見出し画像

読書 私の命はあなたの命より軽い 感想

初めての出産を控えた時期に夫の海外転勤、不安で里帰り出産を選択するが、自慢の仲良し家族のはずが実家は様変わりをしていて、出産の不安と家族の不穏な空気の中、無事に元気な赤ちゃんは生まれるのか。

まさかのイヤミス。
で、ある意味ホラー。

同級生の中では早めの結婚、出産の遼子と中学生で堕胎の経験をし、それに伴って起きた出来事の渦中で苦しむ美和。歳の離れた姉妹でお互いが大好きだったのに、環境が変わって…自分の持っていないものを相手は手にしている。

遼子は若くて美しく賢い美和を羨んでいたが、歳の差が許容範囲で認めることを可能にしていた。お互いが子供だった頃は親の愛情が偏っても、大人になりつつあり、大学で家を出ることで自分も可愛い美和として納得していた。美和の中学堕胎でショックを受けるがその後の出来事で彼女の理解者になり、保護者になる事を強く意識するけれど、美和も大人になるって事。

遼子の授かった命と美和の授かった命にどんな違いがあるのかと、姉妹は考えるのだけれど、親としての覚悟が妊娠がわかった時に違ったから結果が変わったとは思わない。
題名からは命の重さとは?と聞いているのかと思うが条件下が違う出産に同じ価値観を持つ事がやはり難しいと感じた。

昔読んだ小説で、中国人が日本人の殺人を安く引き受けるのは、殺してる人が何千万、何億円と死んだ事でお金になると知らないからって文があり、すごくリアルに感じた事を思い出した。確かに満員電車でクタクタになってるサラリーマンを見て、そんなに保険が掛けられてるなんて、日本人以外は思わないかも…
日本人の保険好きは世界でも稀有な国民性だから。

遼子の視点で物語は進んでいくので、価値観の基準は遼子なのだけれど、遼子が自分は常識的で一般的で世間の代表の様に考えている事がすごく伝わるのだけれど、遼子以外の家族は全てそこからズレているので、本当に常識なんて単なる思い込みなんだなぁ。

遼子の思う様に、家族でもっと話していれば結果は違っていたのかな?
でも、遼子も美和を子供だと思って接しての最後。親が中学生の美和と納得がいく話し合いをする、まして、タイムリミット付きでなんて、そりゃムリよね。
恐ろしいものに翻弄される少女を書いたつもりと作者があとがきで書いているので、やっぱりホラーがある意味正解?


この記事が参加している募集

#読書感想文

188,766件

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?