プレゼンテーション3

私は納得できない 「愛なき世界」を読んだ

発売してすぐの頃に、本屋で平積みされていたのが目に突き刺さってきた。
美しい装丁が、売り場の中でひときわ光っていた。
これは、誰の何という本だろうと、手にとってみたら、三浦しおん氏の「愛なき世界」だった。
三浦氏の本は大好きなので、買うことは決まっている。
問題は、紙の本を買うか、電子書籍を買うか。
小説は電子書籍派の私だが、この本は、紙本を買うことにした。
理由は2つ。
一つは、きっと妻も娘も読むだろうから。
もう一つは、この美しい装丁の本を、ぜひ手元に置きたいと思ったからだ。

ずっと積んでた本なのだが、本屋大賞2019にノミネートされたことを知り、そろそろ読みどきかなと、紙袋を破ってみた。
そしたら、先に娘が読み始めやがった。
そして、私が買った本なのに、
「すんごい良いから、すぐ読んだ方がいいよ」
とか言ってきた。

内容紹介
恋のライバルが人間だとは限らない!

洋食屋の青年・藤丸が慕うのは〝植物〟の研究に一途な大学院生・本村さん。殺し屋のごとき風貌の教授やイモを愛する老教授、サボテンを栽培しまくる「緑の手」をもつ同級生など、個性の強い大学の仲間たちがひしめき合い、植物と人間たちが豊かに交差する―

本村さんに恋をして、どんどん植物の世界に分け入る藤丸青年。小さな生きものたちの姿に、人間の心の不思議もあふれ出し……風変りな理系の人々とお料理男子が紡ぐ、美味しくて温かな青春小説。

私は30年ほど前、理系の学生だった。
研究していたのも、本書と同じ植物。
私はそれほど真面目な学生ではなかったが、この作品の中で描かれている研究室生活は、懐かしい感じで読むことができた。

さて、ここからは、私の稚拙な文章力では、ネタバレせずに感想を書くことは困難なので、ネタバレアウトなかたは、Amazonリンクの先にある感想は、自己責任で読んで欲しい。

そろそろいいかな。

この本のエンディングはとても美しい。
装丁と同じように、本当に美しい。
芸術的な終わり方だと思う。
面白いし、傑作だと思う。

でも、私は嫌だ。

最後のページの最後の1行まで、主人公の藤巻と本木がくっつくハッピーエンドを期待していた。
最後の1行が終わってから、そのさきの参考文献のページまでくまなく目を通したくらいだ。

いやいやいやいやいや
これで終わっちゃいかんだろう。
Amazonのレビューや、読書メーターには、この終わり方に肯定的な意見が多い。
まあ、人それぞれだからいいんだけどさ。
みんな、本当にそれでいいの?
大学生の恋愛が、こんなに草食系でいいの?

藤丸よ、まだ若いのに、解脱した修行僧のように悟りきっていていいの?
よくないでしょう。
もっとみっともなく身悶えようよ。
これが昨今の若者の恋愛なの?
そりゃ、出生率も下がるわ。

本木よ、あんたどう考えても、藤丸のこと好きだろう。
前半と後半では、本木の思考の中で「藤丸」って言葉が出てくる度合いが違うぞ。
後半、半端なく藤丸のこと考えてるぞ。
失敗から新たな発見をしたように、恋愛からも新たな発見があるだろう。
遠距離恋愛してて、合同セミナーで痴話喧嘩するポスドクの方が、人間味あふれるわ。

断然、続編希望。
つうか、これ、出るでしょ、続編。
「まほろ駅前」とか「神去なあなあ」みたいに、続編出してよ。
魅力的な登場人物が、まだまだ動き足りないって言ってるよ。
みたいなあ、続き、読みたいなあ。

ちなみに、娘はこのエンディングでも、別にいいと思っているらしい。
やっぱ、私の恋愛観は古いのかなあ。

ああ、いい本だった。

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