いた五十嵐さんの作品の特徴の1つは、主人公が困難な方の選択をする、ということです。宏哉も厳しい方の選択をしました。すごい覚悟と強さです。
毎日蒸し暑くなってきましたが、この週末はいいお天気のようで雨が降らないだけでもうれしいです。最後までお読みくださってありがとうございました。
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