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『友人の本棚~1分で読める感想文~』Vol.43「よるのばけもの」

「もしも一つだけ願いが叶うなら何にする?」
お金? 永遠の命? 新垣結衣? 一通り妄想してみるものの、一つに絞れと言われるとそれはそれで難しい。「僕が一番欲しいものは何かを教えてください」という願いにしてみたらどうだろうかと思ったりもしたけれど、それを知ったところで手に入らないとしたらそれはそれで切ないし。そんなことをグルグルと考えていたら、この本を紹介された。

夜になると化け物になる主人公は、クラスメイトでいじめられていた矢野さつきと、誰もいない夜の校舎で偶然出会う。前作「君の膵臓をたべたい」にいたく共感したのでドキドキしながら読み進めたが、やはり良作だった。

「私は、ね」
訊ねていないのに、矢野さんはいつもみたいにまた自分のことを勝手にしゃべり始めた。
「私はどっちもな、いよ。どっちもな、い、昼も夜、も別にない。私はなん、にも遠、くない。周りが違、うだけ。周りの時、間や人や物や雰囲、気が違、うだけで、私は昼も夜も一、緒。どっちも何、もない」

彼女のしゃべりのイントネーションがおかしいことを句読点で表現されているため、このような書き方になっているけれど、そこを差し引いてもらっても「周りが違うだけ」という一言に、全てが集約されていた。

昼間は学校でひとり言のように挨拶をする。周りは無視をする。夜は化け物の主人公と、同じように会話をする。昼と夜で、彼女は何も変わらない。違うのは僕の方だ、と主人公は思う。ここでも「どちらが本当の自分か?」という問いが与えられていて、彼はその答えを最後に導き出した。

どれが本当の自分か? についての現時点での僕なりの解は、以前「自分とは何か」で導き出した。今のところ、この考え方に従って生きている。自分の軸となる信念や考え方を持って生きると、人は強くなれる。読みながら、そんなことを感じた。

「もしも一つだけ願いが叶うなら」……僕が自分で欲しいものを手に入れるまでの過程を楽しむので、どうかそっと見守っていてください。

今のところ、僕の願いはそんな感じかな。

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