手塚治虫『火の鳥(鳳凰編)』

はじめに

『火の鳥』のシリーズの中で一番、宗教的要素が含まれたシリーズだと思う。

順番で読んでいるので、多分、「太陽編」が宗教的な内容かと思うが。

この巻の作品は、我王と茜丸との関係性を描かれた作品である。

『火の鳥(鳳凰編)』を読んで

手塚治虫『火の鳥』シリーズ4巻目。

『火の鳥(鳳凰編)』。

時代設定は奈良時代

この話の内容はある意味、考えさせられるかのような内容だった。

いかにも仏教要素を踏まえた内容だった。

我王が胎児期の時に父親と共に崖から落ちて、左目が潰れ、右手がなく、皆から不思議に思われていた。

だが、我王はあんまりにも豊かな暮らしができなかったため、強盗殺人でもするようになった。

衣や食べ物を奪い取り、人まで殺す

そこで茜丸と出会い、敵同士の立場になっていた。

その時の我王は茜丸の腕に傷を負わせ、衣を盗み、女まで手に入れた。

女を手に入れた時に、ヤれそうな面しているね。

ただ単に盗賊のように過ごしていく我王は僧侶と出会って、心が一変した

我王は強盗殺人の盗賊から人間らしい心に変え、過去に起きた差別に対して、怒りと反感を持つようになった

一方、茜丸は仏像の彫刻師で、優れた才能で仏像を彫っていく。

皇帝から依頼された鳳凰の像だが、茜丸は鳳凰の存在が知らなかったので、鳳凰を探しに旅を出ることにした。

「鳳凰」っていうのは、つまり火の鳥だ。

通称は不死鳥
不老不死の鳥。

英語名はPhoenix(フェニックス)
X-MENでいう「ダークフェニックス」のフェニックスだよ。

我王と茜丸は輪廻転生の存在を知ることになるが、一番輪廻転生を経験しているのが、茜丸

茜丸は人間のままで生まれ変わりたいとこだわっているけれども、もし生まれ変わるとしたら、大体、人間が嫌がるような虫けらや動物であろう。

人間を生まれ変わるのはごくわずかなのである。

前世の自分と現世の自分と後世の自分の姿は動物だったり、植物だったり、プランクトンだったり、人間だったりして、次から次へと繰り返していく

茜丸は最後まで諦めずにどんな困難を乗り越えて、彫刻を彫り続けた

我王はそれら(裕福そうにしている)の人間に対して、怒りと反感を持ち、恐そうな石像を掘ることにした

我王は知らぬの間に即身仏にされた僧侶で、最初は死が受けれなかったけれども、よくよくも考えれば、生きる価値も知るようになった。

我王はどんな困難があっても生き続けることに決心した。

茜丸と我王の共通する部分があるけれども、これはもしかすると、ライバル関係かもしれない。

やがて、二人の運命はどういうふうに分かれるのか。

または、どちらが救われるのか。


おわりに

我王って、また先祖が猿田彦なのではないかと思った。

途中から仏教の意義が分かった我王は心変わりして、今までの行いの復讐として、世間の社会に対して反感を持っているところが凄く共感を得た。

途中から我王の気持ちがなんとなく分かってきた。

この奈良時代の設定では、ビジネス(金)のために仏像(大仏)作れ作れ圧力が大きかったに対して、今の社会でも、当時の奈良時代のように圧力が大きいし、貧困の差によって差別化しているのもおかしくもないであろう。

我王はそんな理不尽な社会でも、裕福層で贅沢している方に対して、闘って生き続けている

復讐として、彼(茜丸)の技術を盗み、ライバル関係になるところは凄かったと思う。

それにしても、東大寺の大仏や正倉院の絵のタッチの再現が素晴らしい。

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