さらに強烈な流通業の洗礼
MNHの小澤です。
流通業界に足を踏み入れて受けた洗礼は、それだけではなかった。
問屋から「これ書いといてください」とばんばん渡される書類。
「なんでこんなにあるんだ?」と疑問に思うも、あれ出せ、これ出せと、提出を迫られる。
あとで分かったことだが、小売りが一番強い流通業界では、仕事のしわ寄せが全部メーカーにくる。スーパーの仕事に、商品登録の書類作成があるが、スーパーはそれを問屋にまわす。問屋は自社の書類もつけて、ダブルでぼくらにまわすのだ。
おかげでこっちは書類の山。
本来ぼくらが作るべきではない書類を作り続けなければならなかった。
こうしてスーパー”I” の棚に並べてもらうために、驚くような洗礼を受けたが、なんとか店頭で販売する準備が整ったとの連絡が入った。
ぼくらは、さっそくこのスーパーに駆けつけた。
が、そこで並べられた商品をみて、目を疑った。
「なんだこれ?」
“東京アベック”と掲げたうちの商品群のなかに、まったく違う商品も並んでいたのだ。
すぐに問屋に「あれ、うちの開発した商品じゃないんですけど⁉」と確認するも、しれっと。
「いや、足らなかったんで、2品目勝手に入れさせてもらいました」。
………は? 意味が分からない!
ばかにするのもほどがある。ぼくの怒りは頂点に達した。
多摩信用金庫にすぐに抗議した。
「ちょっとおかしいですよ!!」
それがスーパー”I” の本部に伝わり、商品棚からは一応、関係ない品は取り下げられた。
そもそもぼくらは、このスーパーとの最初のミーティングを通して、「地域貢献のために地元産の開発商品を売る」というところで合意したと思っていた。ビジネスとはいえど、多摩地域の流通を担うスーパーとして、その姿勢はさすがだな、と感心もしていたほどだ。
しかし、ふたを開けたら、これだ。
「とりあえず体裁を整えた」といわんばかりの、現場の対応やありさま。結局、自分たち地元企業に目をかけてくれていた多摩信さんへの建前上、やりましたというだけで、当初の趣旨はそっちのけなのだ。
またこれは後の推測だが、ぼくらの商品の「価格」も懸念となったのだろう。うちのはお土産ものなので、値段が高い。安価な品ぞろえのスーパーの棚で売れるようにするために、本部のバイヤー側の判断で安い品物も混ぜこんだのではないだろうか。
いずれにしても、ぼくら以外の関係者は「とりあえず売っとけ」くらいにしか考えていなかったのだろう。
かくして「東京アベック」という取り組みは、1回きりで幕を閉じる。
流通業界でビジネスをするには、これらは当たり前のことなのかもしれない。
だとしても、いろいろと想いを踏みにじられたぼくは、これを機に「このスーパーには一生いかない」と、深く心に刻んだのだ。
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