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『友人の本棚~1分で読める感想文~』Vol.21「私とは何か」

「本当の自分って何だろう?」
色んな人が色んなことを色んな角度で言うものだから、余計に混乱してしまって、結局何が正解かが分からなくなってしまう。そこに今度は「そもそも正解なんてない」理論がきて、じゃあどうすればいいんだよと思ったら「自分で考えろ」と突き放されて早39年。未だに本当の自分が分からないと、そんなことを考えていた矢先、友人からこの本を紹介された。

「分人主義」という新しい概念を説明した一冊。コミュニティの最小単位は「個人」ではなく「分人」であるという、これまでの人間関係にまつわる矛盾を鮮やかに解消してくれた。

自分に対して否定的になっている人に、まず自分を愛しなさい、自分を大事にしなさいと言っても、あまり意味がないのではないか? 嫌というのは、不合理な感情だ。単に好きになれと言われてみても、ハイそうですか、とはならないだろう。
人は、なかなか、自分の全部が好きだとは言えない。しかし、誰それといるときの自分(分人)は好きだとは、意外と言えるのではないだろうか? 逆に、別の誰それといる時の自分は嫌いだとも。そうして、もし、好きな分人が一つでも二つでもあれば、そこを足場に生きていけばいい

その人が好きかどうか、という視点ではなく、その人といる時の自分が好きかどうか? で判断をする。これは目から鱗だった。そして、全ての自分(分人)が好きでなくても構わない。この人と一緒にいると好きな自分でいられるという相手との時間をなるべく長くすることが、豊かな人生を送ることになるのだろうと思った。

「嫌われる勇気」を初めて読んだときに、「課題の分離」という概念に強く胸を打たれたのだけれど、この「分人」という考え方もまさに「個人の分離」といえるのではないかと思った。それぞれの人と、それぞれの場において、それぞれのコミュニケーションを成立させることができると、単純に嬉しい。そのために人は、自然と分人化をさせている。

もう一つ、衝撃だったのはこれ。

まえがきでもちょっと触れたが、よく「分人」という考え方は、結局「八方美人のススメ」なのか、と言われることがある。しかし、むしろ真逆である。
(中略)
八方美人とは、分人化の巧みな人ではない。むしろ、誰に対しても、同じ調子のイイ態度で通じると高を括って、相手ごとに分人化しようとしない人である。

一回読んだだけでは理解できなかったのだけれど、どうやら「八方美人」というのは「相手によって臨機応変な対応ができない人」という意味らしい。例えば、相手が耳の遠いご年配の方であれば、普通は自然と会話をゆっくり、そしてボリュームを大きめにする。しかし、分人化できない人は、子ども相手でも、ご年配相手でも、同じコミュニケーションの取り方しかできないのだ。

「本当の自分」についての理解が、ようやく着地させることができた。それぞれの人との間に自然発生する「自分の分人」、その全ての合計が「本当の自分」なのだ。あとは時々刻々変わる「自分の分人の構成比率」を、どうバランスをとるのか? その心地よいラインを見極めながら調整していくことが、自分の人生を豊かにしてくれるのだろう。

分人主義、マジでおススメです。




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