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最近読んだ本の話 vol.110

 「最近読んだ本の話」の第110弾です。もう8月も終わりです。だからといって涼しくなるわけではないという。あともうちょっとだ!今週は最近読んだ本を3冊ご紹介します。

1、深沢 仁『眠れない夜にみる夢は』

静寂のなか、ゆっくりと息をする。
あの人はなにをしているか、と考える。

ちょっと憂鬱で、でも甘い。
まったくありふれてはいないけれど、
わたしたちの近くで起きていそうな
煌めく五つの人間関係。
『この夏のこともどうせ忘れる』の作者が贈る、
夜の作品集。

Amazonより引用

 5篇の物語が収録されています。読み始めてすぐ、独特の雰囲気がある文章だなあ、と感じました。
 1つ目の物語は、深夜2時に夫婦喧嘩をして赤ちゃんを連れて知人の家に逃げてくる女性が登場します。迎い入れた男性はちょうど家に来ていた恋人ではない女性を急いで帰らせて、その女性と赤ちゃんを部屋に入れますが、その人の夫と知り合いでどうも複雑な事情がありそう。どういうことなの⁉と思いながら引き込まれていきます。空気感がいいです。どの物語も心に残って、この作者が好きだ!と思いました。出会えてよかった!

 

2、サンダー・コラールト『ある犬の飼い主の一日』

生きるよろこびを伝え、読書の楽しみを与えてくれる、うつくしい「小さな宝石」のような本。
――リブリス文学賞選評より
中年男ヘンクは、離婚して老犬と暮らすICUのベテラン看護師。かわいい姪の誕生日の朝、散歩中、へばってしまった老犬をすばやく介抱してくれた女性がいた。その名はミア。恋などというものからは遠ざかって生きてきたヘンクだが、久々にときめいている自分を発見する。戸惑う彼の背中を、17歳の姪がどんと押す。人生の辛苦をさまざまに経験してきた男が、生きるよろこびを取り戻していくさまをつぶさに描いたオランダのベストセラー長篇。リブリス文学賞受賞作。

Amazonより引用

 主人公のヘンクのある一日を描いた物語です。ヘンクは、離婚して老犬と暮らすICUの看護師です。その日の朝、散歩の途中で老犬がへばってしまいます。声をかけて水を持ってきてくれた同年代の女性に、ヘンクはときめきのようなものを感じて自分でも驚きます。その日は仲良くしている姪の誕生日で、誕生日パーティーに急きょ招かれて出かける途中、バスの中で朝出会った女性と偶然また顔を会わせます。連絡先を聞くこともできず、また会う約束もできなかったヘンクですが、パーティーで飲み過ぎて、その女性に恋をしていることを姪に打ち明けます。思いもよらず姪に背中を押され、帰りのバスでまたしても出会ったその女性に気持ちを正直に話してしまって…。 ヘンクはものすごく本をたくさん読み、いろいろなことを知っていて、いつも何かを考えている人です。読書の善悪について考えたりもします。この一日だけではなく、未来のことも書かれていて、ヘンクがこの先幸せに生きることがわかって、よかった!と思いました。


3、J・M・クッツェー『ポーランドの人』

究極の「男と女」を描く、クッツェー最新作!
英語版に先駆けて刊行!
物語に登場する「女」は、バルセロナの音楽サロンを運営する委員会のメンバーであるベアトリス。「男」は、ショパン弾きで名を馳せ、サロンに招聘されたポーランド人の老ピアニスト、ヴィトルトだ。ショパンの「前奏曲」を弾く彼は、ダンテの信奉者でもある。ヴィトルトはベアトリスに一目惚れして、ポーランドに帰国した後も、彼女にCDや恋文を送り続ける。よき夫がいて息子は成人し、孫もいる49歳のベアトリスは、ショパン弾きのヴィトルトの求愛をばかげていると思いつつ、その言葉や、音楽、自分への好意の示し方に興味津々に反応するうち、マヨルカ島の別荘にヴィトルトを招くことになるが……。

80代になったクッツェーが、ベアトリスの視点から求愛される心理を細やかに分析的に描き出そうとする。

「これはヨーロッパの古典としてのダンテとベアトリーチェの神話的恋物語を、パスティーシュとして再創造する頌歌(オード)なのか。それとも、長きにわたりロマン主義の底を流れてきた“恋愛をめぐる男と女の感情と心理” を、現代的な視点から徹底分析した挽歌(エレジー)なのか。」
――訳者あとがきより

Amazonより引用

 2番目にご紹介した『ある犬の飼い主の一日』は、同年代の男女の恋愛の物語ですが、この物語は70代と40代の男女の物語です。バルセロナの音楽サロンを運営する委員会のメンバーであるベアトリスと、ショパン弾きで名を馳せ、サロンに招聘されたポーランド人の老ピアニスト、ヴィトルトが登場します。ヴィトルトはベアトリスに一目惚れして、ポーランドに帰国した後も、彼女にCDや恋文を送り続けますが、ベアトリスは結婚していて夫も子ども孫もいて、一方的な求愛に困惑し、ばかげていると感じます。それなのに何か気になって、マヨルカ島の別荘にヴィトルトを招き、その上3晩ベッドをともにするベアトリスの心境とは⁉
 その後はまったく連絡を取らずに月日が流れて、ベアトリスはヴィトルトが亡くなったことを知ります。遺された物を受け取るためポーランドへ行ったベアトリスは、84篇の詩が書かれた紙の束を受け取り持ち帰ります。
 最後にベアトリスはヴィトルトに宛てて手紙を書きます。そこに書かれたベアトリスの気持ちを読んで「そうだったの⁉」と驚いたり、ジーンとしたりしました。そして最後にハッと思い出します。これはクッツェーが書いたのだということを!女性が生き生きと描かれていてすごいです。


 暑くて本が読めないと思っていましたが、最近は昼休みに涼しいところで読んでいます。なかなか集中できなくて、内容が入ってこないことも多いけど。最後までお読みくださってありがとうございました。

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