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手塚治虫『火の鳥復活編・羽衣編vol.5』読書感想

タイトル:『火の鳥復活編・羽衣編vol.5』

著者:手塚治虫


★感想

今回の5巻目の『火の鳥』は2巻目の「未来編」に出てきたロボットのロビタの話である。
※のび太ではありません。ロビタです。
これは、ロビタのバックストーリーを描かれている。

「ロビタというロボットは何故、元々人間なのか」

「人間とロボットが愛情を持つとどうなるのか」

が今回のテーマである。

人間とロボットとの価値観は勿論違うのである。
先ず、ロビタというお手伝い(召使い)ロボットは人間の奴隷のように扱き使われ、元人間性の愛情ですら忘れてしまい、その心のどこかに人間という心が存在しているといった、ちょっと変わったロボットである。
この物語の主人公である(事故死によって、金属製の移植手術によって蘇生した)レオナとロボットのチヒロとの愛情によって、身体や心を輪廻転生で生まれ変わることができた。
しかし、ロビタの行末の過去の記憶がある意味切なかった。
これはもしかして、レオナとロビタとの関係性があったとは思えなかったのであろう。
人間として生きていくのか、もしくはロボットとして生きていくのか、ただのSFの作品だけの問題じゃなく、現実的にこれからの先の未来にも生命の選択肢によって、運命を決めていく時代になっていくのであろう。
そして、最後に「未来編」で出てきた若し猿田博士(猿田彦の子孫)は、ロビタを救い出し、研究のアシスタントとして生きることができた。
ロボットはたいてい機械だが、人間がロボットに生まれ変わったら、どのような見え方になるのか。
ロボットには人間と同じく偏見がある
この作品の気になるところは、手塚治虫のキャラクターの使いまわししているところが特に面白い。
あとは、他のキャラの画策がウケる。
「羽衣編」は、確か舞台劇のようなストーリー性になっているので、これは時間がある時に是非とも読んでみたい。
付録のような感じで、10ページ弱あるので、これは流石にそこまで作品中の伏線に繋がるようなストーリーではないので、読まなくても良い。

後ほど、「羽衣編」の解説について調べてみたけど、あれは本編に繋がるような関係性だったらしい。
短編で、舞台劇のような設定でコマ分けしているが、火の鳥というフェニックス自体は登場してこない。
あの「羽衣編」は、マガジンに描かれていた内容とこの作品の内容が一部書き換えられている。
実にいうと、「羽衣編」は後の「郷望編」と関係があるらしい。
気になったので、解説のサイトを読んでみたけど、「羽衣編」が何故、『火の鳥』のストーリーに繋がっていないような内容に書き換えられたのかが謎すぎて、ある意味ホラーでしか思えない(あまりにも衝撃的すぎる)。
「羽衣編」の元が『火の鳥』のストーリーの伏線で繋がりがあるとしたら、その書き換える前(編集以前)のストーリーは幻の作品に過ぎない。
それを知ってしまうと、単行本で編集後の内容を読んでいる読者の自分にとっては、すごく鳥肌が立った。
「羽衣編」は正しく意味が分かると怖い話のような感じでしか思えなくなる。
そうなってくると、「羽衣編」のラストの浄瑠璃人形は、生首とバラバラに切断された遺体でしか思えないのであろう。


★オススメだと思うところ

手塚治虫のファン、気軽に漫画読みたい方、ロボットと人間の恋愛性を知りたい方


★おわりに

今回の『火の鳥』の「復活編」は案外と近未来的な要素があり、いかにも考えさせられるような内容になっている。
これからの社会はロボットと共存する上で、我々の人間はロボットに対してどんなふうに感情を持つのかが興味深い。
この『火の鳥』という手塚治虫の漫画は、歴史、哲学、遺伝子的、近未来的SF要素、宗教法人(仏教・神道)等の要素を踏まえて、人間の生き方をテーマにした作品だと言える。

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