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既存の仕事に固執せず、常に“今必要とされるものづくり”にチャレンジ

※この記事は、2019年7月11日に取材した内容です。

今回インタビューした社長はこちら!

株式会社仁張工作所 代表取締役 仁張 正之 氏

■あらゆる最終製品に必要な板金加工を武器に、時代の変化に対応

株式会社仁張工作所は、0.6〜3.2mmの鉄板を主材料として扱う板金加工会社だ。

創業は1964年。
先代の仁張 清之介 氏が、金庫メーカーに勤めていた経験と技術を活かし、スチール製の棚や保管箱を作る会社としてスタートした。
当初は、民営化される前の郵便局や電電公社など官公庁向け業務用スチール家具・什器などを中心に製作していたという。

その後、郵便局や電電公社の民営化、少子化といった時代の流れによって、オフィス家具作りは縮小されていく。
それでも2019年の現在まで55年間、板金加工業を続けてこられた理由として、現社長の仁張 正之 氏は次のように語る。

「世の中のあらゆる最終製品に、板金加工は必ず必要とされる技術です。私たちは既存の仕事に固執せず、様々な分野の最終製品に板金部品を供給してきたからこそ、現在まで続けてくることができたんです」

たとえば過去には、デジタルカメラの普及に伴い、それまで手掛けていたフィルム現像機の板金加工の仕事は消滅してしまった。
しかしその一方で、高速道路のETCユニットの板金加工や、外国人旅行客向けの外貨両替機の板金加工など、新たな需要が生まれている。
時代の変化に合わせて柔軟に対応し、常に“今必要とされているものづくり”にチャレンジすることで、生き残る道を確立してきたのだ。

世の中の流れに呼応して、2003年からはインターネットの活用にも力を入れ、ホームページを使ったエンドユーザー向け直販ビジネスにも参入。
用途に合わせてカスタムメイドするオリジナルブランドの貴重品ロッカーや、消防署の防火衣ロッカー、納骨壇など特殊なニーズに対応する製品まで、幅広く展開している。

こちらは脱衣場向け貴重品ロッカー。
シリンダー錠のリストバンド付き。
エンドユーザー向けに製品を直販する、専用ホームページ。

■塗装を含む一貫生産体制、インターネット・他社とのネットワーク強化が受注拡大の秘訣

「従来の仕事に固執せず、今必要とされる製品に板金部品を供給する」という経営姿勢を、社内外に明確に示したのは10年前のこと。

2000年から3年ごとの経営計画を打ち立て、企業としての成長を図ってきた同社では、2009年から始まる第4次中期経営計画として、「既存の仕事にとらわれず、板金加工の専門家集団として経営環境の変化に適応できる『揺るぎない組織』をめざす」と宣言した。
これは前年のリーマンショックによる景気低迷の波を受け、リスク回避のためには得意先を複数に増やしていくこと、業種・業界も一つではなく様々な分野に対応することの必要性を痛感したからだ。

「板金加工の専門家集団」と銘打ったのも、このときが初めて。
そこには「こんな仕事ならやったことあります」という姿勢から、「板金加工ならどんな仕事でもお任せください」という姿勢に転換していこうという強い意志が込められている。

もちろん、やったことのない仕事に応えるのは簡単ではない。「時には発注元に怒られ、その都度どうすればよいかを考えてきた」と社長は振り返る。

多くの実績を持つスポーツ用ロッカーも、初めての受注で気に留めていなかった金網メッシュのピッチのズレによりやり直しを指示された経験から、改良を重ね、現在の精度へと到達した。

その甲斐あって、今では仁張工作所が製作したスポーツ用ロッカーはプロ野球やプロサッカーチーム、またラグビーを題材にしたTVドラマでも使用されるなど、一定の支持を受けている。

自社工場内に塗装設備を有することで、細かな色分けや、多品種少量の塗装に対応できることも、同社の強みだ。
設計から切断、プレス、塗装、仕上げ、完成までの一貫生産体制で要望にきめ細かく応えられることが、顧客からの評価につながっている。

また、中小企業が集まる東大阪という立地を活かし、自社でまかなえきれない仕事は同業他社から協力を得るネットワークも構築。
「これには現金で支払いができる体制を整えたことも大きかった」と社長は語る。

通常のホームページのほか、オリジナルブランドの通販サイトや設備面をアピールするサイトを作り、SEO対策に力を入れてウェブを充実させた成果も、次第に現れはじめた。
今ではほとんどの注文や仕事依頼が、インターネットを通じて入ってくるという。

こうした取り組みの結果、自社のキャパシティー以上の受注を獲得することに成功し、リーマンショックの4年後にはそれまでの倍の売上を達成した。

スポーツ用ロッカー。
数ミリのピッチのズレで、仕上がりの美しさに差が出る。
上:鉄板の加工ライン。
下:塗装ライン。 設計から完成まで自社で一貫して行う。

■社員一丸となって、チームとして会社を成長させたい

「ここまでやってこられたのは、決して私一人の力ではない」と仁張社長。
特に営業面では、他社で営業職に就いていたところを呼び寄せ入社した、弟の仁張 茂 氏(現・常務取締役)の功績が大きいという。

しかし、会社として成長していくために、これからは社員一人ひとりの意識改革が必要との認識を強めている。

「今ある仕事はいつかなくなる。だからこそ、営業は新しい仕事をとってきたら評価され、生産部門はどうしたらそれを形にできるかを考えて、社員全員がチームとして前向きに取り組んでいかなければならない」

社長によると、創業者の仁張 清之介 氏も、新しい注文がきたら『できない』ではなく『どうしたらできるだろう』と常に考え、創意工夫をこらしていたそうだ。
先代から社長と常務に受け継がれた、常に新しいことにチャレンジする“仁張イズム”は、今後、社員にも浸透していくことが期待される。

いろんなデザインに切り抜いたり、カラーバリエーションも豊富。
自社の技術を物語る製品が工場内に展示されている。

■MOBIO担当者 萩原のコメント

工場、事務所に入ると随所に目を引く、色とりどりのロッカー。
自社製品への愛、経営計画について熱く語っていただきました。
先代の築かれた道を継承し、社長、常務、御兄弟の息の合った二人三脚、心通じ合ったお話もお聞きすることができました。


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