最近読んだ本の話 vol.75
「最近読んだ本の話」の第75弾です。雨が降る日が多かったですが、今日はカラッと晴れました。今週は最近読んだ本を3冊ご紹介します。
1、辻 仁成『パリの空の下で、息子とぼくの3000日』
幸せというものは、欲ばらない時にすっとやってきて
寄り添う優しい光のようなものじゃないか。
ぼくが離婚をしたのは息子が10歳になったばかりの年だった。
本書は14歳の頃からスタートするが、回想するように、息子が10歳だった当時に遡ることもある。
小学生が大学生になるまでの間の父子の心の旅の記録である。
ぼくは父であり、母であった。
シングルファザーになったあの日から -Amazonより引用-
前回(vol.74)でご紹介した『サウンド・ポスト』は、妻と死別して娘を1人で育てる父親の話でしたが、こちらは妻と離婚して息子を1人で育てる父親の話です。大きく違うのは1冊目は小説だけど、この本は辻 仁成さんの日記のような実話です。偶然そういう話を連続して読むことになったのは、何か不思議なつながりだなあ。
辻さんはめちゃめちゃいいお父さんです。息子さんが15歳の誕生日を迎えた時、なんとしてもここフランスであと10年頑張らなければ!と、決意するところで涙が出そうになりました。辻さんは近所の子や友人の子にも大人気で、一緒に遊んで、料理を作って、ギターを弾いて歌ってくれたり、すごい人です。
3000日の間に父と息子の交わした会話が記録されていて、時にはぶつかり合ったりもして、私は親とこんなに会話していなかったな、と読みながら気が付きました。お互いに相手の言葉を聞こうと思わなければ成り立たないような気がして、辻さんのところはいい親子だなあと思いました。息子さんがとうとう18歳になった!やったあ!
2、中島 京子『オリーブの実るころ』
恋のライバルは、白鳥だった!?
結婚と家族と、真実の愛をめぐる劇的で、ちょっぴり不思議な6つの短編集。 -Amazonより引用-
1つ目の物語は、登場人物4人の視点からそれぞれの感情や状況が描かれていて、その人が本当は何を思っているかなんてわからないよなあ、とつくづく思うような面白さがありました。一方からしか見なかったらわからないよなあ。なるべく決めつけないようにと思いながらも、勝手にこう思ってるんだろうと、つい人の気持ちを決めつけようとしてしまいますが、実際はそんなこと思っていなかったりするものだし。6つのお話が収録されていて、こういう人生もあるんだ、自分がこの家族だったらどう思うだろう?と考えながら、楽しく読みました。
3、モニカ・トゥルン『かくも甘き果実』
「小泉八雲」となった男ラフカディオ・ハーンを愛した、3人の女たち
あなたを語ることは、あなたを蘇らせること――
甘い思い出と苦い記憶を語る彼女たちの「声」が、時を超えて響きわたる。
“ここではないどこか”を求めつづけ、最後には日本で「移民作家・小泉八雲」となった男ラフカディオ・ハーン。彼の人生に深く関わった3人の女性が、胸に秘めた長年の思いを語りだす。
生みの母ローザ・アントニア・カシマチは、1854年、故郷への帰路の途中アイリッシュ海を渡る船上で、あとに残してきた我が子の未来を思いながら。
最初の妻アリシア・フォーリーは、夫との別離を乗り越えたのち、1906年のシンシナティで、ジャーナリストの取材を受けながら。
2番目の妻小泉セツは、永遠の別れのあと、1909年の東京で、亡き夫に呼びかけながら。
ジョン・ドス・パソス賞受賞の注目作家が、女性たちの胸の内を繊細かつ鮮やかに描いた話題作 -Amazonより引用-
小泉八雲のことを自分は知っているつもりで何も知らなかったんだな、とこの本を読んでわかりました。裕福な外国人が日本に興味を持ってやって来て、武家の子女の小泉セツさんと運命的な出会いをし、結ばれて、仲良く自分たちだけに分かる言葉で意思疎通をはかり、日本の昔の言い伝えの話を聞いて本を書いた、みたいなことを勝手に思ってましたが違いました。日本に来るまでも大変な困窮をして、書くことで何とか食いつなぎ、日本に来てからも大家族を養うために講師をしたり記者をしたりしながらも書き続けて、家族のために国籍を変えるなんて。セツさんもすごいです。言葉がわからないのに工夫して想像して、八雲さんが好きそうな家を見つけてきてすべて手配して、快適な居場所を作っていたんだなあ。
今週は「最近読んだ本の話」を書くことができました。やっと涼しくなって落ち着いて本が読めると思っていたら、数日前からまた暑くなってきました。今日もすでに29℃を超えています。最後までお読みくださってありがとうございました。
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