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「書くため」の筆記具ではなく、「書きたい」筆記具がガラスペンだと思う

近年ブームであるガラスペン。「壊れやすそうだけど、わざわざ使いたくなるものなの?」と思う方もいるのでは。そこで、私が個人的に考える、ガラスペンの魅力をお伝えしたい。

つけペン・ガラスペンの魅力

最初に伝えたいのはつけペンとしての魅力。

①インクが簡単に変えられる

ガラスペンは、インクに直接ペン先をつける、いわゆる「つけペン」だ。そのため、インクをペンそのものにセットする万年筆とは違い、簡単にインクの色を変えられる。

簡単にお手入れの方法を書くと、以下のようにシンプル。

  1. 柔らかい布やティッシュペーパーなどで余計なインクを落とす。

  2. コップに入れた水にペンを浸す。このとき、ペン先をコップの底に打ち付けないように。(プラスチック製またはシリコン製のコップがおすすめ)

  3. ペン先をゆっくり回す。

  4. 柔らかい布やティッシュペーバーで水分を落とす。

②さまざまなインクが使える

万年筆にハマると、インクの美しさに気づき集めたくなるだろう。ただ、「ラメ入りインク」「顔料インク」「古典インク」などは、万年筆で使う場合、取り扱いが難しい※。長期間使用しないとインク詰まりの原因になってしまう。

それに対して、つけペンなら気軽に使える。ただし、そのままにして置くとペン先の溝にたまるので、こまめに水で流して欲しい。

※万年筆インクの特徴

  • 染料インク
    メリット:透明感のある発色、水で流せるので取り扱いやすい
    デメリット:耐水性がないのでにじみやすい

  • 顔料インク
    メリット:アクリル絵の具のような鮮やかさ、耐水性がある
    デメリット:耐水性があるため、乾燥すると洗浄液が必要

  • 古典インク(没食子インク)
    メリット:酸化することで色変化が楽しめる、耐水性がある
    デメリット:長期間使用しないと、含まれる鉄分の影響でペン先の腐食を起こす場合がある

ここだけ読むと、「金属製のつけペンでよくない?」と思う方もいるだろう。個人的に考えるガラスペン最大の魅力は、

③日常的に使える美しい工芸品

これに尽きると思う。

職人の作り出す美しい軸、繊細なペン先。インクをつけたときにまとう色。眺めるたびにうっとりする。それでいて、紙を滑らせる独特のスルスルとした書き味や、シャリシャリとした音も楽しい。

ガラスペンは、書きたい気持ちを起こさせる魔法の道具なのだ。

ガラスペンの選び方

ガラスペンは1本1本書き味が違うので、試し書きできるのがベスト。軸の模様などもハンドメイドならではの個体差があるので、自分だけの1本を探すなら試筆できるお店で購入しよう。

(とはいえ、私は地方在住なのでECサイトも利用する。)

それ以外で、私がガラスペン選びで大切にしている点は4つある。基準は人それぞれだか、一個人の意見として参考にして欲しい。

①見た目が好みである

ガラスペンには、シンプルなものから美しい装飾が施されたものまで、さまざまな種類がある。やはり見た目が好みだと、毎日手に取りたくなるものだ。

デザインの温かみや持ったときの軽さを求めるなら、ペン先のみガラスで軸が木製や竹製のものもある。

ガラスの種類や、ペン先が軸と分離するか一体化しているかなどの機能性も気になると思う。だが、おそらく人が最初にガラスペンに興味を持つ理由は、その美しい佇まいなのではないだろうか。まずは、第一印象で「綺麗だな」と思えるものを手に取ってみて欲しい。

②使う用途で字幅を決める

基本的には、ガラスペンは線の強弱をつけづらい。なので、用途によって字幅を決めるといい。

細字は、便箋やノートの字幅におさまるので日常的に使いやすい。中字はインクが映えるので、ラメ入りインクなどの特殊インクを楽しみたい方が選ぶとよい。太字は絵を描いたり、インク帳を作ったり、面でインクを強調するのに向いている。

文具コーナーやバラエティストアなどに売られているガラスペンは、細字や中細字のものが多い。しかし、極細や中字、太字などの字幅違い、カリグラフィー用や書く角度で字幅が変わるペン先など、特殊なペン先を作っているガラス工房もある。それらは、大きな文具店やガラスペンフェアなどのイベント、ガラス工房や直営のECサイトなどで手に入る。

③実はペン先・ペン軸サイズも重要

ガラスペンのペン先・ペン軸サイズや形状は、ガラス工房によってさまざま。それぞれメリット、デメリットがあるので、使う用途で決めて欲しい。

ペン先太め

<メリット>
インクをたくさん含ませられるので、長時間の筆記ができる

<デメリット>
ペン先が太いため、一部のインク瓶の口に直接入らない
(使いたい場合、インク壺などにインクを移して使う)

ペン先細め

<メリット>
ペン先が細いため、使うインク瓶を問わない

<デメリット>
ペン先太めのものに比べて、インクを含ませる量が減るので、筆記時間が短くなる

ペン軸のサイズについて

同様に、ペン軸サイズも太めだと、一部のインク瓶の口に直接入らない。また、転がり防止や装飾が施されている場合も同様である。

「インク壺にインクを移すのがめんどくさい……」という方は、“ペン軸が細め・装飾がない”ものを選ぶのがおすすめ。

とはいえ、ペン軸太め・装飾ありのガラスペンならではの美しさも捨て難い。利便性を取るか、美しさを取るか、よく考えて選んでほしい。

④ペン先のメンテナンスを行ってくれる

ガラスペンはその名の通りガラスでできているため、強い衝撃を与えると割れてしまう。そのため、メンテナンスを行ってくれるガラス工房もある。

「万が一のことがあればメンテナンスがある」と思えば、こわごわ取り扱わないので、逆に落としにくくなるのではないだろうか。なので、精神的な保証にもなる。

また、私は左利きでペンを押すように書くので、右利きの人よりもペン先に負担がかかりやすい。なので、ペン先がすり減ってしまったときのためにも、メンテナンスありのほうが嬉しいのだ。

メンテナンスの条件や範囲、手順などは、各工房によって違うので確かめて欲しい。

ガラスペンをもっと知りたいなら「はじめてのガラスペン」

シンプルな使い方のガラスペンだが、その世界は奥深い。ガラスペンのことをもっと知りたいなら、書籍「はじめてのガラスペン」がおすすめ。

文具ライターの武田健さんによる、ガラスペンの基礎知識から、選び方、楽しみ方まで網羅された1冊。30工房184本ものガラスペンの写真は、眺めているだけでも楽しい。

職人が作り出す美しく繊細な世界は圧巻。ガラスペンを一過性のブームで終わらせない、作り手と使い手を繋ぐ愛が溢れる文章だ。読んだら思わず、はじめてのガラスペンを手に取りたくなること請け合い。

スタジオ嘉硝|Color 硬質ガラスペン

今回使ったのは、福井のガラス工房「スタジオ嘉硝」のもの。字幅は細字(F)。シンプルな軸とストレートのペン先が、鮮やかなインクを引き立ててくれる。

筆記画像

手にフィットするくびれと、スルスルとした書き味が心地いい。適度な重みが「私、ガラスペンで書いてる!」っていう気分にしてくれる。

ラメ入りインクは静止画だと分かりづらいので、動画を撮った。音は出ないので安心して見て欲しい。(光る馬鈴薯!)

▼今回使ったインクはこちら。

ガラスペンは魔法の杖だ

「書く体験」をグッと楽しめるガラスペン。一度手に取ると、「あのインクを浸したい」「あのガラスペンを触ってみたい」とその魔力に魅了されるのだ。

ご興味あったらこちらもどうぞ

文具マガジンやっています。文具レビューが気になる方はどうぞ。

▼初心者向け「ガラスペン」記事まとめはこちら。おすすめの書籍や使い道まで、幅広く紹介。

ガラスペンが気になったけど、具体的な使い道が思い浮かばない方はこちら。

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